194 賊を10人ほど捕まえる
さて、暇になったな。なんだかいそうだね。城の外に。狩に行こう。
侍女さんに断って、城の外に出してもらう。一応城門があるからね。開けてもらった。
どちらかな。あっちのようだな。ブランコとドラちゃんとドラニちゃんがドッカンする?というから、捕まえると言った。捕まえると聞いたらすぐに3人が見えなくなった。遠くの方で悲鳴が聞こえるね。もう捕まえたようだ。
ぶらぶらと生えている草木などをみながら歩いていく。珍しい草木はないね。同じだな、リュディア王国などと。これだったらあの種芋も元気に育つだろう。
十数人捕まえたね。山になっている。3人で楽しそうに杭を打っている。円形のサークルを作った。杭の間に糸を細かく張っている。5人、サークルの中に放り込んだ。上に大きな岩が出現した。ふううん。面白そうだ。
もう一箇所、杭を打ちはじめた。同じように作って残りを放り込む。岩が上に出現した。
ブランコがウオンと吠えた。杭の中の男たちが目を覚ました。
一応教えてやろう。
「あーーみなさん。こんにちは。この杭に糸が張ってありますが、触らないほうがいいですよ。頭上をご覧ください。岩ですね。杭に触っても、糸に触っても、岩に触っても、岩が落ちて来ます。だんだん落ちる距離が長くなって来ますのでお気をつけください。最後にはみなさんで受け止めていただくようになってしまいます」
さて帰ろう。
「あ、一応お聞きしますが、みなさんはどなたの命令でおいでになったのでしょうか」
「返事がありませんね。わかりました」
ブランコとドラちゃんとドラニちゃんをよしよしする。
「なかなかいいのを考えたね。これはしばらく楽しんでもらえそうだ」
「帝国でやってみたのー」「やってみたのー」「ペチャンコになったー」
聞こえるように言ったね。よしよし。
「じゃ、戻るよ」
みんなで戻る。エレーネさんに教えてやろう。その前に暇だからぐるっと城の周りを回って帰ろう。
何もいないねえ。だいたいこちらの隣国は亡国だからな。兵が必要なんだろうか。ま、流刑地かな。
城に戻ると執事長が迎えてくれた。どこの執事さんもそうだけど、どこでみているんだろうね。
「エレーネさんと執事長さんにお知らせすることができました」
「こちらへどうぞ」
エレーネさんの執務室だね。
「城から出て森を散歩していたら、ブランコとドラちゃんとドラニちゃんが、賊を取り押さえました。10人くらいいます。森の中に置いて来ましたので、話を聞くなりしてください」
「縛ってきたのですか」
「いや、3人の趣味の檻を作って入れてあります」
「檻ですか」
「まあ、檻のようなものです。もっと楽しい仕掛けつきですが」
「行って見ましょう」
エレーネさんは執事長と兵隊さんを10人連れて行くそうだ。
「じゃ、ご案内しましょう」
十数人連れてみんなでまた戻る。
現場についた。
「これはなんでしょうか」
兵が糸に触ろうとした。
「触るな」
「なんだと、賊のくせに」
「触らないでください。お願いします」
ほうほう、触って見たと見える。岩が少し下がっているね。
解説しておこう。
「杭、糸、岩に何かが触れると、岩が下がります。触るごとにだんだん下り幅が増えます」
「最後はどうなるんでしょうか」
執事長のお尋ねだ。
「最後はみなさんで岩を支えていただくようになりますが、支え切れるかどうか」
エレーネさん、執事長さん、兵隊さんがごくりと唾を飲む。
「なかなか」
と言ったっきり後が続かない。
「二箇所作ってありますので、質問して答えなければ、糸にちょいと触って、岩を少し落として、同じ質問をもう一方のみなさんに聞いてみると面白いのではないでしょうか。最初は口をきいてくれないでしょうが、だんだん岩が落ちて来るとそういうわけにはいかないでしょう。ま、楽しんでください」
サークルの中の人が睨んでいる。
実演しよう。落ちていた小枝をポンと糸に向かって投げる。岩がズンと下がる。わっと言って伏せたね。
「こういう具合になっています。じゃよろしく。今日はこのあたりにはお友達はいないようですよ」
「岩が浮いているようですが」
執事長さんの質問だ。よく観察しているね。
「ロープで吊るしてあると、うまくすればロープを使って助けられるかもしれないなどと考えるお友達がいると困りますから」
「はあ」
そこを聞きたかったのではないのだがと執事長。でも質問はこれ以上できない。頭の上に岩でも浮かせられてはたまらない。
「それじゃ、先に戻っています」