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186 悪党を滅びの草原に解放した

 「さて、どなたか話していただけますか。これで全員ですか」

 首の曲がった男が返事した。

 「あと10人くらいいる」

 「正確な数をどうぞ」

 「11人だ」


 「アジトはどこですか」

 「食肉組合の裏だ」

 「へえ、食肉組合とつるんでいるのですか」

 「何人か入っている。お金が動くからな。お金が動くところは食肉組合と露天商組合だ。街には他にいつも金が動くところはない」


 「そうですか。あなた方のような方を引き渡すのはどこでしょうか」

 「食肉組合と露天商組合が合同で自治組織を作っている。引渡しはどちらかの組合だ」

 「もちろんあなた方も露天商組合に入っているのでしょう」

 「ーーー」

 「露天商組合に引き渡すと逃げられるわけですか。露天商組合はどこにあるのですか」

 「食肉組合の隣だ」

 「それはそれは。癒着していますね。お互いの組合員の不祥事は黙っている。そういうことですね」


 「ところでここには国があるのでしょうか」

 「昔はあったらしいが、今は集落や街単位で自治を行っているだけだ」

 「よその国が攻めて来たらどうするのですか」

 「魅力がないから攻めてこない。この地域があるのさえ忘れているのではないか」


 「魔物がいないのはどうしてですか」

 「ああ、西の森の手前の草原の草な、あれを魔物が嫌うらしい。だからこの辺にはいない。たまに魔物が迷い込んでくるので、魔物が嫌うあの草を掘って移植したところ爆発的に増えて人間の生活しているところまで生えて来て、退治するのに往生したと聞いている。国の総力を上げて退治したが、それが国が滅んだ原因だという話だ」

 「そうですか。いろいろ教えてくださってありがとう。治してあげましょう。お仲間の11人を連れて来るまで少し待っていてください」


 それでは食肉組合の裏に転移。

 あれか、アジトらしいな。どれどれ、中で何か話しているぞ。

 「坊主が連れていた女はいい女だったな」

 「そうだな。今頃捕まえているだろう。俺は年長の女を希望だ」

 「じゃ俺はその女とよく似た女だ」

 「残り物は二人だな。くじ引きにしよう」


 怒ってますよ。オリメさんとアヤメさん。突っ込んでいいかって。どうぞどうぞ。でもちょっと待ってね。全員いない。6人いるな。あと5人か。探す。3人は食肉組合、2人は露天商組合だな。周りの目が離れた時にアジトに転移させる。11人揃った。


 突っ込んでいいよ。

 オリメさんとアヤメさんがドアを蹴破った。すごいね。怒りに燃えてコブシで話をしに行った。指貫をした拳が光っている。反対側のこぶしも光っている。そんな機能があったっけ。わからん。

 刃物が振り下ろされたら刃物を殴っている。刃がついている方を殴っている。いやすごいね。刃も歯もポキン、ボロボロだ。


 では11人をお仲間と一緒にしてやろう。滅びの草原に転移させる。檻はギュウギュウだね。

 僕らも転移。


 「ぎゅうぎゅうだぞ。ここから出せ」

 凸凹の顔をした後から入った方々が言っています。最初からいた方々はおとなしい。

 僕らもいつまでも構っているわけにはいかないので、この辺でさようならだな。


 「それじゃご要望に沿って檻から出してあげましょう。ではごきげんよう」

 檻を消す。僕らがいなくなったら遠巻きにしていた魔物が寄って来るだろうけど、ご希望だからね。

 僕らは街の郊外に転移した。荷車を出して猪を積んで引っ張っていく。


 街に入って少し行ったところに食肉組合の看板がある。その角を曲がると突き当たりが食肉組合だ。初めてだからどういうシステムかわからない。中に入って聞いてみることにする。

 「こんにちは」

 背が低いから聞こえないのかね。返事はない。


 ステファニーさんがカウンターをコツコツする。

 「なんでしょうか」

 奥から女性が出てきた。

 「買取をお願いしたいんですけど」

 もうステファニーさんに任せよう。

 「会員でしょうか?」

 「いいえ」

 「それでは少し安くなりますが」

 「構いません」

 「ものはなんでしょうか」

 「猪です」

 「え?」

 「猪です」

 「本当に猪でしょうか」

 「外の荷車の上に乗っています。不審なら確認したらどうですか」

 「わかりました」・「担当者を呼んで」

 「外に出て待ってます」


 さっきの事務員さんと熊のような担当者が出てきた。

 「これです」

 ステファニーさんが荷車を指す。周りはすでに見物人が取り囲んでいる。

 「本当だ。猪は猪だが、大猪だ。しかも状態がいい。初めて見た」

 「買取をお願いしたいんですけど」

 「わかったが、値段なのだけど、金貨50枚ならすぐ支払える。おそらくうまく売ればもっと値がつくと思うが」

 ステファニーさんが僕の方をみるので、頷いた。

 「金貨50枚で構いません」


 「それじゃ、荷車は裏の解体場の方に回してくれ。大猪を預けたら預かり証を持って中の事務所まで来てくれ」

 「わかりました。ちなみに私たちは遠くから来たもので金貨にどのくらいの価値があるかわかりません」

 「そうだな、金貨50枚は、普通の家族が2、3ヶ月楽に暮らせるだけの価値がある」

 「そうですか。大猪は高いんですね」

 「この頃見たことはないからな。それにこの大猪は体格が良い。高値がつく」

 へえ、結構儲かるな。収納に入っているものを出すと腰を抜かすかもしれないな。最高で大猪くらいにしておこう。


 解体場に大猪を渡して預かり証を持って事務所に入っていく。

 すぐ応接室に招かれて金貨が支払われた。

 「この金貨はどこの金貨なのですか。失礼ながらこの街では金貨は発行できないでしょう」

 ステファニーさんが疑問に思ったようだ。

 「これは実は昔ここにあった国の金貨です。もう作れませんが、現金での大金の取引は少ないので、昔の金貨でも足りています。ともあれ大金だから気をつけてくださいね。さっきの話を聞いていたでしょうから、もしかすると狙われるかもしれません」

 「わかりました。ありがとうございます」

 お金は僕のリュックに入れるふりをして、アカの収納にプッシュしておきました。

 おじさん目を丸くしているね。僕がお金を預かったことに驚いている。

 「では失礼します」

 「又の取引をお待ちしています」


 外に出て、荷車を引いて歩き出す。ついでにアジトは壊しておこう。瓦礫にした。

 後ろで驚く声がするが知らん。

 荷車も邪魔だねえ。しょうがないか。ガラガラと引いていく。あれ、ドラちゃんとドラニちゃんが乗っている。楽しそうだ。ま、いいか。

 この街ももう用がないな。というか、この元国にも用がないな。次に行こう。

 郊外に出て荷車は収納。ドラちゃんに乗って街道の上を飛んでいく。

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