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目覚めた世界で生きてゆく 僕と愛犬と仲間たちと共に  作者: SUGISHITA Shinya
第三部

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257 変質者・性犯罪者である貴族の末路

 宰相執務室

 「宰相、近衛隊長が至急面会したいとのことです」

 「通せ」

 隊長はすぐ来た。


 「何かあったか?」

 「かねてより性犯罪に手を染めていると噂のあった貴族が、『この男、変質者・性犯罪者』と木札をかけられ、口が接着した様子で開かず、手足が曲がった状態で衛兵詰所前に捨てられていました。衛兵隊長は貴族のことだからと近衛兵の詰所に届けてきました」


 口が接着した、手足が曲がっただと。悪寒がしだした宰相である。

 「ドラゴンはいなかったろうな」

 「まだ出てきておりません」

 まだ、か。早く片付けないと出てきそうだ。


 「それでどうした?」

 「荷車に乗せ貴族の屋敷に届けました。貴族の屋敷は、何かあるといけないので表門、裏門すべて厳重に警備、屋敷から出ると危ないので、一切外出は控えていただいております」


 「近衛兵をつれて見舞いに行く。屋敷の中に賊が潜んでいると大変だ。近衛兵を30人ほど連れて行こう。一気に押し入り捜索、もとい、屋敷の中を警備する。全ての部屋の安全確認を丁寧にする。お前も来い」


ハビエル神父と廊下で会った。今日はシン様教の熱心な信者の王妃と先の王妃に会いに来たらしい。王妃と先の王妃が見送りだ。


 「おや、皆さんお揃いでどちらへ?」

 王妃だ。

 「貴族街に用があって」


 「性犯罪者の貴族が空から衛兵詰所前に出現して、口が接着し、手足が曲がっていると噂ですよ。その話でしょうか」

 王妃だ。

 「はい、そうです」


 「変質者ですから、被害者の名前を書いた書類などあるかもしれませんね。あったらどうします」

 「犯罪捜査のうえからはきちんと証拠を調べて被害者を調べるんでしょうね」

 「取り調べでまた被害に会うようなものですね」

 「役人としては証拠があったらそうするのでしょうね」

 王妃と先の王妃のご発言だ。


 「証拠があればそうですが」

 宰相が答える。


 「そうそう、ハビエル神父様、たまには宰相殿と近衛隊長殿にお付き合いしてシン様の奇蹟を道々説いていただいたらよろしいんじゃないでしょうか」

 王妃だ。先の王妃も頷いている。

 わざとらしいと思う宰相であるが、王妃と先の王妃のおっしゃることも理解はできる。


 「では参りましょうか」

 ハビエル神父は王妃と先の王妃に見送られてトルネードにまたがり、騎乗の宰相と近衛隊長、徒士の近衛兵と出かけた。ハビエル殿とトルネードはいつの間にか、貴族街であろうとどこであろうと騎乗で通行御免になったらしい。


 すぐ貴族街の貴族の屋敷についた。門は近衛兵によって厳重に封鎖されていた。


 近衛隊長が掛け声をかける。

 「一気に行くぞ。抵抗する者は賊が使用人に化けているのだ。逮捕だ。押し込めー」

 それでは押し込みだと宰相は思ったが一緒に入る。


 屋敷の中はゴテゴテ金満装飾であった。

 「たいてい地下ですな」

 ハビエル神父の進言だ。


 地下に入るとムッとした生臭さがある。拷問部屋があった。肉片や人骨もあった。

 犠牲者の名前を書いた書類があった。御丁寧に何をしたか書いてある。変質者である。胃から込み上げてくる。これは屋敷の中の人間も共犯だ。一人ではできまい。


 「建物が揺れておりますな。それに今日は天気が悪い。雷が落ちるといけませんな。急いで外に出ましょう」

 「近衛兵は全員屋敷の外に退避。屋敷の中のものは何も持ち出すな。急げ。屋敷の人間が出て来たら押し戻せ」

 宰相が命令する。近衛隊員は急ぎ全員退避した。


 空は青空だ。何が天気が悪いだと宰相は思うが、屋敷の上に黒雲が湧き出した。確かに天気が悪い。雲の中に雷光が見える。大層機嫌悪そうな雷光だ。

 屋敷が揺れるたびに屋敷の中心に向かって屋敷が四方から収縮していく。やがて収縮した屋敷を覆い尽くす特大な雷が落ちた。屋敷のあったところは大穴になった。何も残っていない。貴族もその家族も使用人も何もかも灰燼と化した。


 「地震え天怒るでしょうか。自然の摂理というものは恐ろしいですな」

 白々しいハビエル神父殿の発言だが、今回はこれで良かったのだろうと思う宰相だ。

 「そうですね。貴族も犯罪の詳細を書いた書類も消えました」


 「隊長、記録はどうしましょうか」

 近衛隊員が聞いた。

 「かねてより変質者・性犯罪者と噂があった貴族が、手足を骨折し、口が開けない状態で街中に現れたので、屋敷まで送り届けた。念の為宰相、近衛隊長立会のもと、近衛兵が屋敷の安全を確認したところ、性犯罪の証拠を発見、急に地が震え天気が悪化したので取る物も取り敢えず屋敷より退避。雷が屋敷に落ち、貴族、屋敷の使用人もろとも灰燼と帰した。ということだ」

 近衛隊長が答え、宰相が付け加える。

 「よろしく作れ」

 「わかりました」


 「ではこれで。宰相どの、王妃と先の王妃が心を傷めているといけません。報告をお願いします」

 ハビエル神父はトルネードに乗って行ってしまった。


 宮殿に戻って王妃と先の王妃に、屋敷内に性犯罪の証拠はあったが、貴族、使用人、証拠書類ともに雷に打たれて灰燼に帰したと報告した。

 「そう。それはご苦労様」

 王妃様に労われた。多分労われたのだろう。


 「ところで、性犯罪の被害にあった人が取り調べや裁判で被害を受けないようにする必要があるわね。今回の場合は、犯罪者が証拠とも灰燼に帰したので裁判の必要がなかったからよかったけど、トラヴィス、よく考えておいてね。いつもシン様に、もとい、いつも雷に打たれるということはないのだから」

 先の王妃が言い直した。やっぱりシン様であった。どうもハビエル神父がいるからおかしいと思った。


 「わかったわね」

 王妃だ。

 「承知しました。性犯罪被害者が取り調べや裁判でさらに被害を受けないように考えてみます」

 「よく考えないと今度は宰相の家に雷が落ちるかもよ。自然の摂理は恐ろしいわね」

 宰相殿は先の王妃に脅されてしまった。

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