228 砂漠の続きを次のオアシス目指して歩く
朝です。神国の朝です。
今日は管理職の皆さんは仕事。
僕とアカ、ブランコ、ドラちゃんとドラニちゃんは暇です。
砂漠の続きです。ちゃんと夕方には帰って来ると言ってあります。
ベーベーとベーベーマンと一緒に転移。岩山の近くです。岩山は盗賊の血で染まっていますね。
暑いので、パラソルを装備したベーベーマンに乗ります。ベーベーにもパラソルを装備。ドラちゃんとドラニちゃんのための休憩用です。
ブランコもちゃんと足裏にバリアを張れるようになり得意げです。
次のオアシス目指して出発です。
まずは上空から方角を確認。右手の山脈に沿って麓に大きなオアシスが点在するようです。砂漠の中には小さなオアシスがあるようですね。きっと隊商はこの山麓の大きなオアシスを辿って移動しているのでしょう。昨日みたいな小さなオアシスでは商売になりそうもないからね。あのオアシスは森へ行くための中継用の宿場のようなものかもね。お客はいそうもないな。木に大きな実がなっていた。それを売っているのかも知れない。
それでは大きなオアシス目指して出発です。一日あれば着くんじゃないでしょうか。
熱転換パラソルがあるから快適な砂漠の旅です。でもどこまで行っても砂ばかり。砂丘を越えてもまた砂丘。時々岩があります。それだけ。
昼食は熱転換布の日除を設置、熱転換シートに座って涼しくいただきました。近くの岩陰に何かいます。鋏と尻尾を持ち上げて威嚇してきます。スコーピオンというやつでしょう。無闇に殺生はしないのです。最初は一生懸命威嚇していましたが、尻すぼみです。引っ込んでしまいました。暑いから岩陰から出てくるのは嫌なのでしょう。
この暑いさなかに、オアシスの方からベーベーが2頭、人を乗せてやってきます。暑い時間帯は動かないのではと見ていると、こちらに近づいてきます。僕らは、普段と違い誰も来ないだろうと、遠慮せず休憩していますから目立ちます。
僕らの前で止まりました。
「坊主、何者だ。どこへ行く」
偉そうにベーベーの上から声をかけてきました。
ちょっと、むかつきますね。
「あっち」
「あっちとはどこだ。ふざけた返事をするな」
「あっちのオアシスだけど、名前をしらないから、あっち」
「一人か」
「いや、ほら、犬と白狼とミニドラゴン、それにベーベーが仲間」
「スコーピオンではないのか」
「スコーピオンはさっき居たよ。ほら」
さっき、さんざ威嚇してきたスコーピオンを捕まえて、おじさんに見せてやりました。
「いる?」
「バカ、捨てろ。猛毒だぞ。刺されると死ぬぞ」
「へえ、お前刺すの?」
顔の前にスコーピオンを持ってきて、聞いてみます。違う違う刺さない刺さないと鋏を閉じたまま必死に左右に振っています。尻尾は下向きです。
「刺さないそうだよ。ほら」
あれ、おじさんに向かっては鋏をちょきちょき、尻尾を持ち上げています。やる気十分ですね。おじさん後退りします。
「わかったからそれを遠くにやってくれ」
おじさんが猛毒と教えてくれたからね。おじさんのためにスコーピオンを岩陰に戻しました。スコーピオンは慌てて引っ込みました。
「それで、用は何?」
「スコーピオンという盗賊が隊商を狙っているという情報が入ったから、この先のオアシスに知らせに行くところだ」
「そう。お疲れ様。それよりおじさん。ベーベーが辛そうだよ。昼間急いで歩かせてはダメなんじゃないの。水をやろうか」
「水は持っているのか」
「うん」
「じゃ、頼む」
一杯だけだよとベーベーに言って、飼い葉桶に水をいれてやる。たちまち飲んでしまった。水を飲んでいくらか回復したようだ。
「坊主、すまん」
おじさん、素直になったね。じゃ教えてやろう。
「スコーピオンは、この先の岩山に陣取っていたけど、壊滅したようだよ」
「本当か、なぜ知っている」
「通ったからね。行ってみればわかるよ。岩山は血で赤黒く染まっていたよ」
「そうか、行ってみよう」
「じゃ僕らも行くからね」
ベーベーとベーベーマンに飼い葉桶一杯の水をやり、出発。
「なんだあれは。坊主が一人だ」
「水を持っていた様子はなかったぞ。日除らしいのも一瞬で消えた」
「坊主ではないが、この暑い昼間に歩いているなんておかしいぞ。我々のように緊急事態ではあるまいし」
「それにあの体格がいいベーベー。あんなに体格がいいのは見たことがないぞ」
「なんだか見たような気がするけど、俺の知っているベーベーはもう年だったので違うのかもしれない。しかしよく似ていた」
「猛毒のスコーピオンを手掴みだぞ。しかも大人しくいうことをきいていたぞ」
「ああ、俺たちには鋏を振り翳していたな」
「死ぬ間際に見るという砂漠の死神か」
「縁起でもない。わからないものはわからないから先に進もう」
おじさんをからかうのは面白いな。
アカがあんまりからかってはダメよと申しております。




