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目覚めた世界で生きてゆく 僕と愛犬と仲間たちと共に  作者: SUGISHITA Shinya
第三部

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251/499

251 ラシード族長に誘拐の首魁カーファ族長の情報を聞く

 誘拐騒ぎ、ハミルトン家はもういいな。エレーネ王女一行にもスパエチゼンヤに二泊してもらったし。


 次はこの誘拐騒動を引き起こした張本人だな。カーファ族長と言ったな。


 ラシードさんはどこかな。観察ちゃんの報告では、砂丘の影でテントを張って休憩中だ。日が傾いて温度が下がるまで待っているようだ。

 起きているから行ってみるか。


 アカとジェナ、ブランコ、ドラちゃん、ドラニちゃんとベーベー、ベーベーマンで行こう。

 夕方までには帰るとマリアさんに連絡してドラちゃんに乗って砂漠へ。


 ラシードさんがテントを張っているところから砂丘を隔てたところにドラちゃんが着陸する。ベーベーとベーベーマンに鞍をつけ、パラソルを挿し、いざ、ラシードさんのテントへ。


 今日はベーベーマンに僕がジェナを抱っこし、アカも乗る。ベーベーには時々ドラちゃんとドラニちゃんが乗る。ブランコは歩き。今日はエスポーサがいないから暑いかも。そのうち冷気も自分で作れるようになるといいね。


 砂丘を越えるとラシードさんの隊商が見えた。ベーベーが見つけて鳴いている。

 何事かと、テントから隊員が出てきた。手を振ってやろう。気がついたみたいだ。砂丘を降りるとラシードさんが待っていた。


 「こんにちは」

 「おお、女誑しの坊主。子供もいたのか?」

 「出来た。娘のジェナです」

 「ひげのおじたん」

 ジェナがひげに手をのばす。

 ふわふわ浮いて触りに行く。慌てて捕まえる。

 「おい、今浮いていなかったか」

 「暑いから目の錯覚でしょう」


 「まあいい。巨大ドラゴンに比べたら小さなことだ。ベーベーが大きく若くなっているぞ。どうしたんだ。それに一頭は死期が近いから砂漠に放したベーベーみたいだ」

 「ちょっと疲れていたみたいだから、よく世話をしてやった」

 もはや悟りの境地に達しつつある隊長。

 「そのベーベーだと大金で取引される。狙われるぞ」

 「このベーベー強いよ。この間も何人も盗賊を蹴り殺した」

 悟りの境地に達した隊長。


 「それで今日はなんの用だ?」

 「ちょっと聞きたいことがあって」

 「なんだ?」

 「アレシアス王国の先に、亡国があって、その先がアングレア王国、その次がリュディア王国。そのリュディア王国で誘拐事件があってね。その誘拐を依頼した男に目星がついて、その男のことを聞きに来た」

 「テントの中へ入ってくれ」


 テントの中に入ったけど、中も暑い。外で日に照らされているよりいいだろうけど。日陰のテントだからだいぶマシなのだろうけど。


 「ここにいるのは信頼できる仲間だ」

 「そうなの。その誘拐犯の中にラシードさんの隊商にいた人がいたよ」

 「素行が悪く追い出した男だろう」


 「あ、間違えた。スコーピオンの方だった」

 「スコーピオンの方も関係しているのか。血黒岩山とか盗賊血涙山とか呼ばれているぞ。坊主の仕業か」

 「仕業だなんて。たまたま通りかかったら、ラシードさんの隊商を襲うために盗賊のみなさんが岩山に集合していたところだったから、知り合いを呼んで、ちょいちょいと。盗賊は153人いたかなあ。それにオアシスにおいでになった方もいるからもう少しいたよ。だから安全にここまで来られたでしょう?」


 「それはすまなかった。死体が一体もなかったそうだ」

 「死体があったら嫌でしょう」

 「まあな」

 「そうでしょう」


 「ソーロクでも活躍だったそうじゃないか。シナーンから聞いたぞ」

 「おしゃべりだなあ。人を窃盗犯で捕まえるから。冤罪は晴らさなくちゃね」

 「裁判官、検察、偽証の証人、役人、皆処刑されたぞ。白状させるためにスコーピオンを使ったらしいな」

 「たまたま知り合いのスコーピオンがいて、頼んだんだよ。喜んでたな」

 「スコーピオンに知り合いね」


 「そういえばさっきテントの影にいたよ。捕まえてこようか。靴を履くと中にいるかもよ」

 「ジェナがつかまゆ」

 ふわふわ飛んでいき、両手に一匹ずつ。胸に一匹つけて帰ってきた。

 「おじたん、食べる?」

 ジェナがスコーピオンを一匹ラシードさんに突き出す。鋏をチョキチョキ、尻尾を上げている。

 「食べない」


 「おとたんが、茹でたら色が変わるかどうかと思っていたよ。熱いお湯に入る?」

 三匹が一斉に必死になって閉じた鋏を左右に振る。

 「ジェナがスコーピオンと友達になったようだ」

 脅しているようにしか見えないと隊長と隊員は思った。


 「おじちゃんと話があって、今は遊べないからどこか遠くに置いてきな」

 スコーピオンからホッとした雰囲気が漂ってきた。

 「わかった。バイバイ」

 三匹が砂丘を超えて飛んでいった。天国か地獄行きだろう。


 「それでさっきの誘拐の話だけど、誘拐犯を泳がしておいたら、仲間内の会話で、誘拐犯に誘拐を依頼した人の名前が出て来てね」

 一同は仲間内の会話をどうやって聞いたのか、謎だが黙っていることにした。

 「オアシスの三族長の一人、カーファと言っていた」


 「待て、坊主はその誘拐事件に何故関わっている。理由によっては話は終わりだ」

 「理由は僕に手を出したからだよ。僕が関係者に与えた線指輪というのがあって、その指輪が欲しくて20人誘拐、指輪を取って、人質は売ることを企んでいた。誘拐された一人は僕が名前をつけた赤ちゃんだ。僕は専守防衛だから手を出して来なければ反撃しない。僕の防衛ラインを超えて敵対して来たものは人であろうと国であろうと滅ぼす。カーファ族長とその一味は滅ぼす。場合によっては領地全部滅ぼす」

 テントにいたラシードと隊員はゾクっとした。名高い滅びの草原が見えた気がした。


 「名付け親か。それじゃしょうがないな。砂漠の民は外の人に砂漠の民の情報は渡さない。たとえ悪人であってもだ。ただ例外がある。外の人が砂漠の民の悪意によって被害を受けた場合、被害を受けた人が砂漠の民の情報を聞いてきたとき、砂漠の民二人以上の同意により、砂漠の民の情報を渡す。名付け親と子は我々にとって実の親子も同様だ。子を誘拐されたことになり、条件をほぼ満たす。あとは、お前ら同意するか?」

 「同意する」

 テントに3人いた隊員が同意した。


 「何が聞きたい?」

 「カーファ族長の本拠地だけで良い」

 「本拠地はこの先のオアシス、ウータンだ」

 「ありがとう」


 シンが胸の前に両の手のひらを上に向けた。小動物が二匹手の上に現れた。

 「行ってくれるか?」

 小動物2匹が前足を上げた。前足が光った。

 「もう二人送るか」

 もう一度二匹が現れ消えた。


 「場所はわかるのか?」

 「ベーベーが知っていた」

 「それは何回も通っているが、ベーベーの考えがわかるのか?」

 「ベーベーは今は眷属だからすべてわかる。普通は力を使わないと全ては分からない」

 「眷属か。そちらの犬、狼、ミニドラゴンもそうか?今の小動物もそうか?」

 「そう。僕のアカと眷属だ。大切な仲間だ」


 「余計なことかもしれないが、カーファは千人隊という絶対服従の私兵を組織している。砂漠は厳しい。トップの統率がなければ生きられないのも事実だ。しかし、やつは、統率の意味を履き違えている。命令に服従させれば良いというものではない。人が人を統率するということは傀儡を作ることではない。おれはそう思う。やつの千人隊は傀儡だ。命令された通り襲ってくる」


 「教えてくれてありがとう。それじゃ行くけど、お礼にみなさんに水をあげよう。ベーベーにも水をやろう」

 テントから出ると隊商のベーベーが鳴き出す。飼い葉桶一杯ずつ水をやるとごきげんだ。

 「それじゃね」


 砂丘をベーベーが主人を乗せて越えていく。誇らしげだ。ベーベー2頭にも前にはなかったオーラがある。眷属のオーラか。


 ベーベーの去っていった砂丘を見ていると、砂丘の向こうからドラゴンの巨大な頭がぬっと出てきてドラゴンが浮き上がってきた。思わず腰が引ける。隊商のベーベーは騒がない。なにか意思疎通があったのかもしれない。

 ドラゴンはまっすぐカーファ族長の本拠地のオアシス、ウータンを目指して飛び去った。


 「我々もベーベーも水をもらったことだし、もう一日ここにとどまる。巻き込まれてはかなわん」

 「確かに。皆に伝えて来ます」

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