199 エレーネさん ドレスの試着をする
「エレーネさん、ドレスが出来たのですが、後で試着していただけますか。夜会ですから試着も同じような時間の夜の方が色味など掴めて良いと思います」
「わかりました。楽しいような、怖いような気分です」
夕食は満足して終わりになった。三人組も満足したようだ。今日は自宅スパ棟で食べなくても済むね。
エレーネさんには部屋に来てもらうことにした。控え室があるからね。着替えはそこでしてもらう。
部屋に戻ってしばらくすると、エレーネさんと侍女長と侍女がやってきた。
早速試着してもらう。
オリメさんには、ネックレスとイヤリングを渡した。
控え室のなかから、あら、やだ、ええとか色々聞こえる。
しばらく経って控え室から出てきた。
ガッチリした骨格に出るところは出て、凹むところは凹んでいる。胸に輝くネックレスと服の色合い、肌の色、色白だね。マッチして美しい。顔もマニッシュと思いきや、可愛い部類だな。気が付かなかった。揺れるイヤリングに反射した光が虹色に輝き、頬から首筋に当たっている。おお、なかなか綺麗だ。
「そんなに見つめないでください。恥ずかしいです」
肌が薄く赤くなる。ダイヤモンドが輝く。いいねえ。アカとマリアさん、ステファニーさん、エスポーサには及ばないけど、人では滅多にいない美人さんだろう。
ドラちゃんとドラニちゃんがくいくいと袖を引く。ドラちゃんとドラニちゃんにも及ばないよ、もちろん。よしよし。満足していただいた。
侍女長さんも着替えた。夜会服ではないけど、夜会に出てもおかしくはないね。何も飾りがないな。ネックレスを進呈しよう。シルバーがいいな。小ぶりの石をつけておこう。
「アヤメさん、これを侍女長さんにつけて見てください」
アヤメさんが侍女長さんにネックレスをつける。
うん。いいな、なかなか。
侍女長さんが固まっている。オシャレをしたことはないんだろうな。道中着る服も作ってもらおう。
「作ってあります。兵隊さんのも出来ています」
さすがだ。
あれ、皆さん手が荒れているね。クリームを塗ってやろう。
エレーネさんから手を取ってクリームを塗る。治れ治れ、たちまち手の荒れが治る。侍女長さんと侍女さんにも塗る。
エレーネさんが真っ赤になる。侍女長さんも侍女も真っ赤だ。
アカが、また女ったらし、と言う。そんなこと言わないでよ。オリメさん制作の夜会服を着て手が荒れていたらおかしいでしょう。髪の毛も傷んでいるな。シャンプーとリンスを進呈しよう。
「こちらは手荒れ用のクリームです。寝る前に使ってください。いくつかお渡ししますので皆さんで使ってください。それと、これはシャンプーと言います。これで髪の毛を洗ってください。シャンプーを流したあと、こちらのリンスを使ってください。髪の水分をざっと取ったあと髪によく馴染ませ、そのあとぬるっとした感じがなくなるまでしっかり洗い流してください。どちらも手のひらに少量で十分です」
量が多いね。袋に入れてやろう。侍女さんに渡した。
「皆さん、お似合いですが、どうでしょうか」
「す、素晴らしいです」
侍女長さんも侍女さんもコクコク頷いている。
「それは良かった。ドレスと装身具はオリメさんに預かってもらいましょう」
「わかりました」
ぎこちなく控え室に戻っていく。
大丈夫かね。あなたが女ったらしだからですとアカが言う。そんな気はないのだけど。それだから余計たらされてしまうのです。そう言うものですか。そうです。
控え室から戻ってくる。
「兵隊さんの服もできていますので明日の朝、集めてもらえますか。試着してもらいます」
「わかりました」
エレーネさんを先頭に部屋を出ていく。相変わらず皆さん、ギクシャクした動作だ。
よし、試着は終わった。早速みんなで自宅スパ棟に転移する。お風呂に入って寝ました。なんだか疲れた一日でした。
その頃、またエレーネさんの執務室。
今日も集会だ。
「あの夜会服は素晴らしかったわ。この国で見たことはないわね。ちょっと露出が多いと思うけど」
「話題を攫うでしょうね。楽しみです。それにしてもシン様に塗ってもらったクリームとかの効き目は素晴らしいですね。手がしっとりしています」
エレーネさんと侍女長が手を翳してうっとりしている
執事長は、年増もかと思った。侍女長に蹴飛ばされた。勘がいい。
「それはそれとして、兵から気になることを聞きました」
侍女長が話題を変える。
「何?」
「あの体格の良い馬とは思えない馬6頭が駆けて行ったのですが」
「馬で駆けてくると言っていたそうですね」
「それはそうなんですが、乗っていたのは2メートル近い大男と、その男と並べるような大女の美男美女、それに、大男には及ばないが体格の良い男、こちらも美男。それに、ボーイッシュなキリッとした子供が二人。みなやけに神々しく光っているようだったとの報告がありました。草原に走り込んで行ったそうですが、まるで神馬が光る神様を乗せて草原を飛ぶように走っていく物語の一場面のようだったと話していました」
しばらく沈黙が支配した。
「そうなのかしら」
「だったら色々と説明がつきます」
「そうですね。シン様とアカ様、ブランコ様、ドラちゃんとドラニちゃん。でしょうか」
「夫婦神ーーーー」
エレーネさんが寂しそうだ。気を取り直して言った。
「気付かなかったことにしておきましょう。今まで通りでお願いします」
静かにお開きになった。
そんな会話があったとは気付かず、ぐっすり寝てしまったシン様である。アカがやれやれ、たらしのシン様だと言う顔をしている。