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目覚めた世界で生きてゆく 僕と愛犬と仲間たちと共に  作者: SUGISHITA Shinya
第二部

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210/499

210 王弟ギュンター企む

 王都 ギュンター王弟邸

 エレーネ城へやった偵察隊が帰ってきた。

 ギュンター王弟が側近から報告を聞く。

 「城の外で見知らぬ男女の盛大な結婚式が行われていたそうです」

 「なんだそれは」

 「わかりません。なんだか怖くなって帰ってきたそうです」


 「この前、珍しく帰ってきたやつがいたな。あいつは、城が、パックン。城がパックン、城がパックンの繰り返ししか口がきけないと言っていたな」

 「はい、城がパックンとしか言いませんでした。狂ったとみて、親元に帰しました。まだ城がパックンと言っているそうです。親に何をしたんだと責められました」


 「今度は送った人数全て帰ってきたのだな」

 「はい。みんな同じことを言っています。見知らぬ男女の盛大な結婚式が行われていたと」

 「パックンと同じようなレベルだな。なんの情報もない。まあいい。そろそろ城を出てこちらに向かう頃だ。もう偵察隊は送る必要はない」

 「わかりました。助かります」


 何が起こっているのだろう。情報が全くない。ちょっと前までは偵察隊が帰ってきて、城の様子の報告があった。ある時から偵察隊が全く帰ってこなくなった。帰ってきたと思えば、パックンと結婚式だ。わからぬ。


 情報がないから反乱軍とでっち上げて軍を出して鎮圧することもできまい。いくら何でも見知らぬ男女の結婚式を王女の反乱と決めつけては軍も動かないだろう。俺が反乱と言われてしまう可能性もある。


 「王都に入る前に始末する。どこがいいか」

 「城の方面から登ってくる山脈の峠がいいと思います。崖があり、落ちてもよし、盗賊は時々出るので、盗賊に襲われるのもよし。夜間に魔物に襲われるのもよしの三方よしです。山脈はここから30キロほど離れているので王都の人は気が付きますまい」

 王弟はなんだか三方よしの使い方が違うようだとは思った。


 「そうか。王妃が事故を起こしたところだな」

 「はい、事故を起こしたところです」

 「事故の手配をしろ」

 「承知しました」


 「親子2代、同じ場所で事故か。可愛そうに」

 ギュンターがニヤニヤ笑っている。窓から可愛らしい小動物が覗いている。小さく可愛いので誰も気にかけない。


 『シン様、シン様』

 観察機能付小動物が呼びかけて来る。

 『なんだい?』

 『王弟邸で、悪巧みをしているよ』

 映像を送ってくれた。ほうほう、なるほど。というか、お前いつ行ったの?

 『偵察隊の跡をつけて行った』

 『危ないから帰っておいで』

 手元に転移させる。

 『お役に立った?』

 『うん、大変役に立ったよ。よしよし。でも危ないことをしてはいけないよ』


 スパエチゼンヤの仲間のところに送った。嬉しそうに戻って行った。役に立ったのがよほど嬉しかったと見える。やや、小動物が旅館だけでなく、スパエチゼンヤあらゆるところにいるぞ。危ないからスパエチゼンヤから出てはダメだよ。はーいと返事は、あった。あったけど。


 さて暇だから、三方よしとやらの峠に行ってみよう。ドラちゃんに乗せていってもらおう。転移も簡単でいいけど、風情がないからね。実用一点張りだ。そこにいくと空の旅はあちこち見られて楽しいね。ドラちゃんにアカとブランコと乗る。ドラニちゃんはドラちゃんと一緒に飛んでいくのだそうだ。エスポーサは管理職だからね、今日はお仕事。


 バレないように高空を飛んでいこう。自宅前から大空へ。アングレアの国境警備所。狩人が獲物をぶら下げて警備所に向かって歩いてゆく。干し芋と交換かね。森を越えて、5軒家があった集落だ。家が増えている。工事中の家もある。森で狩が出来るようになって戻って来ているのかもしれないね。


 亡国との境だ。エレーネさんたちの城の上空を通って見よう。出発の準備らしい。誰か見上げたような気がするが先に行こう。


 基本丘陵地帯だな。この世界は人口が少ないのかな。病気、怪我で人が増えなのかも知れないな。医療が未発達か。そういえば医者を見たことがない。


 街道の行手に山脈が見える。事故を起こす場所は、山脈を越える道の途中だろう。かなり高い山脈だ。こんな山脈を越えて一つの国なのか。山脈が国境になりそうだが。この国の辺境とは、山を越えた地のことを言うのかも知れないな。


 峠までは葛折だ。なかなかの難所だぞ。馬車一台がやっとだ。だが折れ曲がっているだけだ。いや、あった。出っ張った山肌を巻いて登っていく箇所だ。ここだな。落ちるのは。確かに落ちれば2,500メートルくらい真っ逆さま、谷川までだ。助からない。ここを通り過ぎるとまた葛折だ。峠まで500メートル登る。峠の標高は3,000メートル。山脈は4,000メートル級だ。

 峠を越えてみると、海に囲まれた半島?かな。半島に飽き足らず山を越えたのかもしれない。


 もっと高空に上がってみよう。やっぱり半島だった。山脈寄りに大きな都市がある。王都だろうね。王都を中心に街がパラパラとある。道路はその街と王都を結んで網の目状だ。この世界の構造はどこでもこうなのかな。


 半島側から山脈に登る道は緩やかな葛折だけだ。崖道はない。谷に落ちるのはさっきの崖道のみだ。

 盗賊も魔物も城の方の麓から頑張って登っても崖道の辺りまでだな。それから上は木も生えていない。旅人は麓から崖を通り越せば一安心だが、今度は高山の気候に悩まされるのだろう。


 王女を襲うのは木がまだ生えている崖道の手前だな。木に隠れていて襲って、崖道まで馬車を移動させ突き落とす。それから峠を越えて戻る。大変な仕事だな。


 余計なお世話だが高い山脈を挟んでの統治は大変だろう。強国がないから成り立ったようなものだな。峠を越えたら誰もいないから、俺の領地だと言ってみたというようなことかも知れない。

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