191 内通者を捕まえる
自宅スパ棟でお風呂から出たら、二百人衆が目ざとくかぎつけてやってきた。
「シン様、赤ちゃんが生まれましたので、名付けをお願いいたします」
「いいよ。どこだい」
「連れてきてあります」
「入ってもらって」
ホールに入ってもらった。やや、親が二組だ。子供は一人ずつ。
名前をつけて、水を口にポタポタして、線指輪をしてやり、すくすく育つんだよと話しかけ、抱き上げてよしよししてやる。まるで宗教儀式だね。
だってそうだよとアカ。そうなんですか。
ついでに親御さんと握手する。喜んで帰って行った。
さて、あまり空けてはいけないからすぐ城に転移した。
寝ますかね。寝室は広い。ベッドが二つある。ステファニーさん、マリアさん、オリメさん、アヤメさんでさっさとベッドをくっつける。そうですか。みんなで寝たいと。
寝ました。いつも通りです。
夜中にドラちゃんとドラニちゃんが起きる。行っといで。ブランコとそっと窓から外に出て行った。
ステファニーさんたちにはここで待っていてもらうことにした。たいしたことはないからね。念の為エスポーサにも残ってもらう。
ヒュッと矢の放たれた音がした。すぐボキボキ音がしている。馬が確保したようだ。
馬の所に行って撫でてやる。喜んでいる。思わず力が入ったんだろう。追加でボキボキ音が足元からしている。
ドラちゃんとドラニちゃんとブランコが帰ってくる。ドラニちゃんが矢を咥えている。矢文だね。ブランコの背中に男を乗せて、ドラちゃんがその上に乗ってドヤっている。
門はどうしたの?飛び越えた。そうですか。
おや、執事長さんが起きてきたようだ。
「城の中から外に向かって矢文が放たれ、放った男はそこに馬に踏みつけられています。矢文を受け取る係はブランコの背中です。矢文はドラニちゃんが咥えています。
「出会え」
と執事長さん。皆起きてくる。
「矢文を渡してやって」
ドラニちゃんが、執事長さんのところに行って矢を渡す。
エレーネさんも来た。
もう一度エレーネさんに説明する。
エレーネさんが矢文を開く。エレーネさんが見せてくれた。
『襲撃失敗。得体の知れない者たちと馬を引き込んだ。詳細は分かり次第連絡する』
「矢を射た者は馬が捕らえてくれたか。ありがとう」
エレーネさんが礼を言うと馬がブルブル言っている。
「引っ立てろ。それで矢文を受け取る役目の方はブランコ様の上、ドラちゃんの下か」
ドラちゃんが掴んでポイする。エレーネさんの足元に転がった。
「こいつは知らんな。引っ立てろ」
ドラニちゃんが女性を掴んで運んでくる。エレーネさんの足元にポイした。
「私は何も知りません。矢文とは関係ありません」
「ふん、よく矢文とお分かりですね。こいつも引っ立てろ」
もういないとブランコ、ドラちゃん、ドラニちゃんが言っている。そうだね。確かにいない。城内にはいないと腕の中のアカも言っている。
「これで城内の裏切り者というか、潜入者というか、他にはいないようですよ」
「ありがとうございます。今日襲われたのも情報が漏れていたからと思います。ブランコ様、ドラちゃん様、ドラニちゃん様ありがとうございます」
みんな照れてるね。よしよし。
「それでは僕たちは戻ります」
馬は厩舎に戻っていく。僕らも寝室に戻った。
再び、エレーネさんの執務室。
「本当に恐ろしい方々だ。うすうす情報が漏れているとは思っていたが、こうも簡単に犯人を捕まえられるとは考えてもみなかった」
「捕まえた女は、近頃採用した下働きの女です。今回捕まった男の推薦でした」
「男はどういう経緯で採用になったのか」
「わかりません。かなり長くいます。こちらにくる時からいました」
「調べてみてください」
「不行き届きで申し訳ございません」
「いや、ドタバタの中でここに異動させられて、二人しか内通者を出さなかったと言うことはたいしたものです。謝ることではありません。私がお礼をいうようですよ」
「それにしてもシン様一行はどうしてわかったのでしょうか」
侍女長のもっともな疑問だ。
「それが畏れということなんだろうよ」
執事長の、当たっているような、当たっていないような発言で会議は終了した。