211 エレーネ王女一行 王都に向かう
アレシアスの辺境の城
エレーネ王女が王都へ向かう隊列の最終チェックをしている。
兵100、馬車一台、御者2名。馬車には王女、執事長、侍女長、執事、侍女5人。シン様が用意してくれた兵糧を乗せた荷車4台、主に馬車に乗る人達用のテント、生活用品などを載せた荷車一台。料理人兼荷車の御者兼雑用係10人。
兵の出立は緑色と土色の大きな模様の軍服。シン様は迷彩柄と言っていた。編み上げの革靴、ベレー帽。背中に大きな背嚢、背嚢の中は、着替え、身だしなみ用セット、靴磨き、替えの靴、水筒、寝袋、乾燥した食料、救急セット、裁縫セット、ナイフ、テント、飯盒などなど。1人で支援なくとも生き抜ける装備だ。行軍中は剣も各自背負う。兵以外も全員剣とナイフは持っている。全員使えるところがすごい。
エレーネ王女が合図する。
「よし。出るぞ。王都に向かって出発」
エレーネさんたちは出発したな。さて事故予定現場はどうだ。おや、木の間に人がいるね。アカが王弟一派だと言っている。
ブランコ、ドラニちゃん、証拠を残さず、ひとりだけ助かったようにできる?出来るー。そうですか。やってみて。
ブランコが飛び降りる。上手になった。こちらを見上げて僕上手と言っている。あ、着地でこけた。情けない顔になった。坂だからね。平だと思って足をついたらしい。気を取り直して小さくなって忍んでいく。ドラニちゃんも小さくなって飛んでいく。
ゴロゴロゴロゴロゴロゴローと音がした。ドラニちゃんがブランコを乗せて上がってくる。ストンとドラちゃんの上に着陸。ブランコがまだ面目ないと言うような顔をしている。よしよし、坂だったからね。今度はうまく着地できるよ。よしよし。尻尾がふれてきた。いい子だ。
落石が起きたのー、幾つもの大きな石が転がったのーとドラニちゃんが言っている。上手な言い方だ。よしよしいい子だ。二人とも上手な落石だったよ。一人、壊れかけのリュックを背負って逃げていくね。頭では走っているつもりなのだろうけど、高地の坂だから足が追いつかないね。よたよた登っていく。面白い。観察機能付小動物を、いかんいかん。
『シン様、呼んだー?』
あれ、聞こえてしまった。まずい。危ない真似をさせるわけにはいかない。
大丈夫よ、みんなあなたの役に立ちたいのよ、とアカが申しております。
そうか、じゃ『二人だよ』。くじ引きをしているらしい。クジが終わって二人、手と言うか足をあげている。手元に転移させる。
「あのよたよたした人が、峠を越えて向こう側に行く。高いところは木がないからね。木のあるところまで下がったところに転移させる。よたよたした人が降りてくるから跡をつけていって。無理をするんじゃないよ。危ないことをするんじゃないよ。危ないと思ったらすぐ呼ぶんだよ」
『わかったー』、『シン様心配しすぎー』
やれやれ、わかっているんだかどうだか。危ないからアンクレットをつけてやる。水も飲ませる、体が光る。アンクレットは見えないようにしておくんだよ。竹水筒とアカにもらって木の実を入れてやる。食料は心配ないな。気をつけてねともう一度言って転移させる。
『僕にも』、『あたしにも』と声が聞こえる。何を観察しているのやら。しょうがないから、転移させみんなに竹水筒入りアンクレットをして水を飲ませる。体が光る。アンクレットは普段は見えなくしておくんだよ。木の実なんかはアンクレットに収納したらいいよ。よしよししてから帰してやる。
やれやれだ。勝手に動き出した。もう何も作らないぞ。どうだかとアカ。
せっかくだから半島の海沿いをまわってから帰ろう。
ふうん、山脈の麓には少しスペースがあって、半島の根本の両脇に伸びている。その先にも国があるんだろう。そのうち行ってみよう。山脈を越えていくか、山脈の手前をいくか。
半島も結構広いな。四角っぽいな。半島の先にもかなり高い山脈がある。海岸はあるけど海には魔物がいるから港はない。船は沿岸用の小舟だけだな。港に良さそうな場所がある。魔物に負けない船を作って船旅もいいな。
半島を一周した。見るだけだからね。かなり高速だ。さて帰ろう。帰りは転移。飛んだまま滅びの草原の上に転移してそこから自宅前までドラちゃんに飛んでもらう。
自宅に帰るとオリメさんとアヤメさんがもう帰ってきていた。ステファニーさんとマリアさんが帰ってくる。
今日は責められなかった。
無事にお風呂と夕食が終わって朝を迎えられた。
管理職さんはお仕事。オリメさんとアヤメさんは裁縫師の仕事。ブランコとドラちゃん、ドラニちゃんはいつもの見回り。
ボクたち、観察機能付小動物なの。
それで今回のシン様の指令は、峠から降りて来るおじさんの後をついていくことなの。シン様が峠の少し下の木が生えているところに送ってくれたの。なかなかおじさんが来ないの。交代でうとうとするの。でも2人で寝ちゃったの。足音がしたから目が覚めたの。おじさんが通りすぎたの。ちょうど良かったの。
下で待っている人たちと合流したの。何か話しているの。十人がもう一度山を登って行くの。ついて行くの。夜なのに峠を越えて崖道に差し掛かったの。一番後ろの人の足元にぐらっとするように石を置いたの。石を踏んでぐらっとしたから仲間が石を踏んでない足を蹴飛ばしたの。バランスを崩して声をあげる間も無く谷底に消えたの。次々にバランスを崩して谷底なの。最後に落ちる人には、悲鳴をあげる間を与えたの。悲鳴を聞いて一番前の人が振り返ったの。
映像を撮るのを忘れていたからここから撮るの。一番前の人は谷底をのぞいたけど何も見えないの。慌てて崖に張りついて動かないの。
明るくなって、動き始めたの。必死に元の道を引き返して行くの。
シン様に報告するの。
明るくなって危なくないから、二手に分かれたの。内緒なの。教えないの。




