229 大きいオアシスに着きシナーンさんと出会う
大きいオアシスが見えて来ました。昼間ですが行ってみましょう。
オアシスに近づくと徐々に木が増えて来る。道の両脇には木が植えられていて木陰になっていて涼しい。ベーベーから降りて歩こう。道の脇に水路がある。畑もある。耕作しているらしい。子供が水路で遊んでいる。家が増えてきた。最初の小さいオアシスとは大違いだね。人口も多いんじゃないか。もはや街だな。水はどこからきているのかな。
あれ、何人かこっちにくるぞ。
「坊主、どこからきた」
「あっち」
「あっちだと。ちゃんと答えろ」
「あっちの小さいオアシスだよ。名前は知らないからあっち」
「何しにきた?」
「大きなオアシスを見たことないからね。見に来た。小さいオアシスもあっちのオアシスが初めてだよ」
「どうやって来た?」
「やだなあ、見ればわかるでしょう。ベーベーに乗って来た」
「ベーベーはどうやって手に入れた?盗んだのか」
「人を泥棒と思っているの?僕、子供だよ。泥棒なんて出来ないよ。それにベーベーは呼べば来るよ。懐いているんだ。ベーベー、ベーベーマンおいで」
ベーベー、ベーベーとやってきて頭を擦り付けます。
「ほらね。僕のベーベーだよ」
「そうみたいだな」
「一人で来たのか?大人はいないのか?」
「昨日はいたよ。皆忙しいから今日は来ていない」
「大人は何をやっている?」
「管理職、裁縫師とかだよ」
「商会か?」
「国だよ。商会の管理職もいるよ」
「偉いんだな」
「おじさんより偉いかも」
「もういい?」
「そっちのはなんだ」
「僕の仲間だよ。柴犬と白狼とミニドラゴン」
「悪さをしないか?」
「向かってこなければ何もしないよ」
「向かっていったらどうなる?」
「さあ、やってみたら」
三人組がワクワクしています。
「ーーーやめておこう」
がっかりしました。
「もういい?」
「スコーピオンを知っているか?」
「砂漠に居たよ」
「どこだ?」
「岩の影。おじさんに鋏をチョキチョキしていた」
「そっちのスコーピオンではないが、おじさんとはだれだ?」
「こっちのオアシスから来たおじさん。途中で会ったよ。昼間の暑い時間なのに移動していた」
「こっちはソーロクだ。覚えておけ。この砂漠で五本の指に入る大きなオアシスだ」
「へえ、すごいんだ」
「それで、そのおじさん、いや男はどうした」
「スコーピオンを捕まえて、いるか聞いたらいらないと言ってた。ベーベーが疲れていたみたいだから水をやったよ。少し回復したみたいで小さいオアシスの方に行った。昼間急いで動いちゃだめだよね」
「それはそうだが」
「盗賊に会わなかったか」
「うーーん。岩山にたくさんいたみたいだよ」
「どうして知っている?」
「岩山が血で赤黒く染まっていたよ。名付けて大血岩山?血黒岩山?大血黒岩山?盗賊血黒岩山?盗賊血岩山?」
「名前はどうでもいい。それでなんで盗賊の血とわかった?」
「暑いから誰も岩山に遊びに行かないでしょう?盗賊さんも暑かったろうね。大きい山のような岩だから日陰は涼しいのかな」
「あまり涼しくはない」
「夕方になるからもういい?」
「今日はどこに泊まる?明日もいるのか?」
「どこかテントを張れるところがない?」
「この先に小さな広場がある。そこならいい」
「わかった。それじゃね」
「待て、坊主の名前はなんという?」
「シンだよ。おじさんは?」
「シナーンだ」
「わかった。またね」
「坊主を見張ってろ。盗賊ではないようだが、おかしい。大人が昨日はいたと言っていたが、砂漠だからすぐ帰れるわけがない。国のお偉方だと。おかしい。それに何も持っていない。ベーベーもあんな強そうなベーベーを見たことがない。噂に聞くバトルホースのようだ」
「ああ、オアシスまで噂が流れて来ている、神の乗り物と噂されているバトルホースですか。小さな子供が乗っているとか」
「ーーーーー、見張ってろ」
おじさんに絡まれたよ。やだなあ。ここだな。小さな広場。僕がテントを張ったら誰も来られないよ。見張りやすいし、何かあっても他に被害が及ばないか。まあいいや。テントを張ろう。
テントを張り終わったら見張りさんが三人到着し低木の向こうにいる。お茶に呼んでやろう。テーブルを出して準備OK。
「お茶淹れましたよ。どうぞ」
顔を見合わせてから低木の陰から出てきた。人数分お茶が淹れてあるから諦めて出て来たみたいだ。
「どうぞ」
「悪いな」
「大変なお勤めですね。テントを貸しましょうか」
「いや、それでは仕事にならない」
「それもそうですね」
「街の住民は夜遅くは寝てしまうが、夜から早朝まで人の出入りもあり、小悪党もいるから気をつけな」
「そうかあ、気をつけるよ」
「ご馳走様。おいしかった」
さて、帰る時間だ。ベーベー達には留守番を頼んだ。ベーベー言っている。任せとけだって。水と飼い葉をやったよ。おまけに人参。
夜は観察ちゃんーー。
『シン様呼んだ?』
ああ、また気付かれた。しょうがない。
『二人だよ。テントとベーベーを見ていてくれるだけでいいから』
『はーい』
返事は良いんだよ。いつも。テントの中に転移させる。順番は決まっているみたいだ。
ヨシヨシして言い聞かせる。
「危ないことしちゃだめだよ。危ないと思ったらすぐ呼ぶんだよ」
「はーい」
返事はいつも良いんだよ。ハア。テントから出してやる。
神国自宅スパ棟に転移。みなさん帰ってきていた。
今日あったことを話しながらお風呂と夕食。
明日は、大きなオアシスを見に行きたいそうだ。すでに仕事は手配済みだそうだ。手際が良い。朝、一緒に出て、オアシス近くの砂丘の陰までみなさんを転移させる。みなさんにはオアシスまで歩いてもらおう。
みんなで寝る。幸せ幸せ。




