201 シン様の人物の問い合わせ結果が届く
その頃、次々とシン様の話が決まっていって、呆然としているエレーネさん。馬が4頭かけて来た。貧弱だ。エレーネさんが派遣した兵だ。
「ただいま戻りました」
「どうでした」
「それが話がいろいろあって」
「じゃ中で聞きましょう」
執務室にいつものメンバーを集めて、兵の報告を聞く。
「まず亡国の人の背丈を越す草原ですが、街道が石畳になっていて自由に通れました。草原を抜けると街道に木が生えていましたが、いま伐採を始めて街道の復元工事をしていました。森を抜けるとアングレアの国境の監視所ですが、門を修理していました。ずっと使っていなかったが、亡国の民が以前のように時々顔を出すようになったので開くように修理しているとのことでした。それからその門番が言うには男の子とその子に従っている方が亡国の方に向かったと言っていました。その子が種芋をくれたと言うことでした」
顔を見合わせるエレーネさんたち。
「それから門番に聞いて、大きな街へ行き、冒険者組合に手紙を頼みました。ゴードンさんは有名人ですから、すぐにわかって、今は退職していると言うことでしたが、連絡鳥を使い連絡してくれました。返事はすぐ来ました。向こうからも連絡鳥で返事を送ってくれたようです。大変な費用と思いますが、どうしてか請求はされませんでした。返事はこれです」
エレーネさんが開けると
『我が主』
とだけ書いてあった。シン様の人物の問い合わせの答えである。
一同のけぞった。
「他に、他に何かあるか」
執事長が聞いた。
「こちらから行くと例の草原の手前に集落があり、今家を何軒も建てているところでした。集落の入り口に像があり、シン様とお連れの方の像のようでした。集落の人に像のことを聞くと、シン様とアカ様と言う神様とおつきの方がやって来て、炊き出しをしてくれて、死にそうな老婆を治し、猟でひどい怪我をして、傷が腐り始めているのを治して、曲がってついてしまった骨折の箇所を正しく骨継ぎをして行ったとのことでした。一同が立ち去った後、草に覆われていた街道が石畳になって開通していたことに気がついたと話してくれました。なにか失礼があってはならないと必死にかけて戻って来ました。以上です」
「ご苦労様、休んでください。明日は日の出と共に訓練だそうです」
エレーネさんが執事長に聞く。
「我が主という主は、主人ということでしょうか、それとも」
「兵の話を聞くと、『それとも』のほうか、両方か。両方かもしれません」
「どうしましょう。兵を鍛える担当者というのはもしかしたら、極級冒険者のゴードン様でしょうか。一人で600人は無理でしょう」
「もしかしたら弟子も連れてくるのかもしれませんね」
「大変。泊まるところとか、食事とか」
侍女長のもっともな疑問である。
「大丈夫でしょう。シン様がなんとかするでしょう」
もはや、考えることを放棄しつつある執事長である。
「もう休みましょう。明日は早いですから」
完全に放棄したエレーネさんである。
散会になった。




