023 マリアさんへ新デザインの服?をプレゼントする
翌朝、仕立屋さんのオリメさんが来たと言うので客間に通してもらう。
オリメさん、小さなトランクを下げてやってきた。
ニコニコしている。
「さて試着していただける方はどなたでしょうか。呼んでいただけますか。ここで試着ですか」
ニヤニヤになった。
マリアさんがお茶を持ってくる。
「なるほどーー。なーるほど」
「う、うん。マリアさん。ちょっとプレゼントしたいものがあって、仕立屋のオリメさんに来てもらいました。マリアさんの部屋で受け取ってください」
「ここでなくていいんですか」
いじめないでよ。オリメさん。先生に対する尊敬がないな。
マリアさん????だ。
「マリアさんの部屋でお願いします」
「さ、いきましょう。シン様からこの世になかった素晴らしいプレゼントです」
マリアさんは疑問符を頭に幾つも付けながらオリメさんと出て行った。
昨日の今日だからちょっとあれだ。昨日がなければ意趣返しだったけど。
どうなったのだろう。中々帰って来ない。お茶が冷たくなっちゃった。水の分子を振動させればいいってか。アカは難しいことを知っているね。え、ブランコがやりたいって。難しいことはわからないけど出来るって。じゃやってもらおう。あ、沸騰した。あっという間に湯がなくなった。エスポーサに頭を叩かれている。毎度のことだ。ポットに残っていたお茶をカップに注いだ。カップも温まっていたようで湯気が出る。ふうふうと冷ましながら飲んだ。
足音がする。三人だ。マリアさんの足音は集中しないと聞こえない。
ノックがあって奥さんが勢いよく入って来た。続いて赤い顔をしたマリアさん、最後にニヤニヤしながらオリメさん。ドアはしっかり閉じられた。
奥さんが発言する。
「シン様。あれはどういう意味でしょうか?確かにマリアは長命な種で、人で言えば20歳くらいです。長らく仕えてもらっていて、いつまでも若くてはおかしいから魔法で見かけ老けたようにしていますが、熟女がお好きなのですか」
「いや、熟女も年齢を重ねた美しさはありますが、そういう趣味はありません」
「いいですか。女性に下着を贈るということは求愛の行動です。女性がそれを身に着けたら承諾となります」
「へえ」
「へえではありません。マリアは喜んで身に着けています。今も」
「はえ」
「はえではありません。それにサイズがぴったりです。試着品が完成品になってしまいました。あなたたちはそういう関係だったのですか。そうならすぐ婚儀をしなければなりません」
「そういう関係ではありません。サイズは風呂場で拝見しました(35歳を舐めてもらっては困る)」
「うんもう。マリアは浮いた噂一つなかったのに。風呂場でサイズなんて。やっぱり婚儀を」
「そういう関係ではありません。風呂場で下着を拝見し、美しいマリアさんには似つかわしくないので、新たにデザインし、オリメさんに作ってもらいました」
「風呂場で下着、ああもうダメ。婚儀〜〜」
「背中を流してもらっただけです。な、アカ。これ、前足で顔を隠すんじゃない」
「ほらアカ様も後ろめたいみたいじゃないですか。エスポーサ様もブランコ様も挙動不審じゃないですか」
こら、ブランコもエスポーサもキョドるんじゃない。
「最大の問題はマリアが嫌がっていないことよ。婚儀〜〜」
「マリアさんはどうなの?」と聞いてみる。
「私は長命種であと数百年は若いままです。ですから年齢の問題はありません。シン様の成長を待っていられます。私はこの人と一緒にいたいと思ったのは初めてです。会ってすぐそう思ったのは不思議ですが、運命の人だと直感しました。子供のはずなのに成熟した大人を感じました。できればお側において欲しいです」
「ほらね。マリアはOKよ。シン様も満更ではないんでしょう。男は諦めが肝心という迷言があるわ。バカ旦那の言葉だけど。殴ってやったわ」
「確かにマリアさんを私は好きです。でも私には勿体無い女性です。成人まで待ってもらって、もしそのときまで考えが変わらなかったら一緒になりましょう」
「シン様、私も一緒にいたいです」
オリメさんが参戦して来た。こら、アカもブランコもエスポーサもシンクロして顔を洗い出すんじゃない。
「マリア、競争相手が増えたわね。これからも増えそうね。しっかり握っていなさい。浮気したら握り潰すのよ」
奥さん、武闘派だ。痛そう。エスポーサに見つめられてブランコは後ずさっている。同志よ頑張れ。
「オリメさん、私の分は明日持ってきてね」
「わかりました奥様」
「これも作ってくれる。いつでもいいけど。男物だよ」
さりげなく話題を変える。描いておいたボクサーとトランクスタイプの男物の下着のデザイン画をオリメさんに渡す。
「これ今までのもっさりした下着と違うわね。旦那にも履かせよう。最も役立たずだから今度脱がすのは下の世話よ」
あ、ブランコが更に後ずさった。もう後がない。そうなのブランコ。既にそうなの。まだ大丈夫だって。そうなの元気いっぱいなの?うなだれてしまった。エスポーサが大丈夫、大丈夫と頭をポンポンしているけど辛いだろうな。マムシドリンクというのがあったな。収納袋に入っているマムシに似た様な蛇は色々いるが薬効は、おっとあった。青毒蛇が効く様だ。収納袋が進化してね、成分、効能がわかるし、成分を抽出できるんだ。青毒蛇のエキスを魔の森の泉の水で薄めて作った。味を整え容器を作って液を入れて、出来た。名付けて青毒蛇ドリンクだ。
「ほらブランコ。これを飲んでごらん。今日の夜は元気いっぱいだぞ」
本当?だって。クリっとした目が可愛いね。本当だから。皿を出して飲ませてやる。
おっと奥さんが反応した。
「それ人間にも効くの?」
「もちろん、奥さん。この青毒蛇ドリンクを旦那に飲ませれば一晩元気いっぱい。今なら只。さあ持ってけ」
叩き売りをしちゃった。
奥さん、瓶を見つめながら、聞いてきた。
「これ何に混ぜてもいいの?」
「なんでも大丈夫です。甘みが少し増すだけです。熱にも強い」
爺さんが帰って来て、夕食になった。久しぶりにみんな揃っての夕食だね。奥さんは旦那さんの隙を見てスープに入れたぞ。青毒蛇ドリンク。
客間に戻ったらブランコがエスポーサと夜の散歩に行くというので見送った。意気揚々と出かけていった。




