177 世界樹の元で (下)
霧が顔に纏わりつく。目を開けると一面真っ白だ。懐かしいな。アカがぺろぺろしてくる。最初にこうしていた時を思い出しながら少し霧が薄れるまでアカを撫でて待っている。だいぶ薄くなった。
ドラちゃんとドラニちゃんから起こすかな。二人を撫でてやる。起きたね。トコトコと胸の辺りまで二人で来てピッタリとくっついてまた寝てしまった。しょうがないね。
エスポーサは起きてるね。頭にくっついてきた。撫でてやるよもちろん。
マリアさんが起きた。もちろん撫でて、撫でません。誤解される。マリアさんはぎゅっと腕を抱きしめてくる。
ブランコ、ドラちゃん、ドラニちゃんを除いてみんな起きたようだ。じゃ起きよう。起きるよ、ブランコ、ドラちゃん、ドラニちゃん。伸びをしてるね。ドラニちゃんはドラちゃんと記憶を共有しているのかな、霧にも驚かない。
「ステファニーさん、オリメさん、アヤメさん、里芋の葉っぱの上に水が溜まっているから飲んでみたら?美味しい水だよ」
葉っぱを引っ張って水をコロコロさせて飲んでいる。僕も飲もう。冷たくて美味しい。
「僕が初めてこの世界に来て口にしたのはこの水だよ。この水と里芋には助けられた」
ステファニーさん、オリメさん、アヤメさんはぐるっと辺りを見回している。
朝食はこの広場でとった。もちろん巨樹の森の恵みだ。
「今日は泉に行って、沐浴して、果樹園などをもう一回りして、またここに戻ってお昼にしよう。じゃブランコ、迷子になるといけないから、ステファニーさん、オリメさん、アヤメさんを先導して。近いからゆっくり走ってね」
ウオンと後ろを確認しながら薄くなった霧の中を走っていく。
泉について、沐浴。僕は大きくなる。みんな人化したよ。見ませんよ。みんなわざとか。見ませんよ。世界樹さんの着物は、もらってない人は収納に入っていた。お揃いだ。似合っているね。
神国までこの格好で行こう。
果樹園などを回った。果樹を始め種類が多いからね。一周するのに半日かかった。それでもずいぶん忙しかった。世界樹の元に戻って昼食。
『みんなお似合いだわ。着物。ここにくる時はいつもその格好で来てね。私の着物を着てくれるのは嬉しいわ』
『わかった。神国まで着て行って、神国の人たちにお披露目するよ』
『そうしてね。落ち着いたらこの世界をあちこち回ってみるといいわ。まずはこの大陸ね。ゆっくり回るといいわ。面白いわよきっと』
『行ってみるよ』
昼食が終わった。少し休憩。みんな思い思いにあちこち歩いている。ドラちゃんと、ドラニちゃんは、世界樹を登って行った。
僕?僕はアカを抱っこして世界樹に寄りかかってうつらうつらだよ。アカはいつもの柴犬ではなくて人だよ。抱きごごちは、もちろん若い女性だ。
ドラちゃんとドラニちゃんが帰ってきた。アカが降りてくれる。かわりにドラちゃんとドラニちゃんが抱きついてくる。
「登るの大変なの。なかなかてっぺんまでつかないの」
「だから帰ってきたの」
「そうかい、そうかい。今度来た時またやってみたら」
「うん、やってみるの」
「やってみるの」
それじゃ、行きますか。
「おーーい、行くよ」
みんな戻ってきた。じゃ世界樹に挨拶。みんな抱きついて
「行ってきます」
『行ってらっしゃい』
ブランコ、泉まで行くよ。ゆっくりね。
みんなで巨樹の森をかける。いいなあこの森。僕とアカの故郷だ。みんなにとっても故郷になってくれると嬉しい。
泉について、泉の水を飲んだ。美味しい。
「ブランコ、森を出る手前の水筒を沈めた川のところまで行くよ。それから水筒を引き上げて森の外に出て一泊だ」
ウオンと言って、かけていく。ペース配分はしてくれるだろう。
ブランコは、森から谷川に飛び降りたり、谷川の石をぴょんぴょん飛び越えたり、川岸の崖を登ったり、楽しんでいるようだ。みんなもついていく。ブランコのコースは結構面白い。全身運動に近いな。
川について、水筒を引き上げた。
森を出る前にもう一度。
「行ってくるよーー」
『ときどき帰ってくるんだよーー』