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150 バルディア帝国 神聖教国と協議し海岸道の隘路拡張工事に取り掛かる

 神聖教国教皇執務室

 「教皇様、バルディア帝国の特使と申す者が来ておりますが」

 「バルディア帝国だと、今までほとんど交渉がなかったが。バルディア帝国の商人が海岸道を通って幾許かの通行料を支払って通り抜けていくくらいだったはずだ。まあいい、会ってみよう」


 「バルディア帝国、タリウス宰相の特使のマケルと申します」

 「ホラチウスだ」

 「この度は教皇ご就任おめでとうございます。デヴィクトール15世皇帝よりの祝いの品です。お納めください」

 「これはこれは結構なものを、ありがとうございます」


 「皇帝は教皇様ご就任を機に貴国と友好を深めたいと思っております。ただ貴国と我が国は交通に難があり、海岸道の隘路が両国の友好を阻んでおります。隘路部分の拡張工事を行いたいのですが、貴国のご助力もお願いできないでしょうか」

 「今、我が国は将来に向けて体制整備をしている最中であり、申し訳ないが余裕はない。友好関係については構築したいと思う」


 「そうですか、ぜひご一緒にと思ったのですが、では我が国が工事を進めます。つきましては工事の立ち会いをお願いしたい。またその方に工事中お知恵を拝借できればと思っておりますが、いかがでしょうか」

 「それはご丁寧なお申し出、承知しました。熟練した工事人を一人送りましょう」

 「ではご都合の良い時に工事現場においでください。お待ちしております。滞在中の宿舎、食事等はこちらで手配しましょう」

 「よろしくお願いする」

 マケル特使が帰って行った。


 「教皇様、宜しいので」

 「相手の手の内を知る機会でもある。特務の残りが何人かいたろう。そいつらから一人派遣しろ」

 「特務に工事に詳しい者はいませんが」

 「構うものか、知ったかぶりをしていれば良い。あそこは国界がはっきりしていない。勝手に工事をして変に疑われてはと思って声をかけたんだろう。工事については何も聞くまい」

 「わかりました。特務から一人派遣しましょう」


 神聖教国から帰って来たマケル特使が宰相に復命した。

 「ホラチウス教皇に会って来ました。案の定費用は出さないとのことです。こちらで工事することで決着しました。立会人が一人来るそうです。その宿舎、食事はこちら負担としました」

 「それで良い。明日から工事を始めよう。立会人は確実に籠絡しろ。美人局も良いな。黄金がいいか。よく見極めて効果的な手段を使え」

 「わかりました」

 「よし。下がれ」


 翌日、宰相から派遣された現場監督とかき集められた石工が帝国側の最初の隘路に集結した。隘路になっている原因は、岩である。大きな硬い岩が張り出していてそれを取り除けなかったので隘路になっている。


 現場監督が石工に聞く。

 「どうだ」

 石工の親方が岩を見て、撫でる。

 「これは難工事だ。岩は硬く、目が全くない。目に沿って割ることはできない。楔をたくさん打ってひび割れを起こして割る必要があるな。それに岩がでかい。2メートルくらいの高さで四角く何段かに分けて切り出すよりほかはない。切り出した岩は道を塞ぐ。それも取り除かねばな。困ったな」

 「何が困ったのだ」

 「人数が足りない。ここだけで今の人員では一年以上かかるぞ」


 「石工は、田舎の石工なら補充できるかもしれない」

 「わかった。石工を集めるだけ集めてくれ」

 「それと石のみと楔が足りない。石のみは1日終わったら使った石のみを軍人に持たせるから鍛冶屋に手入れをしてもらって翌日交代の軍人に持たせてくれ。夜手入れができないなら新しい石のみを持たせてくれ。楔もありったけ持って来てくれ」


 「わかった。他にあるか」

 「足場職人だな。こんなでかい岩とは聞いていなかった。足場がなければ何もできない」

 「ーーー手配しよう」

 「足場職人が来るまで先の方を確認していよう」

 「すぐ足場職人を送る」


 「ああ、頼んだ。何人死人が出るかな」

 「死人とはなんだ」

 「こんな大岩を割るんだ。うっかりすると軍人が岩の下敷きになる。即死だ」

 死ぬのは石工ではないのかと思った現場監督だが、石工が死んでしまっては工事がストップしてしまうのはわかるので黙っている。


 難工事になった。手間取ると皇帝からお叱りが来そうだ。家族を逃す算段をしておくようかと真剣に考え始めた。

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