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196 賊の自筆自白調書をエレーネさんに渡す

 シン様御一行が客室にもどり、神国に帰った頃、エレーネさんの執務室。今日も3人が集まっている。


 エレーネさんが口火を切る。

 「あの刑は恐ろしいな。岩が空中に浮いている。今頃は紙のようになっているんだろうか」

 執事長が侍女長に説明して聞かせている。

 「恐ろしいですね。死刑のほうが一瞬でよいかもしれませんね。目隠しされていつ首を切られるのかとずっと待っているようなものですね。なまじ岩が見えるから余計恐ろしいでしょうか」

 侍女長さんの感想である。


 「それにしても、御者は証人として生かしておいて欲しかった。言い出せなかったわ」

 「そうですね。恐ろしくてとてもではないが言い出せませんでした」

 「残念だけど、しょうがないわね」


 「エレーネ様、シン様から女性全員に下着をもらったのですがいいのでしょうか。今まで着たことのない着心地です」

 「もらっときなさい。もうとても返せる気がしない」


 「下着は既製品とおっしゃっていましたが、どこの国の品物なんでしょうか。下着全部に巨木のタグがついていました」

 「聞いていいものかどうか、わからないわね。困ったわね」


 「ゴードンさんに手紙を書いてみましょうか。確か亡国の先の国がアングレアといってそこの冒険者組合に差し出せば届くと思います。ただ亡国とアングレアの間に人の背丈を越す草が生えていて通行困難となっていたような記憶があります」

 「手紙を出してみてちょうだい。シン様はたぶん有名なのではないかと思います。オリメ商会というのもあるようですし。草で行けなかったら戻ってくればいいわ。魔物はいなかったはず。危険はないと思う」

 「早速明日出してみます」

 ゴードンさんに手紙を出して見ることになって散会になった。


 翌日シン様御一行は慌てて城に戻った。すぐ侍女さんがお湯を持って来た。ニコニコしている。お礼を言われてしまった。下着だね。

 今日もドラちゃんとドラニちゃんが小さくなってお湯で遊んで、使ったよ、お湯と拭き布。


 朝食に呼ばれて、山菜スープとパンをいただいた。芋はまだ出来ないかね。

 「エレーネさん、昨日の方々がどうなったか見に行きますか?」

 「行きましょう」


 オリメさんとアヤメさんは昨日と同じ。エスポーサに裁縫棟まで連れて行ってもらった。

 エスポーサが帰ってきてから、僕ら一家にエレーネさん、侍女長さんと兵を加えて岩が落ちたか見に行くことになった。執事長さんは用があるそうだ。


 さて、どうなっているかな。

 現場につきました。岩は落ちています。

 「落ちてますね」

 「下敷きの人たちはどうなっているのでしょうか」

 「生きてはいますよ。多分。岩は軽いですから押して見てください」


 エレーネさんが意を決して岩を押す。すっと岩が滑った。岩の下からは老人が現れた。もうほとんど老衰で死にそうだ。


 エレーネさんが仰天している。

 「生きているのかしら」

 「生きてますよ」


 ドラちゃんとドラニちゃんが棒を拾ってきて突いている。

 歯の抜けた口を一所懸命動かして何か言っている。なんだ、悪魔とか言っているね。失礼な。


 もう一箇所は侍女長さんが岩を押した。なかなか肝が据わっているね。

 やはり、老衰老人が出てきた。こちらも必死になって歯のない口を動かして、悪魔と言っている。殺人や殺人未遂のくせに全く失礼なやつらだ。


 エレーネさんが兵に何か言っている。荷車を持ってきて、積んで城に連れて行けと言っているね。優しいな。

 兵を二人、老衰老人の見張りというか、動物がイタズラしないように見張りのために置いて、城に帰った。


 そうだ、エレーネさんに渡すものがあった。

 「エレーネさん渡すものがあるのですが」

 「では応接室まで」


 「なんでしょうか」

 「これです」

 書類の山をテーブルに出す。


 「これは、ーーー」

 「岩の下の方々の、自筆自白調書です。役に立つでしょうか」

 「ええ、一人でこれだけ長く書いてあれば筆跡のごまかしようがありません。母の事件の自白調書もありますね」

 エレーネさんは食い入るように読み始めた。

 「それじゃ、また後で」

 エレーネさんの頬を涙が伝っている。

 「ありがとうございました」

 頷いて客間を出た。丁度執事長さんが戻ってきて入れ替わりだね。

 部屋の中から嗚咽が聞こえる。無理もないか。

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