279 ラシード族長と部下 エチゼンヤに会いにリュディア王国に行く
日が昇ると今日もラシード隊長は元気だ。
「よし、行くぞ」
森を通り越し、山道を登り、アレシアス王国王都に着いた。
まだ塩は出回ってなかった。常宿に一泊。ベーベーを預かってもらうことにして、馬5頭を借りた。すぐ出発。
山道を降り、亡国を目指す。それらしい商人とは出会わない。背丈の高い草原の中の石畳道を行くと森になり、国境監視所が見える。
「ここはアングレアの国境ですか?」
「そうじゃが」
「リュディア王国に行きたいのですが、道はこの道でいいですか?」
「ああ、これは東西街道と言って、まっすぐ行けばリュディア王国じゃ」
「どちらから来なすった?」
「アレシアス王国の先の砂漠だ」
「アレシアス王国の先かい。アレシアス王国には純情女王様がいてな、シン様に惚れちょるのじゃ」
なんだそれはと思う5人である。そんなことが有名になるのかと思った。
そういえば、娘がドラゴンに乗る時、シン様に手を引かれて真っ赤になっていたと思い出し、不安に駆られるお父さんであった。
「娘さんも危ない」
余計なことをいう隊員である。
「それで通っていいのかい?」
「ああ、干し芋を持っていくかい?シン様からもらった芋から作った干し芋じゃ」
「貰おう」
たくさんもらってしまった。これが収納できたらいいのにと思ったら消えた。指輪の中に入っているのがわかる。
「干し芋ありがとう。また帰りに寄らせてもらう」
慌てて馬を走らせる5人。
「おい、干し芋が線指輪の中に入った」
「そうみたいですね。消えたのを見ました」
「どのくらい入るのかわからないが、全然一杯になった様子がない。これは大変なことだぞ。もし、隊商の荷物全て収納できたら」
「俺たちにかなう隊商はないでしょう」
「これは、危ないな。よく考えて使わせてもらおう」
村があれば少しづつ食料を調達した。村を出る時はベーベーにくくりつけたが、村を出てしばらく行ったところで線指輪に収納。それを繰り返しながら、ついにリュディア王国の国境に到達した。
リュディア王国とアングレア王国との国境にはちゃんとした警備員がいた。アングレア側にしかいない。聞けば一ヶ月交代で警備をしているのだそうだ。友好国ということなのだろう。線指輪を見せたら通してくれた。
「なんと、線指輪だけで通れるのか。すごい指輪だ」
「ほんとですね。隊長が持っていていいんでしょうか」
リュディア王国に入って軽口が出る5人である。
ひたすら前進すると、何やら山に向かって新しい道ができている。はるか稜線の方で人が動いている。何か作っているらしい。人が山道を降りてきた。
「ここはなんでしょうか」
「おまえさんたちは何者だ」
不審そうに見るから線指輪を見せる。
「エチゼンヤさんにお会いしたく王都に行く途中です。ラシードと申します」
「ああ、そうかい。これはシン様の岩塩平原に通じる道だよ」
「採掘は始まったのでしょうか」
「採掘はまもなくだな。ほれ今稜線の所に監視所と、宿舎を作っている。ほぼ完成だ」
「そうですか。ありがとうございました」
「このあたりはほとんど魔物は出ないけど、気をつけていきな。エチゼンヤさんなら王都城門の近くのスパエチゼンヤにいると思うよ」
「ありがとうございました」
「隊長、最初は不審者だったけど、線指輪で知り合いのようになりましたね」
「ああ、この線指輪に大変な信用があるみたいだな。信用を傷つけないように気をつけなければ」
夕方に王都の城門が見えるところまで来た。さてどこだ。近くを歩いている人に聞いてみる。
「もし、スパエチゼンヤというのはどこでしょうか」
「田舎から出てきたのかい。あの大きな森だよ」
なるほど大きな森がある。一番南の方が大変賑わっている。
「あの賑わっているところがスパエチゼンヤの大手門だ」
「ありがとうございました」
「えらい規模だな。あれが全部エチゼンヤのものなのか。すごいな。とりあえず大手門まで行こう」
「あの塀は城壁よりしっかりしていそうだ。魔物も軍隊も寄せ付けないだろう」
「しかし混んでいますね。門前も市になっているようですね」
「お祭りのようだな。皆楽しそうで」
「あそこに警備の詰め所のようなものがあるからあそこで聞いてみよう」
馬を降りて人混みの中を詰め所に歩いていく。
詰め所にはお茶を飲んでいる精悍な男がいた。
「もし。すみません。エチゼンヤさんにお会いしたいのですが」
「誰だい?」
「砂漠の民のラシードと申します」
「知らないな」
「シン様から紹介状をいただきました」
男が居住まいを正す。
「これです」
「拝見」
男は、紹介状を見ると小さな板のようなものを出して何か話しかけている。
「わかりました」
小さな板が消えた。収納したのだろう。
「案内しよう。俺はゴードンだ」




