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目覚めた世界で生きてゆく 僕と愛犬と仲間たちと共に  作者: SUGISHITA Shinya
第四部

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350/499

350 ショーエンオアシスでヘラール一家に塩と女性用下着を売る

 次はヘラールの所か。

 ウータンオアシスの川の向かいに発展しつつあるオアシスと16木乃伊の泉を経由して10日ほどでショーエンオアシスを望むところまで着いた。砂丘の影で休憩し、ダミーの荷物を本物に積み替えた。

 「隊長、塩板を積む作業は面倒っすね」

 「そうだな。少し塩を減らすか」

 「そうしましょう」


 「隊長、減らしすぎです。それではヘラールさんに売ったら無くなってしまいます。もう少し積まないと」

 「うるさい副長だ。だがそうだな。商品を仕入れにいってヘラールのところで無くなってしまってはいかにもおかしいか。しょうがない。それじゃもう少し積もう。10頭に積んで行こう」


 荷物をそれらしく積んでショーエンオアシスに入った。

 隊商宿について荷下ろしをする。

 「早くヘラールに塩と下着を売りつけて俺たちのオアシスに戻りたいな」

 話しているところにヘラールから使いが来た。

 やつは恐妻家だったな。

 「塩と奥さんが大変喜ぶ品物がある。こっちへ来いと言ってくれ」

 使いが戻って行った。


 すぐヘラールがやって来た。やっぱり恐妻家だ。

 「おい、何があるんだ」

 「まずは塩だ。これを見てくれ」

 見本を見せる。削って舐めさせる。


 「うまい。それに汚れが一切ない」

 「よくわかったな。これは汚れを取り除く加工が必要ない。極上の品質で汚れが一切ない」

 「すばらしいな。どこで手に入れた」

 「これはシン様発見の塩だ。シン様の代理人から仕入れて来た。買うか?」

 「もちろん」


 「ああ、言っておくがこれを高値で売ると神罰が下る。ここで使う分だけにしておけ」

 「いくらだ」

 「お前は友達だから、安く売ってやろう。塩板は1枚35キロだ。1.5倍の重さの砂金でどうだ」

 「買った。4枚くれ」

 「わかった。誰かにとりに来させろ」


 また値が上がったと思う隊員であるが、積み下ろしも大変な重労働だと身に染みたので相応の値段だろうと思ってしまう隊員である。


 「それでうちのが大変喜ぶ品物とはなんだ」

 「これだ」

 「なんだ、この布切れは」

 「今や大人気の巨木マークの女性用下着だ。巨木マークは本物だぞ。巨木マークをつけなければ模倣品も許されているそうだが、これは本物だ。品質が全く違う。シン様デザインの巨木マークの女性用下着だ。買うか?」


 「シン様と言われては買わねばなるまい」

 「そうだろう、そうだろう。今回は数がないからお前の屋敷の人だけだな。古手の女中を寄越してくれ。その人に販売してもらう」

 「わかった。値段はいくらだ」

 「まずは一晩女性たちに身につけてもらって、その結果、そちらで値を決めていい。明日の出発は日の出だ。それまでに代金を持って来てくれ」

 「わかった。安くても文句はないのだな」

 「ああ。構わん」

 「じゃあすぐ古手の女中と、塩を引き取りに何人か寄越す」


 ヘラールが戻ってすぐ男衆が砂金を持ってやって来た。砂金と引き換えに塩板4枚持っていく。

 「毎度あり」

 その後に女中さんがやって来た。大体のサイズがわかっているのだろう。見繕って持って行った。


 「隊長、塩は儲けたっすね」

 「正当な儲けだ。塩の輸送は重くて大変な手間だ。それにあんなものを見えるようにベーベーに積んでみろ。金塊がベーベーの両脇にぶら下がっているようなものだ。必ず襲われる。それに対応するために隊商がわの人数も必要だ。輸送の費用もバカにならない。だから高くなるのも当たり前だ。今回は儲けたのも事実だが。それに値崩もまずいだろう」

 「そうっすね」


 翌日、日の出前にヘラールに起こされた。

 「バカに早いじゃないか」

 「それがな、女房が早く行けと言ってな。これが代金だ」

 砂金の袋を数個出した。


 「もらいすぎだ」

 「今度来るとき少なくとも一人分5、6枚持ってきてくれというお達しだ」

 「へえそうか」

 「ああ、実は模倣品を買っていたようなんだ。それもかなり高値だ。ところが一晩着てみたところ本物のあまりの着心地の良さに仰天したんだとさ。女子衆が全員仰天したらしい。いままで高値で粗悪品を掴まされていたとお冠だ」


 「さすが巨木マークの製品だな。ところで男物もあるが、お得意さんだから上下、1枚ずつやろう」

 「すまねえな」

 「いいってことよ。次回は買ってくれ」

 「わかった」

 「それじゃ俺たちはいくから」

 「ああ、またこいよ」


 ラシードたちがベーベーを引いて行った。

 あれ、やつは塩板を積んでなかったがどうしたんだ。俺のところで売り切れか。まさかな。

 わからないヘラールであった。


 ヘラールのオアシスを出て、砂丘を越えたところで積荷をダミーに積み替えようとして、皆が気がついた。

 「隊長、塩を出して積むのを忘れたっすね」

 「いけねえ。線指輪の中だ。まあいい。どうせヘラールのやつは気がつかないだろう」

 「そうかなあ」

 「いいってことよ。あと4日もすれば我が家だ。涼しいうちに距離を稼ぐぞ」


 空荷に加え、今日までの旅路で、冷たくて美味しい水が飲める、飼い葉が貰える、塩が貰えるとわかったからベーベーは快調に歩く。


 「隊長、これは最強の隊商になりそうですね。ベーベーの速度、商品の量、全てにおいて他の隊商より勝つんじゃないですか」

 「ああ、シン様のおかげだな。砂漠の高速商船だ。慢心せずに良い商品を仕入れるようにしよう」

 「承知」


 ヘラールのところを出て4日目に入ったところでオアシスが見えた。ヨーセキオアシスだ。

 「帰ってきたぞ」

 自然と足が速くなる。


 屋敷について最初に言われた言葉は、

 「買ってきたでしょうね」

 お帰りなさいもない。がっかりである。


 女性が集まってくる。

 「早く出して」

 「わかったよ」

 収納から出すとあちこちから手が伸びる。

 多少の儲けで売った。

 「今度はもっと仕入れるように」

 ありがたいお言葉だ。


 隊員から預かった土産を隊員に渡して、隊商の出発は一ヶ月後とした。

 自分のオアシス用に塩板を10枚線指輪から出した。

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