336 反乱軍鎮圧
僕らは今日は忍者ですよ。忍者。
草原の民も支度が終わったようだ。
テントを収納して、アレシアス王国王宮前に転移。
もう整列しているよ。二百人衆のバトルホースに乗った料理人たちも観察ちゃんが連れて来ていた。
では挨拶。
「今日は手伝っていただきありがとう。コクサールという砂漠の向こうの草原の国で、謀反が起こり国王夫妻が殺された。ここにいる兄妹は国王夫妻の遺児だ。権力を恣にするための反乱だ。僕はこの二人の手助けをすることに決めた。皆が手伝ってくれると犠牲が少なく乱がおさまるとおもう。今日はよろしく」
「オー」
この国も同じ様なことがあったからね。助けてやろうという気持ちになったようだ。もっとも僕のためならなんでもいいんだろうけど。
兄妹からお礼の言葉があった。
「今日は女王と執事長と侍女長に我の関係者の印、線指輪を授ける」
アカがお盆の上に線指輪と水をセットして出します。
まずは女王だ。水を飲んでもらう。体が光る。指輪をする。体が光る。執事長、侍女長も同様に体が光った。よしよし。
シン様万歳、女王陛下万歳、執事長万歳、侍女長万歳の歓呼の声が響き渡る。これでシン様に女王陛下が認められ、我々もシン様の軍になれたと涙ぐんでいる。
ほらねとアカ。
困ったね。そうだ狐面を配ろう。みんなに狐面を配る。
僕も狐面を被る。お揃いだからみんな嬉しそうに被る。
草原の民は狐面はなしです。もちろん。
王子はエレーネ女王から借りた馬。王女はもちろんスノー。おつきの人4人も女王に借りた馬だ。15人は殿下の旗印2本を持って最前列だ。徒士だ。服装は下級兵士の服をオリメさんが昨日渡したのでそれを着ている。様になっている。
「これからコクサール国に入る峠の手前に転移する。それから両殿下を前にして、軍の演習している草原に降りていく。軍は演習中でこの度の謀反には関係していない。両殿下を慕うものが多いと聞く。うまく合流がなれば、軍と宮殿に攻め入る。僕らは手伝いだ。だが殿下の威容を示さなければ軍もついて来づらい。諸君たちの役割は重要である。女王を先頭に威容を正して行進しよう」
「ものども行くぞ」
「オー」
「転移」
徒士を先頭に王子、王女、お付き。僕ら。女王、兵、二百人衆の手伝いの順で転移する。
峠の手前だ。ここからは王子に指揮をとってもらおう。
「前進」
旗印を先頭に王子が峠を越え進軍する。麓に軍が見える。王子の旗印を認めたみたいだ。兵が集まり始める。草原に一番近い低い峠なのですぐ麓に着く。軍は整列した。
王子、王女が前。旗印が両脇。おつきの人。その後ろが僕らと女王、執事長、侍女長。その後ろが100騎と二百人衆の手伝い。草原の民の軍2000より立派だ。軍は我々に勝てぬと思ったのだろう。静かだ。
「皆の者よく聞け。国王は遠縁のグリゴリーに殺された。謀反が起きた。さいわい私たち兄妹と宮殿にいたものは逃れることができ、私たち兄妹はここにいるシン様とその軍に助けられた。諸君。この謀反は、権力を恣にするための反乱だ。その様な者に国を渡してはいけない。我と共に国を取り戻す戦いに加わってくれるか」
「その後ろの者たちはなんだ。狐面などおもちゃの兵士ではないか」
反王子派だろう。
一騎前に出る。
「そう思うならかかってこい」
かかって行った。よせばいいものを。
一刀のもとに斬り伏せられた。凄まじい太刀筋だ。
「まだやるか」
誰も出てこない。
「私につかないというのなら止めはしない。去るが良い。処罰もしない」
100人ほどが出て行った。残っても地獄、進んでも地獄とわかっているのだろう。下を向いて去って行った。
「ものども我と共に進軍しよう。この国の未来のために、正しい政を行うために力を貸してくれ」
「デヴィット殿下万歳。ジャミラ殿下万歳」
すぐに将校が集まり、訓練のための編成から戦うための編成に変えて宮殿目指して進軍を開始した。女王が貸していた馬も戻って来た。
僕らは殿かと思ったら殿下に前にお願いしますと言われてしまった。しょうがない。行くか。
進軍スピードは驚異的だな。さすが草原の民。馬をよく知っている。馬を休ませながら、走り続けられる速さの最速の走りをする。二日で宮殿が見えた。
遠巻きに宮殿を包囲。包囲し終わったら食事をした。二百人衆が用意してくれる。なるほど。腹が減っては戦が出来ぬだな。確かにそうだ。僕らも食事だ。狐面は優れものだから食事も出来る。ほとんど皮膚だな。叩けば硬いけど。
休憩の後、宮殿に攻め入る。向こうも必死の抵抗だ。1000いるから大変だ。女王の兵は女王の指揮で反乱軍から逃れる兵を捕らえたり、交代で前線の手伝いに行ったりしているようだ。ほどほどに手伝う。なかなかよろしい。僕らはいるだけの手伝い。
そろそろ終わりだね。だいぶ攻め込んだみたいだ。1000人の大半が捕虜になった。私兵以外は寝返る兵も多かったのだろう。
宮殿内から歓声が聞こえて来た。反乱首謀者のグリゴリーを捕らえたのだろう。
女王の兵も全員帰って来た。返り血は浴びているが、無傷だ。良かった。
兄妹が挨拶に来た。
「ありがとうございました。おかげさまで国を取り戻せました。このご恩、生涯忘れません。子々孫々伝えます」
「これからが本当の戦いです。国内を安定させ、民に平和な暮らしをもたらすようお願いします」
「承知しました。全力を尽くします」
「ではお元気で」
僕らは転移だ。
アレシアス王宮前広場に転移。女王様にお礼を言って、全員を汚れ飛んでけした。神国に帰ろう。みなさん狐面を大事そうにしまっている。従軍の証と言っている。まずい。執事長に前回の人質奪回作戦に参加した人たち用の狐面を配ってくれるように渡した。
「シン様と何時何時までも」の合唱が始まった。女王も執事長も侍女長も広場にいた人も加わって大合唱となった。ここまで広まっているの?野外劇場恐ろしだな。しょうがない。手を振ってゆっくり神国に転移した。




