179 東西街道東端のアングレア国境監視所に行ってみる
それじゃ行ってみよう。アカと3人組とこっそり転移しよう。
まずはアングレアの王都のすぐ先に転移。それからドラちゃんに乗って東へ空の旅。高空を飛んでいこう。低空だと誰か見ているといけないしね。見えなくすることもできるけど。高いところから見渡すのも良いから高空にした。
王都の周りは囲われた集落と耕地があるけど、少し行くと何もないね。王都とその周りだけなんだな、人が完全にコントロールできているのは。おっと少し大きな街がある。王都の周りを衛星のようにところどころに街がある構造みたいだな。街の中に畑がある。少し大きな街になると城壁が二重で城壁の間が耕地だ。その街と街、王都を繋いで道が走っている。
滅びの草原とアングレアの境界近くを走る東西街道に接して建物があり人が見える。低い壁がある。多分国境だろう。国境の先は森が広がっている。国境の先にも道が続くけど、草が生えている。轍もない。道は森に突き当たっておしまいだ。昔は続いていたのだろうけど今は森になってしまったようだ。行き来は全くなさそうだね。それにしても滅びの草原はどこまで続いているんだろうか。
そういえばアングレアの先の国の話は聞いたことがないな。国で知っているのは、スパーニア、リュディア、アングレア、小国群、神聖教国、バルディア帝国だけだね。神聖教国とバルディア帝国はどうなったかな。小国群はまとまったかな。こっちに国はあるのだろうか。
アングレアの国境の警備所?に寄ってみよう。アングレア側に少し戻って着陸。歩って国境へ行ってみる。建物があって老人がお茶を飲んでいる。
「こんにちは。ここが国境ですか?」
「そうだよ。東西街道の終点だ。どこから来なすったか?」
「王都だよ。この先は国があるんですか?」
「昔はたまに狩人が顔を出してお茶を飲んでいったって聞いているが、今は行き来はまるでない。狩人も来なくなって道も森になってしまった。だからここも除隊間近の老兵の働き場所になってね。何もすることがないからお茶を飲んでいる」
「この先に国はあるんですか?」
「さあなあ。狩人も何も話さなかったようだよ。狩った獲物と、ほれ暇だから作っているそこの畑の作物を交換していったって言う話だけどそれ以外は聞いてないな。そうだ、昔はこの東西街道が続いていたらしいよ。だから国だか街だか分からないけど何かあったんだろう」
「そうですか。ありがとうございました」
「忙しいかい?お茶でも飲んで行くか?王都の話を聞かせてくれないか」
「王都は、王様が退位されて、エリザベスさんの弟さんが国王に就任されましたよ」
「そうかい。それは知らなかった。ここに連絡は来ないしな。旅人も来ない。除隊の年齢になると近くの街まで行って除隊の手続きをすると、新しい老兵が送られて来るんだ。老兵もこの近辺の街の出身者で王都にも行ったことがないから、王都のことは分からん。そうかい。王様が変わったのか。いっぺんエリザベス王女様が隣国に嫁入りするとき見送りに王都に行って、遠くから王様を拝見しただけだったな」
「エリザベスさんは、お孫さんも出来て旦那さんと仲良く元気にしているそうですよ」
「そうかい。それは良かった。エリザベス王女様は、鞭の王女様で有名だったから心配はしてなかったけどな。お茶をもう一杯どうだ」
「もう十分。それじゃ帰ります」
「待ってろ、干し芋を持っていけ。畑で取れた芋を干したものだ。ほらそこのワンちゃんとドラゴンちゃんと白狼ちゃん、食べてみ、甘いぞ」
「それはありがとうございます」
「なに、いろいろ教えてくれた例だ。またこっちに来たら寄ってくれ」
「はい、そうします」
子供と犬と超小型ドラゴン2頭と白い狼が去っていく。
「まんず珍しいな、尻尾がくるっと巻いた犬と超小型ドラゴンと白い狼だぞ」
「そうだな。おとなしくて可愛かったな。王都にはああいう犬とドラゴンと白い狼がいるのかねえ」
「さあな。どうでもいいさな。悪さもしなさそうだし。また来てくれないかな。干し芋を気に入ってくれるといいな」
「そうだな。待てよ、坊主は俺が来てから初めての来訪者だ」
「おおそうだ。おまえより前に来た俺でも初めてだ」
「どうりで暇なわけだ」
笑い声が国境監視所に響く。
小さな子供が一人で犬とドラゴンと白狼を連れてきたことの異常さに何も気づかすに。
今日も国境監視所は平和だ。
一応家に帰ろう。黙って出てきてしまったからね。バレるといけない。
国境監視所から見えないところまで戻って自宅に転移する。
よしよし、誰も帰って来ていない。うまくいった。