表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
140/499

140 神聖教国を脱出した12人の神父とその家族 シン様一家に救われ信者となる

 さて、こちらは30人とハビエル殿と同じ日に教都を脱出した12人とその家族。

 神聖教国を脱出し、他国に入り、縁者も地縁もなく、追っ手に怯え、魔物から逃げ、夜もほとんど寝られず、逃避行を続け、小さな国をいくつか超え、やっとリュディア王国に入った。


 リュディア王国に何としても入ろうという気持ちだけで無理を重ねてきたのである。リュディア王国に入って、尽きかけていた気力が尽きた。スパエチゼンヤまでは持たなかった。少し前から具合が悪かった幼児が熱を出し、老人も苦しそうに息をしている。全員精も根も尽き果てた。


 遠くからウオンウオンという声が聞こえてくる。魔物に喰われておしまいか。処刑されるよりましかと全員覚悟を決めた。


 キュ、キュと声がする。超小型ドラゴンが降りて来た。白い大きな狼もやって来た。狼が脚をかざすと霧が出て来た。不思議なことに霧を吸い込むと気力が戻って来た。霧に触れた小さな傷も治った。老人と熱を出した幼児に、ドラゴンが足を当てて、キュ、キュ、キューと鳴いている。呼吸が穏やかになった。


 ドラゴンと白い狼はじっと集団を見ている。

 気力を取り戻した大人から、ドラゴン様だ、ドラゴン様だとの声が上がってよろよろと跪いた。一頭のドラゴンが浮き上がり、どこかに飛んでいった。


 しばらくして揺ら揺らと空間が揺れ、神様が二人と先ほどのドラゴンが現れた。神様は二人で全員に水を飲ませて回った。驚くべきことに全員が回復した。何やら体が光ったようだ。ヨボヨボのおじいさんもシワがなくなり、腰も伸びすっくと立ち上がれた。


 「ずいぶん頑張りましたね。神聖教国からここまで大変だったですね。白狼のブランコと、ドラゴンのドラちゃんとドラニちゃんが見つけて手当をしてくれました。もう大丈夫です。とりあえずこれを食べてください」

 深皿に入った、ふやけたような白い粒々が入った濁ったスープを女神様が配ってくれた。


 「おいしい」

 子供が夢中で飲み出した。スプーンを使っている間もなく皿に口をつけてごくごく飲んでいる。大人もスプーンですくって口に入れる。美味しい。粒々は口にすると溶けるように柔らかい。乳児も小さいスプーンをもらい、口にスープを入れてやると美味しそうに口をもぐもぐさせている。

 おかわりもした。おかわりは粒々が増えていて少し粒々が硬くなっていた。美味しい。お腹がいっぱいになる。


 「皆さんは何家族ですか」

 「12家族です」

 「わかりました。スパエチゼンヤまで参りましょう。そこにハビエル神父さん、30人の神父さんとその家族がやって来ましたので、合流してこれからのことは考えましょう。申し遅れましたが私はシン、こちらはアカ、白狼のブランコ、ドラゴンのドラちゃんとドラニちゃんです」


 全員に拝跪された。

 乳児はドラちゃんとドラニちゃん、白狼に手を伸ばしている。手を握ってやったり、毛を掴ませたりしている。


 少し落ち着いたようなのでスパエチゼンヤの管理棟近くに転移する。

 12家族なので僕のスパ棟のお風呂に入ってもらおう。アカとブランコ、ドラちゃんとドラニちゃんにまかせよう。その間に宿舎を作ろう。30人の宿舎の隣に2棟作る。8世帯分余るが何かあった時使えるだろう。

 忘れていたが、ハビエルさんはゴードンさんの隣に入ってもらっている。


 宿舎を作った。マリアさんが12人とその家族分の服を持ってきてくれた。オリメさんとアヤメさんがアカからサイズを教えてもらって作ったそうだ。


 女湯にはマリアさんが服を持っていってくれた。男湯は僕が持って行き、ブランコを呼んで、風呂から出たら新しい服を着てもらうよう頼んだ。


 ホールで待つことしばし。12人は僕の神父服、家族は普段着に着替えて出てきた。


 まずは説明しよう。

 「12人の神父さんが着ている服は、僕の神父の服です。意向を聞かずすみませんでした」

 「我々12人とその家族は、シン様、アカ様、ブランコ様、ドラちゃん、ドラニちゃんに助けていただき、神の奇蹟を身をもって体験しました。異存あろうはずがありません。我々全員、今後ともシン様とご眷属様に誠心誠意お仕えする所存です。この服は我らの誇りです」


 アカが水の注がれたコップを出す。

 「希望があれば、これから私の関係者の印の線指輪を授けます」

 「ぜひお願いいたします」

 全員の希望だ。乳児も手足をバタバタしている。希望らしい。

 「一人ずつ前に来てください」

 アカが言うと一列にずらりと並んだ。

 マリアさんが水の注がれたコップを渡す。飲むと体が光る。アカが線指輪を僕に渡して、僕が指輪をしてやる。体が光る。その繰り返し。乳児にも水を唇にポタポタして、線指輪をしてやる。

 「シン様、アカ様、ご眷属様。我々全員が御神水をいただき、信仰の証の線指輪を授かり感激に打ち震えんばかりです。この上は、身命を賭してシン様、アカ様、ご眷属様にお仕えする所存です」

 ああ、また熱烈信者が増えた。僕タジタジだよ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ