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目覚めた世界で生きてゆく 僕と愛犬と仲間たちと共に  作者: SUGISHITA Shinya
第四部

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281 ラシード族長と部下 土産を買い砂漠に帰る

 翌朝、エチゼンヤさんにスパエチゼンヤの見学をしたいと申し出た。エチゼンヤさんは砂金をこの国の硬貨に換えてくれた。純情女王の国でも問題なく使えるので余っても持っていればいいと教えてもらった。


 それと板状の岩塩10枚をもらってしまった。見本で見せてもらったのより遥かに大きい。およそ長辺100センチ、短辺60センチ、厚さ5センチ。重さは重い。35キロくらいか。ベーベーには4枚か6枚だろう。馬なら荷車だな。勿論線指輪に収納した。


 まずは忘れてはいけない娘や家内への土産だ。エチゼンヤスパ支店の中のオリメ商会と言ったな。

 「ここだ。入ってみよう」


 「広い。迷子になりそうだ。離れるなよ」

 隊長が人波の中に切り込んでいく。目の前に裸の女の人だ。思わず全員目を逸らす。

 店員さんににっこりされた。

 「人形ですから大丈夫ですよ。国の奥さん、お嬢さんの土産でしょうか。お手伝いしましょう」

 「お願いします」


 「サイズはどのくらいでしょうか?」

 「サイズとは?」

 「胸のサイズです」

 「え」


 全員顔から火が出るようだ。固まってしまった。

 「わからない」

 やっと声を絞り出した。


 その時どこかで見たことがあるような気がする小動物が店員さんの肩にスルスルと登って何やら指差す。

 店員さんは慣れているようだ。

 「こちらは、この方のですか」

 小動物がうんと言っているようだ。あっという間に5人の手元に服というか布切れというか、わからない物が積み上がる。


 「それでは、これらの品物がサイズが合うようです。会計はあちらです」

 自分の前に積み上がったものを各自持って会計に行く。


 値段を言われても通貨がわからないから手のひらの上に通貨をいくつかだすと取ってお釣りを手のひらに乗せてくれる。品物は袋に入れてくれた。袋に名前を書いてもらい、収納した。


 収納には誰も驚かない。いや、驚いている人もいた。一見して田舎者である。自分たちもそうかとがっかりした。


 干し芋の老人に何か買って行こうとウロウロしていたら作業用の帽子が売っていた。首筋に日除の布が垂れていてなかなか良い。自分たちの分も含めて購入した。

 「ありがとうございました」の声と共に店を出る。


 狐面の人形が敬礼してくれる。なんだかわからないが会釈をした。狐面が嬉しそうだ。謎の人形だ。さっきの小動物といい、謎の支店だ。


 どっと疲れが出て巨木が聳えている広場のベンチに座り込んだ。

 「砂漠でベーベーを引いていた方が楽だな。帰ろうか」

 「土産も買ったし帰りましょう」

 「旅館に戻ってエチゼンヤさんに話して帰ろう」

 誰も帰ることに反対しなかった。

 少し休んで旅館に戻った。


 ロビーでエチゼンヤさんを呼んでもらった。すぐやって来た。

 「申し訳ないが足元が砂でないと落ち着かないから帰ります」

 そう言うと笑っていた。


 「こちらへどうぞ」

 厨房らしいところに案内された。出来上がった料理と山のように食材が置いてあった。

 「収納してお持ちください」

 エチゼンヤさんはこうなる事を予想していたようだ。

 「お気遣いありがとうございます。いただきます」

 収納した。収納は一杯になった気配がない。


 「シン様からもらった線指輪は一辺100メートルの立方体の容量があるようですよ。隊商の荷物が入りますか」

 「私どもの隊商はベーベー100頭規模です。今お聞きした容量ですと全部荷物を収納しても微々たるものです。それにベーベーに荷物を積んでおかないと不審に思われてしまいます」

 「それはそうですね」

 皆で笑い合った。


 「すぐ立ちますか」

 「はい。食事もいま収納させていただいたので出たいと思います」

 「そうですか。厩はこちらです」

 厩に飼い葉が用意してあった。ありがたく収納させていただいた。

 馬丁が馬を引いて来た。

 「それではお世話になりました」


 「帰りに岩塩の山を見て行って下さい。線指輪を見せれば入れます。場所はわかりますか?」

 「はい、来る時入り口はわかりましたので寄らせてもらいます」


 旅館の玄関にはエリザベスさんと従業員が整列していて見送ってくれる。

 「今度ぜひ砂漠においで下さい。その時はご案内します」

 「はい。よろしく」


 馬に乗って大手門を目指す。エチゼンヤスパ支店辺りから人が出始めるので下馬して歩いて行く。今日もゴードンさんは警備の詰め所でお茶を飲んでいる。暇なのだろうか。出て来て見送ってくれた。


 「またな。今度来た時は神国を案内するよ。元気でな」

 「わかった。その時はよろしく。砂漠に来るようなことがあったら寄ってくれ。ラシードのオアシスと言ってくれればわかる」

 「そうかい。その時は頼む」


 門前を過ぎて人通りが減った辺りから乗馬し、女王の国を目指す。

 途中岩塩の採掘場所を見せてもらった。塩の広い台地状の平原だった。確かにこれは掘り尽くせない。無尽蔵だろう。


 アングレア王国の国境の監視所の爺さん達に土産の帽子を渡した。喜んでもらえた。野菜をもらってしまった。収納した。収納があるのならと種芋を貰った。シン様の芋で丈夫で手がかからず美味しいそうだ。確かに干し芋も美味かった。


 女王の国に戻ってベーベーと再会する。ほっとした。

 「砂漠に帰ろうな」

 ベーベーの首筋を撫でてやるとベーベーと鳴いて喜んでいる。


 料金を精算してベーベーに乗って純情女王の国を後にした。リュディア王国からここまで来る間、どこでも純情女王で通っていた。恐るべし、シン様。


ベーベーは嬉しそうにベーベー鳴きながら砂漠を目指す。ベーベーは山道、特に下りが苦手なのでベーベーから降りて引いて下った。


 森の中を通って砂漠に帰って来た。ベーベーから降りて歩く。

 思わず靴を脱いで裸足で砂の上を歩く。砂の暖かい乾いた感触が足に伝わってくる。


 「やっぱり砂漠だな」

 全員の感想である。

 「急ごう。今度はシナーンのオアシスとヘラールのオアシスに寄ろう」

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