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155 シン様が会議を開き、元神聖教国特務隊員と秘書嬢より事情を聞く

 夕陽に染まった都が見える。スパーニアの王都だろう。あっという間に上空を通り過ぎた。向かう先にも夕陽に染まる都が見える。ドラゴンは都の近くの四角い森に着陸した。ドラゴンから超小型ドラゴンが降りてキュ、キュと言っている。降りろということらしい。

 二人で降りるとすぐドラゴンが小さくなる。小さな男の子が犬と白い狼2頭を連れて歩いて来た。

 ドラゴンが、嬉しそうにキュ、キュと鳴きながら、男の子に飛びついていく。

 男の子は両手にドラゴンを抱えヨシヨシと言っている。ドラゴンの主人なのだろう。


 「大変だったですね。こちらにどうぞ」

 ドラゴンは満足したらしく今度は大きい方の白い狼と遊び出した。

 「ドラちゃんとドラニちゃんはブランコと遊んでおいで」

 見回りーと女の子の声が聞こえ、三頭は森の中に消えていった。


 少し歩くと建物が現れた。

 「ここは僕のスパ棟です。まずはお風呂に入ってください。服はぼろぼろのようですから、着替えを用意しました。こちらは誰も入って来ませんので安心してください。風呂の使い方は世話係を男女つけておきます。風呂から出たらホールのソファにでも座って待っていてください。


 二人を風呂に入れている間に応接室と30人程度の会議室を作った。奥の部屋は仰々しいのでね。ううむ、だんだんスパ棟と呼ぶのが苦しくなって来たな。まあいいか。

 それからドラちゃんに迎えに、あれ遊びに行ってたんだっけ。エスポーサが行ってくれるの?ありがとう。エチゼンヤ夫妻とイサベルさんを大事な話があるって呼んできてね。


 エチゼンヤさん夫妻とイサベルさんが到着した。

 三人に簡単に事情を説明し、このまま事情を聞いて良いか、それとも三国に二人を送ったほうがいいか、三国の国王に携帯で連絡して聞いてもらった。すべてお任せする。お下知に従う。とのことであった。それも困るのだが。


 そういうことならまずは僕とアカとエチゼンヤさん夫妻とイサベルさんで話を聞こう。

 二人を呼んで応接室に入る。

 まずは紹介だね。

 「僕はシンと言います。こちらはアカ。先のリュディア王の弟君のローコーさん、奥さんのエリザベスさん。エリザベスさんは先のアングレア王の王女さん、こちらはローコーさんご夫妻の子息の妻のイサベルさん。スパーニア王の王女さんです。私はこの件に関し、三国の王から全権を委任されました。ここで話していただければ三国の王に伝わります」


 「このような場を設けていただきありがとうございます。私は神聖教国の元特務のルチャーノと申します。こちらは、バルディア帝国のタウリス宰相の元秘書のコッリーナです。ご存知かもしれませんが、神聖教国から追放された30人を追った特務の一人です。30人に追いつけず、隊長が帰れば粛清されると逃がしてくれました。その後バルディア帝国を抜けようとしましたが帝国に入ったところで帝国の兵に捕らえられました。入牢していましたが、取り調べ等の間にこのコッリーナ秘書嬢と知り合い、コッリーナがデキウス皇太子に頼んで一緒に逃してもらいました。その際コッリーナが皇太子からの密書を預かっています。その辺はコッリーナから」


 「私は、デヴィクトール15世皇帝の先の皇后のおそばに仕えていました。デキウス皇太子は先の皇后との間のお子様です。ある時宮廷から呼び出されました。大した用ではなかったのですが、急いで帰ると皇后様はお亡くなりになっておりました。おそばに仕えるものがあちこちから呼び出されて、全員席を外した間のことでした。皇后様の枕元には毒薬が落ちており、侍女の一人が皇后様が服毒したと騒ぎました。その侍女が今の皇后です。私たちおそば仕えの者は、全員クビを前提の閑職にまわされましたが、幸い皇太子殿下が内密に動いてくれて全員閑職から異動ができました。私どもは必死にかの侍女の周りを洗いました。そうしましたところ、皇后様が亡くなったすぐ後に、こっそり侍女と連絡を取り合っていた薬師が亡くなっていることがわかりました。程なくその侍女は立后しました。同時に私たちは一人一人とクビになったり、死亡したりしていきました。私は幸い、皇帝の命しか聞かない将軍のもとで働いていたので、クビになることはありませんでしたが、将軍は外からの圧力が嫌になったのでしょう、宰相の元へと異動させられました。宰相も将軍と同じく皇帝の命しか聞きませんでしたので、働き続けられました。その間、私一人で皇后様の死の真相を探り続けましたが、一人では限界を感じておりました。そうした時にルチャーノと知り合いました。ルチャーノを収監した監獄の所長は、私たちが調べていた皇后様暗殺の実行犯の一人と目されていました。このままではいわれなくルチャーノが殺されると思い、皇太子殿下にルチャーノを救っていただくよう懇願しました。皇太子殿下にとっても監獄の所長は仇の一人で、脱獄させることに躊躇はなかったようです。また、食糧の徴発により、餓死者が出始めていることも皇太子殿下の背を押したものと思います。その後皇太子殿下の手の者により脱獄、スパーニア王国、リュディア王国、アングレア王国の関係者宛の密書を託され、東の森に逃げ込み、稜線を越えたところで数頭の魔物に襲われ、二百人衆の方に助けてもらいました。以上が経緯です。そしてこれが密書です」


 シンに渡された密書には

 『近いうちに帝国軍が進発。海岸道を通り、スパーニア王国、リュディア王国、アングレア王国を目指す』

とのみ書いてあった。

 署名も宛先もないが、この場合、仰々しい宛名と差出人の署名があるより、遥かに信憑性は高いと思われた。

 密書を出席者に回覧した。

 「近いうちに来る」

 というのが全員の感想である。


 「わかりました。ありがとうございます。皇太子殿下にお礼の使者を送りましょう」

 「今は軍事体制で難しいです」

 「なにドラニちゃんに行ってもらいましょう」

 会議は終わった。ドラニちゃんを送るので拡大会議は明日朝より開催にした。


 大急ぎでドラニちゃんの収納にお米を入れる。倉庫一杯でいいだろう。それと芋だ。こちらに来て見つけて、神国で増やした芋がある。育ちがよく、栄養も十分。ただまだ味に改良の余地があるが、救荒作物としては申し分ない。それも入れてやろう。あと手紙だ。よし。

 「ドラニちゃん、バルディア帝国の皇太子に届けてね」

 わかったーっと飛んでいった。あれ、どうやって居所がわかるのだろう。まあいいか。多分アカに教わっているのだろう。

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