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146 宰相殿 ハビエル神父より胡散臭いブラックパンサー壊滅のいきさつを聞かされてしまう

 宰相執務室

 「宰相、一大事です」

 「またか。ノックをしろと言っているだろう」


 「それが、ブラックパンサーのアジトが襲撃されました」

 「ブラックパンサーといえば王都一の闇組織じゃないか。長年アジトを探していたがわからなかったのではないか。末端を捕らえても口が硬く、殺されてもアジトの場所は吐かなかった。闇組織の同士討ちか」


 「それが、」

 「なんだ」

 「三馬鹿殿が」

 頭が痛くなる宰相だ。

 「三馬鹿ハルトだ」


 「その三馬鹿ハルト殿が三人で突っ込んであっという間にアジトは壊滅。死屍累々だそうです」

 「ーーー」

 「それに周りを10人の神父服が囲んでいて、アジトから通じた地下道の先の隠れ家もその神父が襲撃し灰燼と化したそうです」

 「スラムの連中は、神父服集団を恐れて息を潜めて隠れているそうです。とりあえず衛兵が遠巻きにしていますが、新しい闇の組織かと神父服の連中が怖くて現場に近づけないと報告がありました。いかがしましょうか」

 「ーーー」


 ノックの音がした。

 「なんだ」

 「宰相に面会希望者が来ています」

 「この忙しいのに追い返せ」

 「それが、ハビエル神父殿とあの恐ろしいトルネード様で、追い返せません」

 「トルネードは国王の人参で懐柔。ハビエル殿は通せ」


 「こんにちは、宰相様」

 「ハビエル殿、ブラックパンサーの件でしょうか」

 「その通りです。うちの託児所が王都見学を企画しまして、保母さんと園児と保父さんで、王都に見学に来ました。ところが中央広場の近くの路地で、みかじめ料を請求していたブラックパンサーの構成員を発見。保父さんが行ってみたところ、ドスで突きかかられてやむを得ず対応。保父さんはブラックパンサーと揉めていた店主より、こんなことをされたのではブラックパンサーに襲われると詰られました。やむを得ず、親切な構成員が案内してくれたブラックパンサーのアジトに行ってみたところ、何を勘違いしたのか、ブラックパンサーがカチコミだと騒ぎ出し、襲って来たので、保父の三馬鹿ハルトがやむを得ず対応。地下道を通って後ろから襲撃して来たブラックパンサーには待機の保父さん10人がこちらもやむを得ず対応したとのことです。なおアジトにいなかった構成員については、天より光があり、黒焦げになったそうです」


 最初から最後まで胡散臭くツッコミどころ満載である。とても壊滅までの経緯が本当とは思えない。

 「止むを得ず、ですか。それに天より光ですか」

 「保父さんは神父でもありますので、神父から攻撃することはありません。専守防衛です。光はなんでしょうか。雷でしょうか」

 「それで攻撃されたようですが」

 「襲われて来たときに対応するのは専守防衛の範囲です。後をお任せしてよければ引き上げます」


 「これから現場に行ってみます。それからついでですから言っておきます。孤児院の改修が完成しましたのでいつでも使い始めていただいてかまいません」

 宰相殿はゴットハルトとの相談はなしにしたらしい。

 「わかりました。シン様に伝えておきます。ではご一緒に」


 宰相が愛馬に乗って近衛兵を引き連れて、トルネードに乗ったハビエルと現場に向かう。

 現場は瓦礫の山だった。


 「これは宰相様。お疲れ様です」

 ゴットハルトである。

 「どうしてこうなった」

 「やむを得ない仕儀でこうなりました。細部はハビエル神父の説明通りです。兵も来たようですし、我々は失礼します。生き残りも何人かいますので早くひっ捕えた方がいいですよ」

 三馬鹿ハルトと10人の神父が引き上げて行く。


 やむを得ないが多すぎる、細部だと、惚けおって、忌々しい。しかし、長年尻尾を捕まえようとして来たブラックパンサーが尻尾どころか本体ごと壊滅したのである。良しとするかと思う宰相である。


 後に捕らえた生存者から聞き出した構成員の人数がどうしても3人合わない。当日確かにいたとアジトにいた者の複数の証言があるのに関わらずである。心あたりがあるか聞くと手足や首をさすりながら真っ青になり、震え、何者かに怯える様子で、知らない、何も知らない、何も見ていないと言い張る十人近くの構成員がいる。皆最初に店の前で騒いだ男である。この男たちは死刑の判決を聞いてホッとした顔をし、安心した態度で刑場に引かれていき、処刑されたという。謎は残ったが、構成員の怯え、処刑時の態度から死ぬより恐ろしい何ものかに連れ去られた可能性があるとの疑念は残しつつ捜査は終結した。

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