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142 脱出神父12人とその家族 教国時代の人たちと会食する

 翌日、かなり日が高くなってからエスポーサ様と一緒に、スパエチゼンヤと王都を見学。夕食となる。


 「皆さんこっちですよ」

 迎賓館のホールに案内された。テーブルが配置されて椅子は壁際に並んでいるのみ。子供用の低いテーブルもある。


 奥の椅子に二人座って話している。ハビエル殿と、あれは。

 「教皇様ーー」

 「その名は捨てた。今はきょうちゃんという。久しぶりだな。逃避行は大変だったようだな」

 「今はなにをしているので?」

 「街の便利屋だな。ドブ掃除、薪割り、草むしり、婆さん、爺さんの相手をしたり、三助をしたりだ。お前さんたちはこれからだな。何をするんだ?」

 「ーーーーー」


 ゴットハルト、ラインハルト、ベルンハルトに率いられた30人とその家族がやって来た。

 「おう、会議以来だな。もう随分前のことのような気がするが、まだそう時間は経っていないな」


 「はい、皆さん」

 げ、ツアコンさんだ。まずいと三馬鹿ハルトとその一行。

 「今日は食事だけですよ。安心してください」

 ツアコンさんはこちらの心もお見通しか。どう逃れればいいのか。そうだ。12人はまだツアコンさんの洗礼を受けていないだろうから、うまく言いくるめて12人に引き受けてもらおうと心の底から思う30人であった。


 「30人とハビエルさん、馬一頭に続いて、教国時代のお仲間が12人到着しました。ご家族も含めると結構な数になりました。申し遅れましたが、私が皆さんの担当をシン様から拝命しました眷属のエスポーサと申します。30人の皆さんには人気のエスポーサです。おや、異論がある方もいるようですね。全員ですか。12人の方は先輩を信じてはいけませんよ。私は親切な案内人のツアコンさんです。明日から私の案内で、基礎訓練です。楽しみにしてくださいね。それはそうと、今日は話すことが色々あるでしょうから、立食にしました」


 「食事に入る前に、皆さんが教国を退去した後の教国のことを少し話しておきましょう。知りたいでしょう?私も知りたいので、少しアカ様に調べてもらいました。まず31人の家に向かった異端調査官ですが、31人が家族も含めて全員手ぶらで、何も持たず家を出たものだから没収するものがなく、また家の中にもかまどの灰以外には何も残ってなかったので、一箇所に集まり時間潰しをして上司に報告。自分の得るものが何もなかった上司は激怒して、自称教皇に報告。異端調査官は着服の疑いで粛清されました。報告した上司も監督不行き届きで粛清されました。次に31人を殺害する任務を帯びた特務ですが、31人は私たちの特訓の甲斐があり、楽々特務を振り切りました。その後特務は、隊長の独断で隊員に、任務は大失敗したのでこのまま戻れば粛清されるから教国から逃げるよう命じました。さすが特務、家族を連れて夜陰に乗じて逃亡、出国しました。隊長は、31人一行の出国を国境の守備兵に確認、教国に戻り報告し、粛清されました。現在は、12人の皆さんが逃亡してしまったので、自称教皇に表立って反対する勢力がなく、独裁恐怖政治路線を固めつつあるようです。ただお偉いさん以外も教国には当然人がいるので、必ずしも自称教皇を支持するものではなく、自称教皇は密告の奨励を始めたようです。密告すると報酬がでるようですよ。密告された人は捕まって裁判もなく処刑です。粛清の嵐ですね」


 ツアコンさんは見て来たようなことを言う。アカ様はどうやって調べたのだろうか。興味を持たれたら、丸裸にされてしまうのだろう。神様には絶対逆らわないでおこうと全員が思った。


 「話が長くなりました。テーブルの小さな器にダイギンジョウというシン様からいただいたお酒が注いであります。乾杯しましょう。お子さんとお腹にお子さんがいらっしゃる方、お酒が飲めない方には、フレッシュジュースが用意してあります」

 「では、皆さんの再会を祝し、これからのご活躍を祈念して、乾杯」


 「ごゆっくり歓談してくださいね。私はこれでも忙しいのでこれで失礼します。12人の方とご家族は明日お迎えに行きますので宿舎でお待ちください。朝は早いですよ。30人は保父さんですね。幼児怪獣相手ですね。可愛いですよね。頑張りましょう。30人のご家族のことは失念していましたが、明日から12人のご家族と一緒に訓練しましょう。体調、年齢等に合わせて訓練しますので、安心してくださいね。最も即死以外は治せますので、大船にのった気分で頑張りましょう。即死だけはしないでくださいね。怪我をしたらブランコに直してもらいましょうか。今練習中です。なかなか上手になったと評判です。もっともこの間魔物で骨折を治す練習をしたら、折れた骨はつながったのですが、すぐ隣が折れました。何回も練習したら魔物が悶絶しました。明日はどうでしょうか」

 魔物もかわいそうにと全員が思った。


 「忘れるところでした。ご家族様の線指輪には明日着用していただく服が入っています。12人の方も同様です。朝その服に着替えてください。ではまた明日」


 「朝は早いと言ったがいつ頃のことだろう」

 保父さんの一人が答える。

 「それはお前、日の出前に集合。日の出とともに訓練だ」

 「やっぱりそうか。じゃあ、明日は子供相手にがんばれよ。こちらは基礎体力養成だ。ツアコンさんはああ言うが、所詮、基礎だ。ひどいことにはならないだろう」

 保父さんは黙っている。ツアコンさんから明日は逃れられるのである。余計なことは言わないのに限る。宿舎の前まで一緒に行く。

 「じゃあな」

 それぞれの宿舎に散っていく。

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