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188 助けた鎧武者の「我が家」は城だった

 30分ほどして、城に着いた。鎧武者の言う「我が家」は城だった。大きくはないけど城だ。千人くらいは籠城できるだろう。


 鎧武者は息も切らしていない僕らをみて更に驚いている。

 執事と侍女数人が出てくる。

 「この方々には襲われたところを助けていただいた。また侍女の傷も治していただいた。お泊まりいただく」

 「かしこまりました」

 執事が返事をして侍女の一人が急ぎ足で奥へ行った。


 「どうぞみなさまこちらへ」

 執事の案内で応接室に通される。

 質実剛健だね。この応接室。いざとなれば兵が使うんだろうな。そんな感じだよ。


 侍女がお茶とお茶菓子を持ってきてくれた。ドラちゃんとドラニちゃんがそわそわしてきた。ブランコお前もか。

 侍女さんがニコニコしてどうぞとすすめる。

 ドラちゃんとドラニちゃんがこちらを見る。

 「お礼を言っていただきなさい」

 キュ、キュとお礼を言ってからお茶菓子に手を伸ばす。ブランコにもやろう。

 美味しそうに食べている。


 しばらくして、しっかりした骨格の女性が入って来た。もちろん今は鎧は着ていない。なかなかの美人だ。マリアさんに突っつかれた。アカが膝の上で笑っている。


 「エレーネと申す。先ほどはご助勢いただきかたじけ」

 「いや、ただ通りがかったまでのことです。お気にされることはありません」

 武張った言い方で長々とお礼を言われては敵わないから話の腰を折ってしまった。

 「そうですか。ではそういうことにさせていただきましょう」


 「自己紹介がまだでしたね。私はシンと言います。膝の上が柴犬のアカ、左がマリアさん、ステファニーさん、右がオリメさん、アヤメさん。足元が白狼のブランコとエスポーサ。あちこち遊んでいるのが超小型ドラゴンのドラちゃんとドラニちゃんです」


 「みなさんよろしく。ところでみなさんはどちらからおいでなさったのでしょうか。来た方角には国境があるだけですが」

 「国境の先をさらに行ったアングレア王国をご存知でしょうか。その先です」

 「国境の先をさらに行った、ということは亡国の先でしょうか」

 「そうです。亡国の先の国がアングレアでその先です」

 「ずいぶん遠くから。大変だったでしょう」

 「亡国は魔物も少なく、ただ通り抜けただけです。アングレアは知る人もいますから、まるっきりの異国というわけではありません」


 「これからどちらまで?」

 「決めていません。この世の中をあちこち見て回ろうと思っています」

 「そうですか。予定がないならいつまででも滞在していただいてかまいません。いや滞在願いたい」

 「しばらく厄介になります」

 「是非そうしてください」


 「ところで、オリメさん、アヤメさん。先ほどの活躍は見事でした。ただ私たちにはあなた方の得物がわかりませんでした。何をお使いなのでしょうか。倒された男たちも見た目傷口はありませんでした。私も武人の端くれ、大いに気になります。もしよろしかったら武器と流派をご教示願いたい」


 オリメさんがこちらを見るから頷いてやる。

 「武器はこれです」

 オリメさんが細身の剣を出した。アヤメさんは持ち手がついている50センチくらいの針を出した。

 エレーネさんがびっくりしている。どこから取り出したかわからないからね。でもそれには触れないようだ。


 「剣も針もそんなに細くて折れないのでしょうか。せいぜい1、2回の使用が限界と思います」

 「折れません。シン様製ですから」

 「そうですか。試して見たいですが」

 「いいですよ。どうぞ」

 僕が返事をする。


 庭に出て、石を二つ並べ、石の上に板を置いた。多分、オリメさんの剣が傷つくと思ったのだろう。気遣いいただいた。

 オリメさんが二つ並んだ石の上に剣を置く。石のあいだの隙間を目指して剣を振るのだろう。


 エレーネさんが侍女の持って来た剣を抜いた。

 剣を上段に構えて裂帛の気合いとともに踏み込んでオリメさんの剣をめがけて振り下ろした。

 パッキーンと音がしてエレーネさんの振った剣が折れた。

 エレーネさんは折れた剣の折れ口を呆然と見ている。


 「信じられない。練習用の剣を使ったが、自分の剣でも敵わないだろう。なんてことだ」

 オリメさんはさっさと剣をしまった。


 「で、流派はなんと」

 「ーーーシン流必殺派です」

 「神流ヒッサツ派ですか。聞いたことはありません」

 「そうでしょうね。シン様に教わりました」


 「ちなみにお二方は?」

 「もちろんシン流です」

 また悪ノリする。

 「神流ですか。武器はなんでしょうか」

 「私はロングソードと片手棍が主です」

 「私は鞭です」

 「鞭ですか。戦闘向きではないような」

 「シン様製ですから」

 「ちなみに私のロングソードも片手棍もシン様製です。私たちの武器はすべてシン様製で、シン流です」

 「ーーー神様製、神流ですか。恐ろしい方々だ」

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