019 魔の森へハイキングに出かける
朝、食事が終わって客間で寛いでいると、マリアさんが仕立屋さんを連れて来た。マリアさん、今日は熟女だよ。あっという間に服を脱がされて猿股一枚にされてしまった。仕立屋さん、ささっと採寸した。マリアさん、見てなくてもいいと思うんだけど。手を出しそう。急いで服を自分で着たよ。
さて、ブランコとエスポーサのところへ行こう。寂しかったかな。尻尾を振って抱きついて来たよ。ごめんよ。午前中は買い物するから、午後は魔の森へハイキングに出かけようね。一頻り二頭を構って店に行く。
バントーさんがすぐ出て来たよ。付いてくれるようだ。
「まずバッグです。背負えるものが良いでしょう。これでいかがでしょうか。生地がしっかりとしていて、中に骨組みがあり何も入れていなくとも入っているように見えます。遠出には必要でしょう。勿論骨組みは畳めます。それとこの小さいサブバッグはどうでしょうか。街や街近郊を歩くにはちょうど良いと思います。お金を入れておくにはこの巾着袋がよろしいかと」
次々と出してくれる。最初の大きなバッグに詰め込んでいく。
「皿やコップ、スプーン類は?お持ちですか。布類はこれでどうでしょうか。大小様々。布は使い道も色々。体を拭いたり、物を包んだり、包帯にも使えます。これは柔らかい木の枝の先を叩いて細かくした歯ブラシです。こちらは歯磨き粉。櫛。アカ様、ブランコ様、エスポーサ様用のブラシ。防水布はテントの替わりにもなります。テントはこれでいかがでしょうか。シン様とアカ様で使うには十分です。一応2、3人用です。ブランコ様とエスポーサ様は入れませんが。入れるようなテントはどうやって一人で運んだのかと疑問に思われてしまいます」
さすがバントーさん。よくわかってらっしゃる。それからお店を一回りした。そうそう、落とし紙なるものがあった。紙の成れの果ての再々生紙だそうだ。最後のご奉公だね。買ったよ。揉んで柔らかくして使うそうだ。
「あとは武器と防具ですね。武器はお持ちですか。そうですか。見せるためにこの剣はいかがでしょうか。腰に下げておけば、見た目剣、中身は頑丈な警棒です。剣より軽いです。防具はあればいいですね。この軽い皮製品でどうでしょうか」
どんどん決まっていくよ。防具をつけ、剣を腰に下げた。サブバッグと巾着をもらい、魔の森へハイキングに出かけることにした。買った物は部屋に運んでくれるそうだ。夕方までには戻るとセドリックさんへの伝言を頼んだ。支払い?大旦那様から頂いているとのことであった。
みんなで街を出る。門番さんには組合員証を見せたよ。
街から少し離れてからアカは大きくなった。剣もサブバッグも巾着も収納する。
駆けよう。みんなでヨーイドンだ。気持ちいいね。滅びの草原を相棒を肩に担いで全力で駆ける。獣や弱い魔物が慌ててよける。森についた。同着だよ。泉まで行って泉のほとりで食事にしよう。ここからはアカに乗せてもらう。ゆっくりだよ。一列になって進む。森だからね。先頭はブランコ、胸を張っているよ。嬉しそうだ。次がアカ、殿はエスポーサ。
「泉まで狩らずに行くよ。魔物は強くなると美味しいみたいだから、泉より奥の魔物を狩ろう」
泉に着いた。服を脱いでザブンと飛び込む。三頭と思いっきり遊ぶ。楽しいな。ちょっと狭いかな。みんなで泉の周りを掘った。広くなったよ。掘ったところからも水が湧き出した。水量は十分のようだ。良かった。水から上がって、神服?を着たよ。落ち着くね。
さて、鍋を出して今日は里芋の煮物だ。
「みんな美味しそうな魔物の肉を持ってきて」
三頭が音も立てずに森の奥へ駆けていく。泉を広げたから周りの木が邪魔だな。相棒でスパン。スパン。木の皿もいいかもね。作ろう。まな板も竹で作ってあったけど木が余ったから作ろう。木の水分を自然乾燥したくらいに除いてから作った。余った木は収納。魔物も収納してあるんだけどね。狩ってきたものをすぐ食べよう。気分だよ。気分。
収納袋から里芋を出して、相棒に包丁になってもらい皮を剥いて切る。落ちている石で簡単にかまどを作り、泉で鍋に水を汲み、里芋を茹でる。枯れ枝をかまどにくべ、‘火つけ’っと念じると火がつくんだよね。便利。
おや、もう三頭が帰ってきた。肉を収納袋から出して渡してくれる。肉を頼んだから捌いて肉になっている。器用だ。アカもブランコもエスポーサもみんな出してくれる。鍋に入れよう。入りきれないよ。ステーキにしよう。でも余るな。お土産にしよう。
食器を出して里芋と魔物の肉の煮物をよそる。食べようね。いただきます。
美味しい。調味料はいらないね。魔物の肉から出汁が出る。テーブルマウンテンで収穫した作物は完全食だから塩もわざわざ入れる必要はない。すぐ食べ終わったよ。
ステーキが欲しいの。そう。じゃ焼こうね。フライパンを出して4枚焼く。あっという間に食べおわった。もう一枚ずつ欲しいの。そうかい。3枚焼く。自分はもうお腹いっぱい。三頭が食べるのを見ていると楽しい。お、食べ終わりだね。
アカが汚いのなくなれって言っている。皿が綺麗になったよ。ブランコもエスポーサも真似している。なかなか出来ない。エスポーサが出来た。ドヤ顔でブランコを見ている。ブランコは焦っているね。まだ出来ない。アカがこうやるんだよと鍋を綺麗にする。ウンウン唸っているよ。
「ブランコ見ていてごらん。自分の皿に汚いの飛んでけって言って綺麗にする」
あ、ブランコがやっと出来た。エスポーサによしよしされている。パワーは有ると思うけど器用さが足りないのだろう。情けない顔をしているね。見ないフリ。アカも心得ている。二人で見ないフリ。食器と鍋を収納して、かまどを壊してお昼寝だ。今度かまどを作っておこう。
アカが横になる。今日はブランコもエスポーサも寄って来てみんなでくっついて寝る。寂しかったんだろうね。三頭の寝息が心地よい。
一時間ほどして目が醒める。三頭も起き出した。あれ、テーブルマウンテン産里芋を食べてもブランコもエスポーサもなんともないね。天狼に進化したから食べられる様になったのだろうね。そうか、それならリンゴを出そう。リンゴを取り出しみんなで食べる。みんな美味しそうだ。
「ねえ、ブランコもエスポーサもテーブルマウンテンの里芋やリンゴを食べられるようになったから、アカの様に小さくなれるんじゃない?小さくなってみて」
エスポーサはすぐ小さくなれた。ブランコはさっきと同じ。ウンウン言っている。アカとエスポーサが何度も大きくなったり小さくなったりして教えている。30分かかってやっと小さくなれた。バカな子ほど可愛いってエスポーサが申しております。二頭は柴犬サイズよりちょっと小さい。親分を立てて律儀だね。
帰ろうかね。その前に服を脱いで洗濯。パッパと乾かして収納。着替える。
「じゃ、帰るよ。帰りは小さいまま帰ろう。ヨーイドン」
小さくとも早いね。あっという間に森を抜けて草原を駆ける。「疾駆する」だろうね。
見ていると先頭は代わり番こだね。先頭が一番風を受けるから代わり番こなんだろうね。先頭は少し大きくなっている。自分はいつも2番目だから、大きくなって風除けになってくれているんだろう。気を使ってくれている。音速を超えたのではないか。さらに加速する。おっと街が見えた。
「みんな減速だよ。ジョギングするよ」
剣を装着しサブバッグと巾着を出した。いちいち面倒だね。浮世の定めか。
ゆっくりとジョギングして街に近づく。門番さん、今は暇なようだ。問題なく入れたよ。従魔の鑑札があるし、小型犬くらいの大きさだから気にならないみたいだ。