204 ゴードンブートキャンプ (3)
城門前。みんな揃っている。
ゴードンさんの訓示。
「昨日は、初めての日にしては良くできた。今日も訓練内容は昨日と同じだが、練度をあげてほしい。シン様から話がある」
「おはようございます。昨夜賊が現れ、捕まえて檻に入れてあります。城の裏側ですので走っていくと見えると思います。エレーネさんと執事長さんにお任せしますので、午前の訓練が終わって昼休みに取り調べをお願いします。ではゴードンさんお願いします」
午前の訓練が休めると思ったんでしょうが、ぬか喜びだったね。エレーネさんと執事長さん。きっちりとあなた方に力をつけてもらわないと、この訓練の意味がないですから。
午前の訓練が始まった。昨日よりだいぶ良くなった。よく回復したね。魔の森の泉の水は、普通の水だと思うのだけど。
昼休みです。皆さん諦めて食事を作っています。いいことです。食事の後、行って見ますか。賊の皆さんのところへ。
おお、だいぶ岩が下がっている。
「こんにちは、お元気ですか?今日はお会いしたかったろうエレーネさんと執事長さんに来てもらいました。お知り合いですか?」
「知りません」
エレーネさんの返答。にべもないね。
聞いてやろう。
「皆さんはどちらからですか?」
答えないね。ドンと足を踏み締める。おお、岩が下がったね。
「皆さんはどちらからですか?」
「王都」
「そうですか。だれのお友達ですか。今度ドンするとほとんどあなたたちとスレスレになります。だれのお友達でしょうか?」
「王弟」
「何しにこちらまで?」
「誰も帰って来ないから」
「そうですか。エレーネさん、何か聞くことはありますか?」
「ない」
「僕も面倒なんですよね。いちいちおいでになられては。どうしようかな。王弟のところにお使いに行ってもらいましょうか。あれ、鳥が飛んできましたね。ああ、杭の上に止まりました。少し岩が下がりましたね。いたずら好きな鳥のようですね。糸を引っ張りました」
囚われの方の顔が引き攣っている。
「おお、残念。糸を揺らしていますね」
岩がドンと下がり切った。鳥は慌てて逃げた。岩と杭などが消えた。残ったのは老衰老人のみ。ひっくり返してみると口をもぐもぐやっている。なんでしょうか。え、聞こえません。あ、お亡くなりになりました。根性がなかったですね。消してしまいましょう。綺麗さっぱりと無くなった。
何人か生きていたのではと思うエレーネさんと執事長だが、どうせ長くても数日だろうし、恐怖に震えながら生きながらえるよりも良いのではと思うことにした。本音は怖いから何も言えない。
午後の訓練も粛々と続く。皆さん岩の顛末を知ったようだ。訓練に励むのは良いことです。
結局5日間同じ訓練をした。
6日目の訓練に入った。今度は玉持ち上げだ。例のツルツルの石を人数分用意。例の水はないからだいぶ小ぶりですよ。持ち上げて屈伸、できないねえ。
さらに5日、おお、出来るようになった。
11日目。
今日から剣の稽古らしい。だいぶ親切だよね。でもゴードンさんは相変わらずこう構えて、こう振って、こう突くという指導だ。
わかりにくいだろうから、ブランコとドラちゃんとドラニちゃんに丈夫な棒を用意してやりました。嬉々として600人に突っ込んでいきますね。
ドラちゃんとドラニちゃんが構えて振る。突く。手加減はしているようだ。骨折はしていないようだけど、剣は落としているね。突かれた人は飛んでいく。うまく棒の先に丸い空気の塊を作ってそれで突いているようだ。棒でそのまま突いたら穴が空いてしまうからね。
ブランコは棒を横に咥えて駆けて行って頭をブンと振る。胴を抜かれて飛んでいく。
それに三馬鹿のどこから剣が出てくるのかわからない神流無手勝派。二百人衆の背中に剣を背負って駆けてきて気づいたら峰打ちされている神流忍術派。
ゴードンさんは俺の指導が悪いのかと素振りをしている。ブンブン振って駆け回るものだから、それの圧だけで兵隊さんが吹っ飛ばされる。結局エレーネさんも執事長さんも侍女長さんも兵隊さんもみんな吹っ飛ばされる。
エスポーサはいつもニコニコとパラソルの下で水の供給。
5日間稽古した。




