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目覚めた世界で生きてゆく 僕と愛犬と仲間たちと共に  作者: SUGISHITA Shinya
第四部

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275/499

275 助けた大君の姫を送る 砂漠の旅 ラシードさんのオアシスにて(上)

 オアシスの入り口を警戒していた人にラシードさんの屋敷に案内される。


 隊商宿が立派だ。きちんと塀で囲んである。出入り口は一箇所と観察ちゃん。やはり中庭があるのだそうだ。細長い池が作ってあって、中央に一列噴水があるってさ。豪華だ。回廊があって一階はベーベーを預かるところ、倉庫、事務室などがあり、2階に宿泊施設があるんだそうだ。すごいねえ。


 「こっちだ」

 少し歩いていくと立派な屋敷があった。

 さっきの人が中に入って話に行った。すぐ男の人が出てきた。リュディア王国などで言えば執事だろうな。執事としておこう。

 「どうぞこちらへ」


 ベーベーとバトルホースは預かってくれるようだ。馬丁、ベーベーの係だからなんて呼ぶんだろう。こちらも馬丁にしておこう。馬丁さんはベーベーとバトルホースの大きさと、オーラに腰が引けている。


 「おとなしいし、聞き分けが良いから大丈夫ですよ。水でもやっておいて下さい。また柵はしないでください。出て行ったらそのままで構いません」

 そう馬丁に言ってやりました。少しは安心したかな。


 ブランコはエスポーサを下ろして小さくなった。執事さんはびっくりしているが、みんなを招き入れてくれた。客間だろうね。暑いから開放的だ。庭が見える。


 やつれた女の人が出てきた。

 「ラシードの家内です。今日は娘のことでお話をきけるという事でしたが」

 「シンと申します。こちらは私の家族です。結論から申し上げます。娘さんは今ラシードさんと一緒にこちらに向かっています。無事ですよ。叱られてシュンとしているようですが」


 「本当なのですか?」

 「最初からお話しましょう。ラシードさんとはこのはるか先の砂漠が切れたところの森で会いました。その森でラシードさんが商売に向かうアレシアス王国の政変、流刑に近い待遇であった王女が女王になった事を教えました。その情報の御礼にこのナイフを頂きました」

 ナイフを奥さんに渡す。

 「確かに。夫の族長ナイフです」

 ひと目見て返してくれました。


 「それから色々ありましたが、私の身内が誘拐されました。すぐ取り返しましたが、首魁はカーファ族長と誘拐犯が話していました。誘拐犯は、アレシアス王国の女王に殲滅を頼みました。私は身内を誘拐した者を許すことは出来ません。ラシードさんからカーファ族長の本拠地を聞き、悪人だけ殲滅しました。もっとも悪人だらけでしたからオアシスは潰れました。オアシスを出て私達が砂漠を歩いているとお嬢さんたちに会いました。水もなく困っていました。聞けばラシードさんの娘さんとのこと、また他にシナーンさん、ヘラール族長の身内の娘さんもいました。カーファ族長のオアシスが潰れたときに逃げ出したそうです。シナーンさんの身内はシナーンさんにお届けしました。ラシードさんの娘さんと、ヘラール族長の身内の娘さんはラシードさんに預けました。実はもう一人、ここにいるコマチさんも一緒にいました。私は、今このコマチさんを国に送り届ける途中ですが、お知らせだけでもとお寄りしました」


 「娘はどんなふうだったのでしょうか」

 「元気でしたよ。交渉に使おうとしたんでしょう。待遇は悪くはなかったようです」

 「はい。皆さん、人質でしたから、普通の待遇でした。私は人攫いに攫われて売られて来ましたが、私を使って儲けてやろうと思ったらしく、一緒に住んでいました」

 コマチさんが補足した。


 ああ、そうだ。絵を書いてやろう。

 紙とペンを取り出す。観察ちゃんの映像を元にラシードさんに怒られている娘さんを書いた。周りの隊商の人達とベーベーも書き加えた。

 「こんな感じでしたよ」

 紙を渡す。


 「確かにこういう風にいつも怒られていました。小言が聞こえるようです。隊員もベーベーもそのとおりです。間違いありません。ありがとうございました」

 奥さんが安心したようだ。執事も絵を見てびっくりしている。

 「たしかにこれはいつも怒られているお嬢さんそのものです」


 「では先を急ぎますのでこれで失礼します」

 「お待ち下さい。せめて一泊して下さい。娘の命の恩人をただ返すわけには参りません」

 アカがメンツもあるだろうから一泊したらと言っています。

 「そうですか。それでは一泊だけさせていただきます」

 奥さんはホッとしている。執事はすぐに侍女に目配せした。侍女が頷く。どの国でもできる執事は準備万端である。


 「ではオアシスを散策してきます」

 「昼の食事は我が家でお願いいたします」

 「わかりました。昼頃一度戻ります」

 シン達一行が出ていった。


 奥さんが執事に話しかける。

 「娘の事は確かだと思うわ」

 「はい。お嬢さんが旦那さんのところにいるのは確かと思います。この絵は叱られるところを実際に見ていなくては描けません。旦那さんとお嬢さんの細かい仕草、癖までその一瞬を捉えています。それに隊員とベーベー。一人一人、一頭一頭がそっくりです。お嬢さんが怒られているのを見ている隊員のしょうがないなあといういつもの表情も描かれています。ベーベーの一頭一頭の骨格、瘤が正確に描かれています。微妙な表情の癖など砂漠の民でも分かる人はそうはいません。うちの隊商の隊員でも数人です。それが見事に描かれています。確かにうちのベーベーです」


 「そうよね。確かだわ。カーファ族長のオアシスが潰れたって信じられる?カーファ族長は千人隊に守られていたはずよ」


 「シン様が連れてきたベーベーは確かにうちにいたベーベーのようですが、体格、オーラが全く違います。人間で言えば一騎当千でしょう。それに、はるかにベーベーより強いと思われるバトルホース。なぜ平然と砂漠を歩いてこられたのかわかりません。砂が鼻に入り息が苦しいはずです。目も痛めるし、足は砂にとられ、熱傷になるでしょう。それに白い狼、人を乗せていたのですが、スルスルと小さくなりました。聞いたことはありません。シン様が抱いていた小さい犬、ミニドラゴン。全く正体がわかりません。シン様は小さいお子さんですが、一行の主人のようです。シン様のつれの美しい女性達との関係が全くわかりません。そして幼児もいました。唯一わかるのは、攫われたというコマチさんです。普通の人間です」

 「そうよね。コマチさんだけは普通の人間よね」

 「はい。普通の人間はコマチさんだけです」


 「ラシードが族長のナイフを渡したのだからよほどの方なのでしょう。本当にカーファをオアシスごと殲滅したのかもしれませんね。絶対に失礼のないように徹底しておいて下さい。それから娘は無事、警戒態勢を解くようにと手配してちょうだい」

 「わかりました」

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