318 イヅル国に人攫いが来た
さてお昼を食べたから何しようかね。
ジェナはお昼寝。
その間に、観察ちゃんから地図とアジトの配置図、宿と族長屋敷の配置図が届きました。早速みんなで共有しました。アジトは歓楽街の場末にあるね。なんとなくお似合いだ。
『シン様、シン様。イヅル国でお狐さんが子供と遊んでいるところに人攫いが来たよ。足首チョンチョンしたから歩けないけど』
『わかった。行ってみる』
ジェナはお昼寝だね。それじゃ僕とアカと三人組で行ってみよう。
アカに乗って転移して行ってみると、五人が足首の腱を切られて倒れていた。傍にお狐さんと観察ちゃん。
「人攫いかい?他に仲間は?喋ったほうがいいと思うが」
「喋るか」
「そうかい。それじゃのぞいてみよう」
喋るかと言った男が倒れた。
「あーあー」
「あと5人か」
「ブランコ、ドラちゃん、ドラニちゃん5人捕まえてきて」
ブランコが走って、ドラちゃんとドラニちゃんが飛んでいった。
「お狐さん、心配しなくていいよ。ちょっと待っててね」
倒れている5人と一緒に大君の屋敷の門前に転移。ブランコが一人咥え、背中に一人乗せ、ドラちゃんが二人下げ、ドラニちゃんが一人下げて続けて転移して来た。
「こんにちは」
門番が慌てて奥に走る。
すぐ大君が出て来た。
「どうも。お狐さんに頼まれて人攫いを捕まえて来ましたので受け取ってください」
「これはすまない。中に入ってくれ」
「お狐さんが待っていますのでまた後で。それはそうと、人攫いが多いようですね。イヅル国への出入り口は一つですからそこになにか出入りを監視するような施設を作ったらいいんじゃないでしょうか。常駐の監視所を作るかどうかして民の安全を守ったほうがよろしいかと思います」
「思いいたりませんでした。早速関所頭を任命し手配します。申し訳ない」
「ではお狐さんが心配していますので失礼します。そうそう、この前もお目にかかったと思いますが、この観察ちゃんはお狐さんと一緒にいることが多くなりました。よろしく」
消えた。頬をつねった。痛い。それに10人の男が残された。男の一人は「あーあー」と言って涎を流している。
「このあーあー言っている男はどうしたのだ」
人攫いがポツリと言った。
「あの子供が尋ねたのに答えなかったから頭の中身を抜かれたらしい。恐ろしい」
「そうだな。俺もそう思う。素直に取り調べに応じるか?」
「ああ」
「足を怪我しているようだが」
「あの小さい動物が小枝のようなものでスパスパ切って回った。頭の中に声が響いてきた。『おまえなど首スパーンだがお狐さんが悲しむから、足首の腱で我慢してやる』そう言われた。あの顔と体つきからは信じられないが、凶暴で強く恐ろしい小動物だ」
「そうか。おい、男たちを捕まえて牢に入れ、よく調べろ」
男たちは牢に連れていかれた。
「お狐様に心配をかけてはならぬ。関所頭を任命する。頭と兵を20人現地に送る。とりあえず、現地に幕舎を建て外との出入り口を常時監視させろ。それから出入り口の近辺の大工に関所と宿舎を作らせろ。頭に差配させろ。代金はしっかり払え。関所頭の任命書が出来次第、すぐ出発させろ」
年寄りが急いで屋敷に戻って行った。
やっぱり俺はシン様はお狐様の保護者だと思う。お狐様は心優しい天真爛漫な子供のような神様だが、シン様は優しいが恐ろしい。頭の中身を抜かれたら廃人だ。形は子供だが、子供ではあるまい。あの犬もシン様と同じ気配だ。白い狼、ドラゴン。真の姿はわからぬ。恐ろしいのではないか。あのカンサツチャンというのは保護者のシン様が派遣したお狐様にない恐ろしい力なのかもしれないな。余計なことを言うのはやめよう。あ、娘がワケ知り顔でのぞいている。こちらも恐ろしいから黙っていよう。
お狐さんのところに戻った。
「もう子供と遊んでも大丈夫だよ」
お狐さんが飛びついてきた。ヨシヨシいい子だ。
「そうだな。子供の親にも話しておこう」
お狐さんもついてきた。
村人が心配そうに集まっている。
「こんにちは。僕はお狐様の友達でシンと言います。さっき人攫いが来ましたが、お狐様に頼まれて大君に届けました。大君はすぐに関所頭を任命しこの国の出入り口を監視すると言っていましたのでもう大丈夫でしょう。それと国の中に今人攫いはいません。安心してください。それから人攫いを歩けなくしたのはこの小さい動物で、観察ちゃんといってお狐様の友達で一緒にいることが多いです。よろしく」
まあ大丈夫だろう。お狐さんと森の中に戻って、血の跡を消して、もう一度お狐さんを抱っこして撫でてから、神国に転移した。
あれジェナが起きている。エスポーサがついてくれていたようだ。
「おとたん。いなかった」
「ごめんごめん。昼寝してたからね。イヅル国に悪い人が入ったから退治してきた」
「おとたん。いなかった」
抱っこしてヨシヨシ。まだ足りない。そうかヨシヨシ。ヨシヨシしながら部屋の中を歩き回る。だんだん機嫌が直ってきた。ブランコの背中に乗せてやる。ドラちゃんとドラニちゃんと遊びに出て行った。良かった。




