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164 避難声がけ作戦

 こちらはツアコンさんに率いられた12人。

 空き家に転移した。外を見てみると教都のようだ。


 「まず最新情報。帝国軍は海岸道を出たところで分裂。一万は帰郷。残りの職業軍人を中心にした五千の兵が教都目指して進軍中。兵糧無し。村々で食糧を略奪。飢えて教都の食糧目当てに進軍中。それでは頑張ってきてください。話すのはドラちゃん派閥、ドラニちゃん派閥、巨大ドラゴン派閥、聖ドラゴン派、中立派が中心でしょうか。それにドラゴン悪魔派穏健派閥、ドラゴン悪魔派様子見派閥ということでしょうか。攻めやすいところから攻めて、最後に残ったところも一言声をかけてください。きかなければそれで構いません。自業自得というものです。さっさと終わりにして下さいね。忙しいんですから」


 派閥の話は、何処かでした気がするが、聞いていたんだろうか。分からぬが、触らないほうが無難だ。

 12人は空き家を出て散っていく。ツアコンさんの取ってつけたような最後の言葉に一抹の不安を残しながら。


 「おい」

 「久しぶりだな。そっちはどうだ」

 「今日は命に関わる話だ。帝国軍五千が教都目指して進軍中だ。兵糧が届かず、飢えている。連中の目指す先はスパーニア、リュディア、アングレアだ。まずリュディアを目指す可能性が大きい。その前にここの食糧は根こそぎ持っていかれる。飢えのため軍紀はないに等しい。略奪、暴行が行われる。家族を連れて逃げろ」


 「お前、それは確かか?」

 「シン様からの情報だ。みんなに逃げるよう伝えてくれと頼まれた。知り合いにも話してくれ」

 「俄には信じがたいが」

 「帝国皇帝の気持ちになってみろ。神聖教国が内部分裂を起こしている今が攻めどきだ」

 「それはそうだが」

 「いいか、攻められたら奥さんも娘さんも毒牙にかかるんだぞ。そうなっては遅い。何処か遊びに行ったつもりになって避難しろ。シン様の親切を無駄にするなよ。友達、知り合いにも話してくれ。信じる、信じないはその人の勝手だ。ただお前は友達だから逃げてほしい」

 「わかった。避難して様子を見る」


 このようなやり取りがあちこちで行われた。ただし多くは反発した。四分の一ほどが避難した。終いには12人は指名手配となった。12人は急いで空き家に集合した。すぐ近くまで追っ手が迫って来ている。ドアが叩かれる。叩き壊されそうだ。

 「ほら忙しいでしょう。転移」

 追っ手が雪崩れ込んだが誰もいない。

 「探せ。デマを撒き散らした奴らだ。生き死を問わず賞金が出る」


 ツアコンさんの転移先は、西の門から出た最初の集落だ。

 「お世話になったんでしょう。恩は返さなくちゃあね」

 ツアコンさんが食糧の乗った荷車二台を出した。

 「ここは教都のすぐ近くだわ。危ない。これを差し上げて帝国軍の進軍方向から外れた方に逃げてもらいなさい」

 「かたじけない」

 ツアコンさんは良い人だったのかと思いながら、村人に避難を呼びかける。

 村人は訳あり連中のことはよく覚えていた。その人達がお礼に荷車二台の食糧を持って避難を呼びかけたので、すぐ信じてくれた。荷車二台の食糧と荷物を乗せた5、6台の荷車を引いて逃げてくれた。


 「さて、それではもう一働き」

 転移した。帝国軍の目の先である。

 「あら、ちょっと近かったかしら。駆け足ね」

 あっという間にツアコンさんが教都に向かって走って小さくなって行く。

 「おい、追うぞ」

 必死になってツアコンさんを追う。振り返っても帝国軍はもう見えなくなった。


 先の方の街道沿いの村の入り口にツアコンさんのパラソルが見える。

 やっぱりツアコンさんは良い人とは言いがたい。何か仰せつかるんだろうと足がゆっくりになってしまう。

 「早くしないと帝国軍が来ますよ」

 用意された水は飲んだ。身構える。


 「簡単なことです。村人に、帝国軍が目と鼻の先に迫っています。食糧を持って逃げなさいと言ってくれればいいのです。逃げる方向も教えて下さい。一声声をかけたら説得は不要です。では次の村の入り口で待っています。モタモタしていると帝国軍が追いついてきますよ。飢えた狼五千ですからね」


 結局、教都が見える最後の村まで、駆けて声がけしてを繰り返した。

 「はい、お疲れ様です。転移しましょう」

 転移した。スパエチゼンヤではない。そんな気がした。ツアコンさんは悪者である。


 「ご存じのように教都正門前です。さっきと同じように村々に声がけしてリュディア方面に向かいましょう。そんなに集落はありませんから、声がけはすぐ終わります。それでは集落の入り口で待っています。遅くなったら罰ゲームです。ドラちゃんクルクルです」


 ツアコンさんが消えた。ドラちゃんクルクルがなんだかわからないが、今までの経験から碌なゲームではないことは確定なので必死にさっきと同じように集落に声がけして進む。進むにつれて集落の規模がだんだん小さくなり、集落がなくなった。

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