225 小さなオアシスにいたら盗賊がやってきた
2時間ほど歩くと緑が見えてきた。小さい緑の塊だ。パラソルを片付けて、歩く速さを並みにして近づく。木が生えているね。見たことがない木だ。大きな実がなっている。砂漠特有の木なのかもしれない。
オアシスの周りには囲いも何もない。歩いているといつの間にか木が増えて多少涼しくなっていた。泉の周りに隊商宿が一軒と20軒ほどの家が取り囲んでいる。それだけでおしまい。小さなオアシスだった。
隊商宿から娘さんが出てきた。奥に駆け込んで行った。
「お母さん、知らない人が来たよ。お客さんかもしれないよ。それか盗賊だよ」
物騒なことを言う。
父親らしい人が少し近づいて来た。
「こちらには何しに?」
「砂漠が珍しいので、来てみました。小さいオアシスですね」
ステファニーさんが答えた。僕子供だから。
「泊まりですか」
「夕方涼しくなったら出ようと思います」
ステファニーさんがこちらを見るから頷く。
「それまで泉のほとりでベーベーを休ませたいと思いますが、いいでしょうか」
「どうぞ。泉はみんなのものです。汚さなければいいですよ」
「有難うございます」
まだ幾分警戒されているね。建物からも視線を感じる。まあいいや。夕方は出るから。
ベーベー達はベーベー用の水飲み場に行って水を飲んでいる。すぐ戻ってきた。不味いそうだ。
僕たちは、テントを張って中で休憩。横になる。
あれ、なんだかオアシスに近づいて来るぞ。ベーベー20頭くらいだ。駆けてくる。やだなあ。またトラブルか。誰だいトラブル招致体質者は。アカがあなたですと言っています。そうですか。
とりあえず急いでテントを片付ける。ベーベー達も近くに呼び寄せる。
先ほどの隊商宿のおじさんが、棒を握り締めている。周りに男たちが集まって来た。粗末な武器だな。
僕らは専守防衛だ。
やって来ました。盗賊団。隊商宿に向かっていたが、こちらに気がついたようだ。
「女だ。上玉だ。捕まえるぞ」
方向転換して襲ってきます。我らが防衛ラインを越えた。
マリアさんが抜刀する。久々のキラキラ剣だ。片手棍は使用するまでのことではないみたいだ。ステファニーさんは鞭を握ってニンマリしている。オリメさんは暗殺剣、アヤメさんは暗殺針だ。ブランコ、エスポーサ、ドラちゃん、ドラニちゃんが回りを固める。盗賊達の。
一応聞いておこう。
「こんにちは。みなさんは盗賊さんですか?」
盗賊達の足が止まりました。
「何を当たり前のことを。女を捕まえるぞ。チビ女は後だ」
ああ、余計なことを。暗殺剣と暗殺針が消えた。代わりにメラメラと二人の両拳が。僕、しーらない。バキ、ボキ。ああ、もう口はきけないね。口は災いの元だ。
マリアさんの剣が光跡を残してスパスパ。ステファニーさんの鞭が黒い光跡を曵いて振られる。胸に穴が開いている。
「一人くらい残しておいてよ」
あっという間に一人残して倒れ伏した。
「みなさんはこれで全部ですか?」
「ーーーー」
口をききませんね。
おや、倒れている人が動いています。ビュッと音がしました。股間を押さえて悶絶。
「もう一度聞きます。これで全部ですか」
「俺たちスコーピオンを舐めるなよ」
「そうですか。エスポーサ、ブランコの骨接練習をしてきてください」
エスポーサが男をくわえてブランコの背中に放り投げた。ブランコと消えていく。
ベーベーが男を踏んづけている。なになに、ラシードさんのところにいた男だと。なるほど。まだ生きていますね。聞いてみましょう。
「もしもし、ラシードさんのところにいたんですか?」
口をききませんね。
おや、エスポーサが戻ってきました。
事情をきこうとしたら悶絶してしまったそうです。手足があちこち曲がっていますね。
「それじゃ、こちらを連れて行ってください。盗賊さん、怪我は治してあげましょう。気をしっかり持って練習台になってください」
マリアさんとステファニーさん、オリメさん、アヤメさんは夕食の準備をしています。ドラちゃんとドラニちゃんが周りをウロウロ。味見がしたいようだ。手足が曲がった方を除いて消してしまいましょう。夕食が美味しくありません。はい、消えました。
エスポーサとブランコが戻ってきました。またまた手足が曲がっています。
「さて、手足の曲がったお二人さん。お聞きしたいことがあります。みなさんはスコーピオンだそうですが、どこにアジトがあるのですか。言ってくれれば手足の曲がりは治してあげましょう」
「言う。言うから治してくれ」
素直なことはいいことです。治してあげました。
「アジトはどこですか?」
「この先にある岩山」
「そうですか。構成員は何人ですか?」
「100人は超えている」
「どうやって食べているのですか?」
「普段はあちこちのオアシスで暮らしている」
「どうして今集まっているのですか?」
「隊商がこの先の国に行った。商品と金を持って帰ってくる。そこを襲うため全員集まっている」
「なるほど、皆さんはどうしてここを襲ったのですか?」
「食料調達に来た」
「いつまでに戻らなくてはならないのですか?」
「明後日だ」
「それはどうしてですか?」
「二、三箇所、小さいオアシスを襲ってから戻る予定だったから、明後日だ」
「みんな何か聞くことある?」
「ない」
「そうですか。オアシスの皆さんも聞くことありますか?」
「なさそうですね。ではお仲間のところに行ってもらいましょう」
一瞬嬉しそうな顔をしましたね。
「行く先は地獄でしょうけど」
消しました。




