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目覚めた世界で生きてゆく 僕と愛犬と仲間たちと共に  作者: SUGISHITA Shinya
第四部

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299/499

299 ラシード隊長 オアシスに帰る

 「ああ、俺たちのオアシスだ。帰って来たぞー」

 隊員が叫ぶ。ラシードはへラールのオアシスを出てから4日かからずにオアシスに着いた。

 隊商はすでに着いていて市を開いていた。


 「あなた、あなた」

 ここにもうるさい奴がいた。

 「なんだ。娘は戻ったろう」

 「それはシン様がドラゴン様で届けてくれたんだけど、娘がシン様ーーと言ってばかりで、それも大変だけど」

 砂漠の純情女王を笑えなくなったな。

 隊員がやっぱりという顔をしてニヤニヤしている。


 「そのほかになにかあるのか」

 「若いベーベーを55頭、ドラゴン様が乗せて運んできました」

 「なんだと、誰かのものだったのか。焼印はあるのか」

 「何もない。本当に何もない。病気もない。若いベーベーです」

 「大変な財産だ。どうするんだ」

 「それを私が聞いています」

 「そうだな」


 隊員はここにもへラール族長と同じように掛け合いする人がいると思った。

 ラシードが気がついた。

 「お前らは市場を手伝いに行け」

 「へいへい」

 しょうがない奴らだ。


 「シン様の手紙があります」

 「部屋で見よう」

 執務室に入って手紙を読んだ。


  ラシード様

     奥様

   砂漠で誰の持ち物でもないベーベーを55頭拾いました。

   僕が持っていてもしょうがないので、差し上げます。

   病気もありませんのでどうぞお使いください。

    ○年○月○日

      樹乃神


 シン様が誰のものでもないというからには、誰も俺のものだと言って来る人はいないのだろう。

 弱った。恩が積み重なっていく。

 「弱ったな」

 「そうでしょう。お礼のしようがない」

 「そうだな。本当に弱った」


 「どうやって使うの?」

 「ああ、それは簡単だ。今度塩の取引を大きくする。それに使う」

 「塩の取引とは何よ」

 「お前がシン様に書かせた紹介状の話だ」

 「書かせたなんて」


 「まあいい。その取引相手のエチゼンヤさんと商談をして来た。アレシアス王国までエチゼンヤさんが岩塩を運んでくれる。その倉庫から買い付けて、塩を売る。商品に塩が増えた分、ベーベーも必要だ。忙しいぞ。ベーベーが増えてよかった。足りないところだった。人も育てなくてはならない。お前もシン様に紹介状を書かせたのだからしっかり働け。娘にも手伝わせろ。それとこれが土産だ。何だかよくわからないがお前と娘のだ」


 「何だかよくわからないものをもらっても」

 「塩の取引相手のエチゼンヤさんの本拠地はアレシアス王国の先の亡国を越え、さらにアングレア王国を越えたリュディア王国だ。アレシアス王国の定宿にベーベーを預けて馬を借りて行って来た。土産はエチゼンヤさんがやっているスパエチゼンヤというのがあって、その中の大きな店で買って来た。店員さんのお薦めだ。スパエチゼンヤは大きいぞ。ちょっとした街より大きい。周りは壁で囲まれて難攻不落の城のようだった。このオアシスよりはるかに大きい。エチゼンヤさんは商売人のふりをしているが、ほとんど城主だ。建物も見たことがないくらい素晴らしい。設備も聞いたことも使ったこともないものばかりだ。俺たちは田舎者と思い知らされた。その土産は田舎者にはわからん品だ」


 「そんなことを言われてもねえ」

 ガサガサと袋を開け覗き込む。

 「えええ。待ってね」

 袋を持って娘を呼びながら奥に走っていった。


 しばらく経って娘と戻って来た。二人とも目の色が変わっている。

 「あなた、さっきの土産は大量に仕入れなさい。必ず売れる。バカ売れだわ」

 「お父さんが珍しくいいものを買って来た。絶対また買って来てね。一着だけではどうしょうもない」


 「サイズがあるから各サイズ仕入れるのよ」

 「サイズかあ。わからねえんだよな」

 「あれ、おかしいわね。サイズはぴったりだったわ」


 「それが店にアドバイザーがいて、隊員の家族の分も全部店員に指示していた」

 「そのアドバイザーさんはどうしてサイズがわかったんでしょう」

 「わからん。小さい動物のようだった」


 「都会は田舎者にはわからないのかしらね」

 「ああ。謎だ。店を出る時、狐面の人形に敬礼された。スパエチゼンヤは謎だらけだ」

 娘はご機嫌で奥に行った。


 奥方が声をひそめてラシードに言った。

 「娘がねえ。シン様ーーと言っているのよ」

 「働けば忘れるだろう」

 「そうもいきそうにないのよ」

 「純情女王のようになっても困るな。これも困ったな。苦情は言えないし」

 「誑しなのよ。シン様は。誑す気がないのよ。だから余計誑されてしまう。本人は気がついていないのよ。だから悪質なのよ。誑す気があって誑したならとっちめる事もできるけど、勝手に誑されているから困るのよ。女殺しなのよ。私ももっと若かったら」

 「これ、悪質だなんて」


 だが本当だな。純情女王を見ると。これも困ったな。純情女王のように根が深くなければいいが。まてよ、最後に何か言ったような気がするが何だったんだろう。

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