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195 檻の中の賊 自白調書を書く

 賊が執事長さんに話しかける。

 「おい、助けてくれ」

 「おや、これはお妃様の御者様ではないでしょうか。お久しぶりです。また珍しいところでお目にかかりましたね」


 執事長の目が細められた。エレーネさんも兵も皆睨んでいる。

 執事長が杭を蹴飛ばす。ズンと岩が下がった。ウワッと中の男が伏せる。

 「ほほう。これはなかなかの仕掛けですね。しゃべる気になりましたか」

 男は黙っている。


 執事長は隣の檻に行って杭を蹴飛ばした。こちらも岩がズンと下がり、悲鳴をあげて男たちが伏せた。

 「こちらにも御者さんがいらっしゃるようですね。何があったか話していただけますか?」

 男は黙っている。

 「そうですか。ではもう一周」


 最初の檻に戻って、一応聞いてみる。

 「話していただけますか」

 返事がない。杭を蹴飛ばす。

 岩がズンズンと音を立てて下がる。もはや地上50センチくらい。ちょっとでも何か触れればペチャンコだ。


 再び隣へ行く。

 「話していただけますか」

 「話す、話す。だから助けてくれ」

 「話してください」

 「俺たちは王弟に買収されて、崖道で脱輪させ妃様の馬車を崖から谷底に突き落とした。話したから助けてくれ」


 「私は助けるなんて言っていませんよ」

 杭を蹴飛ばす。隣と同じ残すは50センチくらいになった。

 「だいたい助けたくとも助けられません。岩は浮いています。さわれば下がる。どうしょうもありませんな。恐ろしい檻ですな。人の考えることではないですな。いつ紙のようになるか恐れ慄きながら過ごすのでしょうね。いやあ恐ろしい。姫様。帰りましょう」

 「そうしましょう」


 姫様一行が戻って行く。

 話したり、叫んだりすれば声が響いて岩が落ちてくると思うと何も言えない。岩が今落ちてくるかと恐怖に慄いているだけだ。


 帰り道、姫様が執事長に話しかけた。

 「やっぱり恐ろしいわね。人に出来ることではない」

 「そのくせ優しいし、世情に通じているようです」

 「ますますわからないわね」


 姫様御一行が帰った頃、代わりにシン様御一行がやって来た。

 「こんにちは、みなさん。お元気ですか」

 言い返す気力もない囚われ人。


 「ちょいと作文のお時間なんですが。書くご希望があれば、岩を上に上げましょう」

 皆頷く。

 「一人残らず賛成いただけたようで、ご同慶の至りです」


 岩が上がって行く。地上1メートル半くらいだ。

 中心に人が集められ、杭に沿って丸く机が並んだ。椅子もある。

 「安心でしょう。机がありますから、糸や杭にぶつかりませんよ。では、紙とペンをお配りします」

 机の上に紙とペンが人数分並んだ。


 「ではまずは御者のお二人さん。タイトルは、王弟   に命令されて    王妃を殺害した件。ですね。あとは王弟からの買収から始まって最後まで、事細かく書いてください。紙はたくさんありますのでご安心を。他の皆さんは、タイトルは、王弟   にエレーネ姫の殺害を命令されて実行したが未遂に終わった件。でしょうね。名前は僕は知りませんから入れてくださいね。最後に日付と署名をお願いします」


 「書いてください」

 最後の書いてくださいは頭の中から聞こえた。書かなければ頭がなくなるとわかった。

 一斉に書き始めた。

 「暗くなるといけませんから明かりもつけましょう」

 必死に書き進める。次々に出来上がる。最後に御者が署名して、自筆の自白調書が出来上がった。調書とペンが消え、机と椅子が消えた。


 「ご協力ありがとうございました。ではみなさん、伏せたほうがいいですよ。もとの50センチに戻します」

 一斉に伏せた。ドコーンと岩が下がった。

 「ではごきげんよう」

 シン様御一行が消えた。

 まんじりともできぬ時間が過ぎてゆく。


 城の客室に戻ったら侍女さんが夕食ができましたと告げに来た。エスポーサにオリメさんとアヤメさんを迎えに行ってもらって、揃って食堂に行く。その前にオリメさんとアヤメさんに城の女性たちの下着を頼んだ。


 夕食は今日も山菜だ。ドロっとした濃い液体もついている。味は悪くないが。

 「そうだ。城には女性は何人くらいいますか。兵の採寸をするときに一緒に集まってもらえますか。女性には下着をプレゼントさせていただきます」

 「いいんでしょうか」

 「オリメ商会の既製品です。お気になさらずに。サイズが色々ですので集まってもらうだけです。サイズをみてお渡しします」


 「オリメ商会とは、オリメさんは商会を営んでいらっしゃるのでしょうか」

 「はい、共同経営ですが。今のところ忙しくて、男女の下着専門になってしまっていますが」

 エレーネさんがため息をついている。

 「多才なんですね」

 「すべてシン様のご指導によるものです。下着はシン様のデザインです」

 エレーネさんが僕の方を見て首を横に振っている。なんだろうね。わからんがな。まあいいや。


 食事が終わって、玄関ホールに行くと兵隊さんが集まっている。女性は夕食の片付けをしてからだろう。

 ホールの一角に机を出し、アヤメさんが兵隊さんの名前を聞いて、サイズを書き込んで、次々と片付けた。見た目には名前を聞いているだけだ。オリメさんは書類を確認。すぐ終わった。次は女性。ぱらぱらと来る。応接室を借りて、一人一人下着を袋に入れて渡したようだ。アカが見に行く?と言っている。行きませんよ。混浴苦行でたくさんです。


 さてと、終わったので客室に戻って、神国自宅スパ棟に戻った。みんなで軽く食事する。飽きるよあの山菜尽くし。それから混浴苦行の修行をして、スパ棟で寝てしまった。

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