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018 獣、魔物、魔石

 ドアがノックされ、マリアさんが夕食の準備が出来たと呼びに来た。


 食堂?へ行くとテーブルに銀の食器が並んでいる。皿もスプーンもフォークもグラスも全て銀だ。ヒ素対策?この世界は色々な毒がありそうだから役に立たないか。美しいからだろうね。ガラス食器と磁器、陶器はない。木の食器はある。塗ってある木の食器はない。そうすると多分庶民は木で裕福な家は銀かな。


 品よく年とった女性が出てきた。爺さんの奥さんだね。挨拶して食事開始。


 食事はスープ、野菜、肉、それに飲み物だ。考えたら今日までこういう食事を食べたことはない。アカも低いテーブルを用意してもらっている。気がきくね。ブランコもエスポーサも食事にありつけているだろう。


 爺さんの解説だ。

 「今日の肉は獣肉です。主に狩人が狩って組合に納めたり肉屋に直接売ったりします。魔物肉は平時には滅多に手に入りません」


 「獣は飼育しないのですか」

 「考えた人がいますが、獣を集めて一夜したら魔物に全部食べられてしまったそうです。それ以降飼おうとする人はいません」


 「ふーん。魔物と獣の違いは何でしょうか」

 「魔物は強弱がありますが魔法を使います。もう一つ、体内に魔石器官があって生まれた時にケシ粒くらいの魔石が入っていて、大きく強くなるに従って魔石も成長します」


 「魔物が平時には滅多に手に入らないとはどういうことでしょうか」

 「大体人の住む街の近くには獣がいて、人の気配が薄くなるに従って魔物が増えて来ます。魔物は強いですが、人の手が入った場所を忌避する傾向があります。人によって生育に必要な環境が壊されるからだと言われています。街から離れた場所で魔物を狩っても、肉を街に運ぶ間に傷んでしまいます」


 「なるほど。魔物はなんの役にも立たないというわけですか」

 「いや、魔物の魔石は生活必需品です。魔石にはエネルギーが溜まっていて、それを取り出してコンロや灯りなどに使っています。魔石に溜まっているエネルギーを使い切ると魔石を交換しなければなりません。そのため冒険者が狩人の領域、獣の領域でもありますが、それを超えて魔物の領域に入り込み、魔物を倒し、魔石を手に入れます。魔物によっては角など傷まずに持ち帰ることが出来て、かつ使い道のある部位もあります。ですがそういう魔物は強いことが多いです。冒険者は獣を狩る狩人より収入は多いですが危険な仕事です」


 アカにも魔石はあるの?え、魔物じゃないから無いの。ブランコとエスポーサはどう?最初は魔物だったが正しく天狼に進化したから無くなった。白狼じゃなくて天狼なの?シンとアカの眷属だから魔物じゃないって。あ、そう。二頭は二人の眷属なの?そう。アカは?愛犬、友達、家族なの?世界樹とシンとアカは一緒なの?そうなの。へえー。


 「アカとブランコとエスポーサには魔石は無いそうですよ」

 「やっぱり。神に連なるものが魔物ではおかしいですね。従魔小屋では不味かったでしょうか」

 「体が大きいし大丈夫ですよ」


 話をしているうちに食事が終わった。奥さんは始終ニコニコしていた。おっとご発言だ。

 「貴方、シン様の正装はどうしました」

 「いや、今日は普段着を用意させていただいた」

 お、(気が利かないと)爺さんに圧をかけている。爺さん汗をかき出した。


 「では正装とお出かけ着を私が手配します。マリア、いつもの仕立て屋さんを明日来る様呼んでください。シン様、明日もご予定があるでしょうが、お時間をいただけますか」

 爺さん、奥さんに見えない様にこちらに手を合わせて頼んでいる。しゃあないね。

 「わかりました。明日はこちらのお店で日用品などを見させていただくつもりでしたから、いつでも大丈夫です」

 「では明日の朝お願いします」


 奥さん、マリアさんに目で合図した。マリアさんは出て行って若い子を呼んでいる。仕立屋さんにお使いに出すんだろうね。さすが大店、時間も構わないね。


 食事が終わって再び応接室に戻った。食事の後、主人と客人でお茶するのが習慣のようだ。爺さんに魔石を見せてくれる様頼んだ。


 執事長がポケットから二つ石を出す。できる執事長だ。手に取ってみる。

 「澄んだ石が使用前の魔石です。エネルギーがなくなるにつれて濁ってきて最終的にはその石のように不透明になります」

 執事長さんの説明だ。


 「なるほど、澄んだ石からは力を感じますね。濁った石からは感じません。しかしこれ、石としては同じものですね。ただエネルギーが入っているかいないかだけですね」

 濁った石を握り、エネルギー満ちよと念じる。手を開くと濁っていた石が透明になっている。

 「充填できました」


 「おお」

 二人共、口をあんぐり。爺さん、口をパクパクして声を絞り出した。

 「奇跡です」

 「そんな大袈裟なものではありませんよ。ただ握ってエネルギーを込めればいいだけですから」


 「今まで国の機関、研究者、魔石を扱う業者、商業者組合、冒険者組合、様々な組織、研究者などが充填に挑んで来ましたが、糸口さえ見出せませんでした。当商会も挑み続けて来ましたが、ご多分にもれず出来ませんでした。それを握るだけで充填出来るとは。セドリック、何個か使用済みの魔石を持って来てください」

 セドリックさん、返事して出て行った。すぐ白濁した魔石で一杯の箱を持って戻って来た。


 「セドリック、石を握ってやってごらん。ワシもやろう」

 二人で石を握ってウンウン言っている。手を開いて石を三人で見る。うーーん、ほんの少し白色が薄くなったかも知れない。爺さん、汗をかいてお疲れのようだ。


 「ダメだ。セドリックのもダメだ。我々では力が足りないのだろう。ワシはともかく、セドリックで出来ないなら、この国で出来るものは居なかろう。国に二人っきりの極級冒険者だったセドリックに出来ないなら、この方法では無理だな」

 セドリックさん、すげえ。ちなみにもう一人は冒険者組合の本部長をしているんだと。


 セドリックさんが持って来た箱を両手で持ち、石にエネルギー満ちよと念じる。箱の中に光が満ちる。箱から石を出してみる。底にあった石までみんな透明になっていた。お、爺さんとセドリックさんが石になった。エネルギー充填出来るかな。出来そうだけどやめておこう。


 「この石を屋敷で使ってみて使用感とか教えてください。多分普通に使えると思います」

 「ありがとうございます。今日は驚きの連続で疲れました。先に休ませてもらいます」

 爺さん、よろよろと出て行った。セドリックさんに謝られてしまったよ。爺さんだからね。気にしないよ。よく寝て元気に起きてほしい。


 マリアさんがやって来て客間に案内される。

 「お風呂はこちらです。お召し物は籠に入れておいて下さい。洗濯します」


 お風呂付きの部屋だよ。一流ホテルみたいだ。この世界のホテルは知らないけどね。

 洗い場でざっと流してアカを洗っていると、失礼しますとマリアさんが入って来た。薄物の着物風なものを纏っている。ボンキュボンだ。何歳なの。若い。目の毒だ。アカはこっちを見て笑っている。


 「お背中をお流しします」

 「大丈夫です。自分で洗えます」


 そんな見せびらかすようにして近づかないで。顔に皺もない。たしかあった様な気がしたけど。女優さんより美人。傾国の美女だよ。マリアさんなの?若すぎる。マリアさんの娘なの?35歳が反応してしまうよ。体は自称11歳だけど。


 「まあまあ折角ですから」

 背中を洗われてしまった。

 「前も洗いましょう」

 慌てて風呂に飛び込んだ。チッと舌打ちが聞こえたような気がする。ショタコンなの?危なかった。

 アカは尻尾を振っているよ。コッソリ美味しい物を貰ったに違いない。裏切り者。

 ふう、マリアさん出て行った。


 ベッドはフカフカだ。アカは今日は柴犬サイズだ。怒涛の一日だった。気疲れした。すぐ寝付いたよ。

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