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目覚めた世界で生きてゆく 僕と愛犬と仲間たちと共に  作者: SUGISHITA Shinya
第三部

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231/499

231 泥棒にされ入牢する

 では、オアシスの街の見学に行きましょう。

 僕らがテントを張ったのは街の外れだ。だんだん中心に進んでいく。水路があるほかは、建物になってきた。窓が小さいね。


 大きな広場があった。市場だ。のぞいてみる。金属製品、貴金属、宝石、布、皮、穀物、香辛料、野菜などだね。特に欲しいものはないな。乳香なんていうのもある。高いね。儲かるんだろうな。


 ドロボー、ドロボーという声がする。4、5人こちらに駆けて来る。僕に向かって駆けて来るよ。ポンと品物を投げて来た。ははあ、これは僕を犯人にしたいのね。そうかい。何か理由があるんだろうね。よしよし、乗ってやろう。映像撮った?と聞いてみる。撮ったよーと二人から返事あり。みんながやれやれと言っている。だって暇つぶしにいいじゃないか。


 「お前が泥棒だな。その手で持っている商品が証拠だ。来てもらおう」

 僕の目の前にいる商人は下を向いてしまった。よくあるんだろうね。こういう冤罪事件は。

 衛兵だろうか、手際が良いねえ。僕も手際よく、エスポーサにベーベーを自宅脇砂場まで転移して連れて行ってもらう。ふふふ、ベーベーが欲しいのならもう居ないぞ。

 テントも片付けてもらった。ふふふ。もう何も残っていないぞ。


 折角だからお芝居に付き合ってやろう。

 「僕じゃないよ。ホントだよ。駆けてきた人が僕にこれを投げたんだよ」

 「誰が見ている。お前の脇にいる商人は下を向いているぞ。見ていなかったに違いない」

 「そんなあ」

 「引っ立てろ」

 「だれか助けて、見ていたんでしょう。こんなことさせているといつかはみんなに降りかかってくるよ」

 「うるさいやつだ。さっさと歩け」

 「はいはい」


 「ふざけたやつだ」

 小突きましたね。その痛みはあなたのものですよ。

 「痛え」

 後ろを振り返っても誰も居ない。

 「おじさん、どうしたの」

 「うるさい、さっさと歩け」

 今度は拳でど突いた。そういうことをすると、ほら後ろから。

 「痛え」

 「おじさん、どうしたの」

 「うるさい、さっさと歩け」

 あれ、繰り返しかと思ったら小突きもど突きもしないね。

 「おじさん、小突いたり、ど突いたりしないの?」

 「するか。気味の悪いやつだ」


 「おじさんは、いつもこんなことをして、冤罪を作って、その人から財産をとっているの?こんなことはしないほうがいいよ。きっと良くないことが近くあるよ」

 「おれは、命令されてやっているだけだ」

 「でもわかっているんでしょう?わかってやっていれば逃れられないよ。同罪だよ」

 「誰が裁くんだ。このオアシスは自治組織があってその長が裁くんだ」

 「へえ、そうなんだ。やりたい放題の独裁者なの?」

 「ほんとは、評議員会というのがあって、歯止めになっていたんだけど、いつの間にか、どんどん良識ある人が死んでしまって、今は自治組織の長の一派しか残っていないので、評議員会は機能していない。だから独裁になってしまった」

 「みんな反対はしないの?」

 「死にたくないから」

 「そうか。今夜逃げたほうがいいよ。話してくれたから、今夜このオアシスから逃げれば見逃してやる。遅くなれば見逃せない」

 「坊主と話していると、大人と話しているようだ。ありがとう」


 その夜、衛兵一人が辞職届を残してベーベーとオアシスから消えた。だれも気にする者はいなかった。


 さて楽しい牢屋に案内されました。こうなっているんだ。へえ。そうか。汚いね。

 「ねえ、牢番さん。牢屋を綺麗にしていいかな」

 「勝手にしろ」

 「そうかい」

 汚れ飛んでけ。

 おお、綺麗になった。

 布団がよくないね。病害虫もいるな。汚れ飛んでけだ。

 もう一度全体に汚れ飛んでけだ。おお、さっぱりした。


 「ねえ、牢番さん、お昼はまだ?」

 「1日朝夕の2食だ」

 「そうなの。じゃ差し入れてもらおう。差し入れはいいんでしょう?」

 「ああ。禁止はされていない」

 「そうなの。じゃしばらくしたら持ってくるからよろしくね」

 「あれ、もう来たみたい」


 「シン様、これはまた大変な所にいらっしゃいますね。昼食をお持ちしました」

 「牢番さん、ちょっと鍵開けて」

 「開けられない」

 「そう、じゃ開けるね」

 解錠しましたよ。


 アカとエスポーサと二百人衆が牢の中に入ってきた。二百人衆は給仕だ。アカは僕の膝の上。牢番さんは目を回している。

 「牢番さん。良かったらベントウを食べますか?用意してきたんですよ」

 牢番さんにエスポーサがベントウを差し出すとゴクリと唾を飲み込んだ。

 「どうぞ、誰も来ないうちにお食べください」

 「悪いな」

 牢番さんは、一口、口に入れたと思ったら猛烈な勢いで食べ始めた。よほど美味しかったらしい。


 僕はゆっくり食事した。食べ終わった牢番さんは後ろ手にベントウ箱を返して、眠ったふりだ。

 「美味しかったよ。また夕飯持って来て」

 「承知しました」

 二百人衆をエスポーサが送っていく。

 さて鍵をかけてやろう。牢の鍵をかける。


 暇だね。アカどうする?観察ちゃんの映像を見ればと言っています。生中継だな。

 おお、我らがキャンプ地に衛兵が押しかけている。何もないから、辺りをキョロキョロ見まわしている。ベーベーもいない。高そうなテントもない。女もいない。誰もいない。ははは。どうするんだろう。

 最初対応してくれた人が心配そうに見ていたが、衛兵が何も得ることが出来なくてウロウロしているのを見てニヤニヤしている。

 衛兵が引き上げて行く。どこへ行くんだろう。上司へ報告かな。観察ちゃんが追って行く。じゃまたあとで見よう。


 他の観察ちゃんは何をやっているかな。一人は、水路を上流に辿っている。へえ、川から水を引き込んでいるのか。山脈から水が湧き出たか雪解けしたものが小川になり、それが集まって大きな川になっているのだろう。川は砂漠に流れ込んでいる。その途中に堰を作って、水を貯めてオアシスの水路に流し込んでいる。なるほど、この水量豊かな川があるからオアシスが成り立っているのか。泉というわけではないのね。そうだろうね。小さな泉じゃ大きなオアシスが出来ないよね。枯れちゃうかもしれないし。

 水路の分岐には板を差し込んで小さな堰を作って、水量を調節している。多分、この水利の利権もあるんだろうな。利権を握れば生殺与奪の権利を握ったも同然だ。独裁にもなるよね。

 もう一人はどこに行ったのかね。街を歩っている。高級街は水路の上流のようだ。綺麗な水を使えるというわけか。下流に行くほど庶民の街になっているみたいだ。他のオアシスはどうか知らないけど、ここではそうなっている。

 もう一人はどこだ。木の上で昼寝のようだ。良いことです。

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