174 世界樹の元へ (上)
さて世界樹の元へ出発の朝です。
みんなに見送られてドラちゃんに乗って出発です。自宅の上を回ってから、環状の森にそってぐるっと一周して、滅びの草原はパスして、魔の森の入り口に着陸した。
魔物が一斉に襲って来るかと思ったが魔物の足が止まる。エスポーサとブランコを発見したらしく震えている。ジリジリと下がっていく。一斉に逃げた。ブランコの骨折治療の実験台になった魔物だろう。随分数がいた。ブランコはだいぶヤブな骨継ぎだったらしい。上手になったのだろうか。
さて魔の森です。今回は魔の森が初めての3人、ステファニーさんを中心にオリメさんとアヤメさんが手伝う形で進もう。他のみんなは十分収納に魔物が入っているから、余計な殺生はしないのだ。襲ってくれば別だけど。
ブランコが道案内。ステファニーさん、オリメさん、アヤメさんで一グループ。そのあとアカ、マリアさん。僕、エスポーサ。ドラちゃんとドラニちゃんは自由。
「ブランコ、一日かけて泉まで行ければいいのでゆっくりでいいよ」
ウオンと鳴いて走り出す。ゆっくりだ。
魔物は出てこないねえ。人数が多いからかな。強くなりすぎたかな。それじゃ、ブランコ、少し小さくなってね。ステファニーさん、オリメさん、アヤメさんにマリアさんを加えて先行してもらう。少し離れて僕たちでどうか。
少し進むと魔物が出て来た。しめしめ。
ステファニーさんは危なげなく倒している。今日は大陸から持って来て僕が手入れをしたショートソードを振るっている。
オリメさんとアヤメさんは連携して倒している。オリメさんが僕の作った細身の剣で魔物の相手をしていると魔物の後ろから忍び寄ったアヤメさんがジャンプして魔物の背中に飛び乗りつつ、長い針を首筋に刺し、指貫で押し込む。魔物はきっと何が起こったか分からず死んでしまったろう。必殺だ。
次の魔物はアヤメさんが後ろから近づくのを察知したらしく振り向いた。すかさずオリメさんが心臓あたりに突きを入れる。こちらもちくっとしたくらいだろう。オリメさんの方に向き直ったら倒れてしまった。綺麗な死体だ。血も出ていない。
こわいな、必殺。ドカドカオオトカゲなどには苦戦するだろうけど、普通の大きさの魔物なら十分だな。
僕らの方には魔物は来ない。骨継ぎの噂を聞いたかな。まさかな。
あ、休憩をいれず昼時になってしまった。休もう。
「ブランコ、お昼だよ。食事だよ」
ブランコはすぐ止まる。追いついて、よしよし、いい子いい子、よく先導した。
ブランコは尻尾を振っている。嬉しそうだ。
昼食はもちろん昨日作った食事だ。予想外に結構美味しい。アカに怒られそう。
食事が終わったら少し休憩。魔物?みんなが揃っていると来ないね。
午前と同じ布陣で泉まで順調に進んだ。泉で竹水筒に水を補給。朝まで泉に沈めておこう。
今日はシャワー棟でいいね。設置面積が小さいからね。
夜はテント。時にはこういうのもいい。みんなで一つのテントでいつものように寝る。
朝、食事をして、崖下まで行く。順調だ。
崖下近くなった。
オオトカゲの小さいのが出て来て威嚇してくる。
ドカドカと足音が聞こえる。ドカドカオオトカゲだ。獲物だと勢い込んでやって来たが、こちらを見るとオドオド始める。
尻尾で子トカゲをやって来た方向にはじきとばした。
揉み手をしてペコペコして子トカゲの方に走っていく。いつか会ったオオトカゲらしい。子供ができたのか。オオトカゲが子トカゲをこづいている。こっちに向かいペコペコさせ逃げていった。なかなか表情が豊かだった。贔屓にしてやろう。
消えていった方に、またねーと言うと、何か叫んで返事したようだ。堪忍してぇと聞こえた。
反対側からドカドカと足音がする。来た来た。3頭もいるぞ。ちょうどいい。だがちょっと大変だろう。ステファニーさんとオリメさん、アヤメさんで一頭、あとの2頭は誰かに倒してもらおう。
3人で一頭にかかっていく。残り二頭は無視されたと怒っているらしい。それじゃだれが相手するかくじ引きで決めようか。くじを用意していると襲って来た。短気だねえ。一番近くにいたブランコとエスポーサが爆散しないようそっと殴った。バッタリ倒れてご臨終だ。
三人は苦戦しているね。あれ、誰か盗み見しているよ。さっきの子供だ。目が合った。ごくりと唾を飲み込む音が聞こえる。母親譲りの揉み手をして、ペコペコして逃げていった。母親の言うことを信じなかったのだろうね。しかし、最後に踏みとどまって様子を見たのだろう。意外に賢いかも。またねーと言ってやる。ゴンと音が聞こえた。母親に拳でお説教されているらしい。母親が何か叫んでいる。ごめんなさいーと聞こえるね。いいよーと返事をしておいた。
母子をからかっているうちに、ステファニーさんのほうも方が付いたようだ。ブランコもエスポーサもドカドカオオトカゲは収納に入っているので、3人に進呈した。3人は一頭ずつ収納できた。