187 僕らも歩けばトラブルに当たる
ドラちゃんに乗って街道の上を飛んで行くと国境らしいのが見える。着地して、歩いていく。てくてく。遠いね。
マリアさんに抱っこしましょうかと言われてしまった。いいです。僕は歩けるのです。
やっと国境に着いた。きちんとした兵士がいる。入国は難しいのかな。
「こんにちは。お国に入りたいのですけど。何か手続きがあるのですか」
「西の亡国の民か。いらん。証明書を出す国がないからな。入って良い」
「では失礼します」
何も手続きをしなくて入れてしまった。まあいいか。
今度は整備された街道が続いている。アカが乗せてくれるというので乗せてもらうことにした。マリアさんが後ろに乗ってきた。
ステファニーさんはブランコに乗った。ブランコが吠え、ステファニーさんが鞭を振りながら先頭、なんとなくあっているね。魔物が出たらやってもらおうか。アヤメさんとオリメさんはエスポーサに乗っている。
ドラちゃんとドラニちゃんは、ステファニーさんに飛びついたり、こちらに来たり、アヤメさんとオリメさんの間に入ったりして遊んでいる。
そろそろお昼にしますかね。街道から外れて目立たないところでお昼にする。
テーブルと椅子を出して、食事だ。アカは僕の膝の上。神国でみんなで作った料理だ。デザートは世界樹さんの果物。誰もいないから大丈夫だ。ゆっくり食事をして休んで、再び出発。
点々と魔物がいるのがわかる。襲ってこないけど、遠くで見ている。人はいないな。家もない。ここは最果て、辺境の地かな。辺境伯などがいるのだろうか。遠く剣戟の響きがする。余計なことを考えると碌なことはない。行ってみますか。
ブランコが駆け出した。みんなついて行く。
たちまち現場に着いた。
へえ、これはどうなっているのだろうか。
いやわかるんだけど、真っ白な鎧を着込んだ女性が何人か盗賊?ちょっと違うな。暗殺者、昼間に出るからなんだろう。明殺者。冗談だけど。それらと戦っている。互角だね。なかなかやるね。白い鎧の女性たち。厄介な匂いがプンプンするな。どうしようか。あ、一人女性が手傷を負った。劣勢になってしまった。
しょうがない。声をかける。
「加勢しましょうか」
「頼む」
頼まれてしまった。ここは、戦闘経験の少ない、オリメさんとアヤメさんに頑張ってもらおう。
「オリメさん、アヤメさん、行ってください」
「「わかりました」」
オリメさん、アヤメさん参戦。フリーな賊は5人だな。あとは鎧武者と戦っている。
鎧武者はチラッとこちらを見た。なぜ、ステファニーさんとマリアさんを参戦させないという非難だな。
まあ、見ていてください。
早速一人倒した。必殺技だ。普通の人には見えないだろう。二人目が倒れた。鎧武者は目を見張っている。オリメさんとアヤメさんが踊るような動きをするたびに賊が倒れる。三人目が倒れた。残り二人。
「オリメさん、二人くらい残しておいてよ。口がきければいい」
オリメさんとアヤメさんが二人の後ろをとった。針のような光が煌めく。賊の二人は崩れ落ちた。口はきけるけど体は動かないだろうな。そのうち三年殺しなどと言い出すんじゃなかろうか。ステファニーさんは鞭、マリアさんは豪剣、オリメさん、アヤメさんは必殺だ。うちはバラエティーに富んでいるな。
鎧武者の方も賊を片付けたようだ。こっちに来る。
「さっきは失礼した。二人を侮ったことを謝る。二人には私でも敵わないだろう。そしてそちらのお二人はさらにお強いとみた。また、あなたとそちらの犬と白狼、ミニドラゴンはいずれも底が知れない。大きさが掴めない。人智では測れない」
だいぶ正確だね。何している人かね。
「それは過分な評価をいただき、困惑しております。それはそれとして、二人は口がきける状態ですが、なにか聞くことがありますか?」
「いや口は割らないだろう。それに正体はわかっている」
「そうですか。一人怪我をされたようですが診ましょうか」
「お願いする」
右手首をやられたね。筋が切れている。これでは剣が握れないだろう。治してやろう。そっと手を添えた。手首が光った。
「治ったと思いますが10日くらいは剣を振らず様子を見てください」
ほんとはすっかり治っているんだけどね。
鎧武者さんはグーパーした。涙が頬を伝う。
「ありがとうございます。もう姫様の護衛はできないと思っていました。なんの異常もありません。本当にありがとうございました」
「そうですか。それではこれで失礼します」
「お待ちくだされ。恩人にお礼をしないで行かせてしまっては沽券に関わる。ぜひ我が家で一泊して行って欲しい」
「そうですか。それじゃお願いします」
指笛を吹くと馬がやってきた。避難させていたんだろう。
僕たちをみると頭を垂れている。一頭が近づいてきて僕に頭を擦り付ける。よしよししてやる。
「これは驚いた。姫様と馬丁しか触らせない馬が頭を擦り付けている」
「やっぱり人智では測れないか。馬に乗ってください」
馬が4頭。鎧武者が4人。バトルホースじゃないから僕らが乗るときついよね。
「僕らは大丈夫です。駆けていきます」
「そういうわけには」
「大丈夫です。馬には負けません」
先ほどの馬がそうだろうなという顔をしている。
姫さん?がそれを見た。
「それじゃお言葉に甘えまして。申し訳ありませんがついてきてください」
鎧武者が馬に乗り駆け出す。
僕らも走る。余裕だね。普通の馬だからな。そんなに早くかけると潰れてしまう。
鎧武者が僕らを見て驚いている。余裕で馬についてくるからね。