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目覚めた世界で生きてゆく 僕と愛犬と仲間たちと共に  作者: SUGISHITA Shinya
第二部

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181/499

181 狩人さんに会う

 今日もまた歩く。夕方幾分暗くなった頃、遠くに焚き火のようなものを確認した。行ってみよう。

 その前に、みんなにリュックとテントを背負ってもらう。手ぶらではおかしいからね。

 狩人らしき人が二人、焚き火に鍋を下げ、何か煮ていた。


 「こんばんは」

 「だれだ」

 「旅人です。アングレア王国から歩いて来ました。

 「アングレアだと、もう近頃では聞かなくなった」

 「草原が発達してからこの方、草原の向こうには行けなくなった。どうやって来た?」

 「ちょっと感覚がするどい人がいて、地面の街道の跡を慎重に辿って来ました」


 嘘は言っていないんだけどね。

 狩人は胡散臭そうな顔をしているね。


 「まあいい。何しに来た?」

 「アングレアの国境の警備所で昔は狩人がこちらから来てお茶を飲んだり、獲物と畑の作物を物々交換したりしていたと聞いたもので、なぜ来なくなってしまったのか興味があったので来て見ました」

 「もの好きだ」


 「その話は、曾祖父さんの頃の話だな。その頃は多くの狩人が荷車を引いて森に狩りに行っていた。だから草原の道も保たれていた。たまに森の奥まで行った狩人が野菜を持ち帰って来たそうだが、それが国境の警備所だったんだろうな」

 「警備所では昔話になっていましたよ」


 いくらか狩人の警戒心が薄れたようだ。

 「そうだ。パン食べます?」

 黒パンだ。少し古くなったように加工して出した。

 「おお、すまないな」

 「いや、少し古くなってしまったものですけど」

 「いや、まだまだ十分食べられる。じゃこっちの汁を飲んでくれ」

 器の数がなさそうだから自前の器をリュックから出した。

 それにしてもみんなが飲むとなくなりそうだ。どうするか。少しづつもらおう。


 「この辺に水場はありますか?」

 「ああ、あそこの少し湿地になっている奥に泉がある。昔はよく水が沸いたのだが今は少しづつしか湧かない」

 「ちょっと行ってみます」


 ブランコが喜んで走っていく。掘りたいんだろう。泥だらけになって掘り出した。水たまりの底に積もった朽ちた落ち葉とか泥を掻き出す。

 仕上げにアカが手をかざす。こんこんと水が湧き出る。多すぎてもおかしいからちょっと絞って、多分前の通りの泉になったろう。

 泥だらけのブランコに泉の水を汲んでかけて洗ったふりをして汚れ飛んでけした。

 リュックから鍋を出したふりをして鍋に水をいっぱいにし、戻った。ごまかしが多いがやむを得ない。


 マリアさん、ステファニーさん、オリメさん、アヤメさんが落ち葉や枯れ枝を拾いに行った。

 狩人さんに教えてやろう。

 「泉をこのブランコが掘ったらよく水が湧くようになりました。今度利用してみてください」

 「そうかい。それは助かる」


 狩人さんと少し離れたところで、その辺にあった石を並べてかまど風にして鍋を乗せた。

 マリアさん達が戻ってきたので、狩人さんから火をもらい、枯れ葉に火を移し枝をくべて湯を沸かす。小さいまな板を出し、オリメさんが野菜を刻んで鍋に入れた。もちろん市場で買った野菜だ。

 肉は、魔物がいなかったから、変に思われるといけないのでなし。野菜のスープだ。できたみたいだ。アヤメさんが味見をしている。

 「野菜スープとしてはいいと思います。どちらかというと懐かしい味です」


 「狩人さん。こちらも野菜スープができました。良かったら飲みませんか」

 「おお、すまないね」

 狩人さんの器に野菜スープをたっぷり装ってやる。狩人さんはさっきの黒パンを浸して食べている。


 僕らも食べよう。なるほど、素朴な味だ。

 美食家のドラちゃんとドラニちゃんも飲んでいる。これはこれでいいんだろう。

 禁断の地のものではまずいから、随分前に市場で買った果物で日持ちのするのを出そう。りんごを出した。


 「これ、来る前に市場で買ったりんごです。良かったらどうぞ」

 「おお、これはめずらしい。すまないな」

 「狩人さんはどこからきたのですか」

 「この先の狩人の村だ。草っ原の向こうの森まで行けた頃は賑やかだったそうだ。森に行けなくなってしまって、この辺のちいさな森で狩をするだけになって、今では5軒だけになってしまった。村とは言えないな」

 狩人さんは笑っている。


 「なんで森まで行けなくなってしまったんですか?」

 「森の手前に生えている草は生育が旺盛で、少し人が通らなくなるとすぐ道にも生えてくる。ある年に災害があってな、地面が揺れて、狩人の村もだいぶ家が倒れた。家の片付けなどをしている間に草が道まで少しづつ生えてきた。家の片付け、村の再興などがやっと終わって、森へ行こうとしたら、もう道は無くなっていた。それから、だんだん、人が村から出ていって今は5軒だ。その程度でないとこのあたりの小さな森では狩はなりたたない。すぐ狩尽くしてしまう。狩場にあった軒数が5軒ということだ」


 「なるほど。草はこちらまでは生えてこないのですか」

 「草にも土の好き嫌いがあるらしくて、こちらには生えてこない」


 「そうですか。それで村人はどこに去って行かれたのですか。僕たちももう少し行ってみようと思っています」

 「この先に街道が続いている。3日くらい歩くと街がある。そこに行った」

 「じゃあ行ってみます」


 「そうかい。気をつけてな。この辺は、魔物もいないから大丈夫だろう。半日行ったところに俺たちの集落がある。暇だったら寄ってみてくれ。野菜スープはうまかった。ありがとうよ」

 狩人は自分の火のほうに戻っていった。


 僕はブランコとエスポーサとで鍋を洗いに泉まで行った。ドラちゃんとドラニちゃんもついてくる。鍋は洗うふりをして汚れ飛んでけだ。みんなも汚れ飛んでけしてやる。気持ちよさそうに目を細めている。


 戻るとテントが二張り張ってあった。ステファニーさん・マリアさんとオリメさん・アヤメさんだ。

 僕はテントのそばで、アカとブランコ、エスポーサ、ドラちゃん、ドラニちゃんと横になる。みんな喜んでいる。アカが右、ブランコが左、エスポーサが頭の上の方、ドラちゃんとドラニちゃんはお腹の上。

 みんなにくっつかれて満足して眠った。

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