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134 元神聖教国各派代表30人 保父見習となる

 日の出です。

 「おう、きちんと起きられたな」

 「集合しなければ地獄の門が開かれてしまいそうだからな。気合いが入る」

 「まったくだ。小さな子相手だから今日はまさか地獄ではあるまい」


 「はい、みなさん。おはようございます。もう日が登りますね。急がなければ遅刻してしまいます。遅刻しないよう全速力で大手門までかけてください」

 やっぱり、地獄の入り口かもしれんと思いながら、全速力でかける30人。


 大手門についた。ゼエゼエハアハアである。

 ツアコンさんがこちらですよと言いながら歩いていく。目指すは、あそこは託児所といったか。その前だ。

 「はい、お疲れ様でした。今日からはここで保父見習いをやってもらいます。職員の言いつけをよく聞いて頑張りましょう」


 「子供の相手をすればよろしいんで」

 「そうです。乳児から学校に行くまでのお子さんです。可愛いですよ」

 なんだか怪しいことは怪しいが、所詮子供である。酷いことにはなるまいと思ってしまった。


 ちょうど、女性が出てきた。

 「研修はこの人たちかい?」

 「そうです。30人もいます。大変でしょうがよろしくお願いします」

 「わかった。やることはたくさんあるさね」


 「では、園長さんの言うことをよく聞いて頑張りましょう。私はお子さんたちが帰り切った頃迎えにきます。お迎えですよ。嬉しいでしょう」

 何かある。嬉しくないわいと思う30人。

 「お迎えは嬉しくないですか。そうですか。では残念ながらお迎えはなしです。ピチピチチャプチャプランランランですよ。では私は失礼します」

 ツアコンさんが謎の言葉を残して消えた。

 何かある。絶対に何かあると思う30人。


 「ぼやぼやしているんじゃないよ。中に入りな。おーい。これが今日から研修に来た30人だ。何を頼んでもいいよ。神父さんだからまさか怠けることはないと思うが」


 若い女性が声を上げた。

 「まず、出席を確認してください。これが名簿です。名前を聞いて名前の右の欄に丸印をつけてください。欠席の子はバツ印です。理由がわかる場合はその右に書いてください。間違えると大変ですよ。行方不明とか見つかるまで探すようです」

 げげ、やっぱり地獄の一丁目だった。


 「そろそろ銭湯と食堂の早番の人が来る頃です。二人一組で結構ですので確実にチェックをお願いします。入り口で親と一緒のときに確認したほうがいいですよ。後だと大変ですよ」

 急いで入り口に行く。薄暗い中を親が子供と歩いてくる。

 こちらを見るなり、子供がぎゃーっと泣いて駆け出した。

 後ろで園長が叫ぶ。

 「ほら、早く捕まえないとどっかに行ってしまうよ」

 ちょろちょろ狭いところ、隙間、大人が入れないところに逃げていく。二人がかりで追いかけていると、園長の追い討ち。

 「ほら早くしないと次の人が歩いてきたよ」


 やっと捕まえた。なんてことだ。子供一人に二人ではとても対応できない。

 次の子供が来る。

 「こら、名前を確認したか。ちゃんと親に確認する」

 親、親。

 「ええとお名前は?」

 「私はあの子の親ではありませんよ。今、中に入って行った子です」

 「じゃ、さっきの親は?」

 「お帰りになったようですよ」


 「やれやれ、大の大人が名前も確認できないのかい。しっかりおし」

 「おい、中へ行ってあと何人か呼んでこい」


 「おじちゃん、おしっこ」

 「なんだと」

 「ほら、そんな怖い顔をすると」

 小僧の足が止まった。あ、漏らしゃがった。


 「預かった以上、こちらの責任だよ。オムツを取り替えるんだ。ほら次々来るよ」

 奥から二人増援があった。

 「おい、もっといるだろう」

 「中は戦争だ」

 あ、お漏らし小僧が逃げていく。

 「おい、捕まえろ」

 大変だ。こっちも戦争だ。


 園長の協力でやっと早番の人たちの来訪の波が引いた。

 園長が名簿を見て眉間に皺を寄せている。

 「困ったわねえ」

 こっちを見た。ツアコンさんで体に叩き込まれた。なにか押し付けられる兆候だ。


 「いえね、この二日、欠席している子がいるのよ。昨日は欠席と連絡があったんだけど、今日はないのよね。心配だわね。ゴットハルトさんでしたっけ」

 こっちをじっと見る。


 「わかりました。見に行ってきましょう」

 「助かるわ。人手がなかったから確認に行きたくても出来なかったのよ。親御さんの勤め先の銭湯でも心配していて。二人で行っていいから見てきてください。これが住所。親の名前はロシータ」

 住所は最初から用意してあった。この園長も食わせ者だ。


 「よし、ラインハルト、行こう」

 元ドラゴン悪魔派幹部ゴットハルトと元聖ドラゴン派幹部のラインハルトとが出かけようとしたところ

 「待て、俺も行く」

 元中立派重鎮ベルンハルトだ。


 「しょうがないわね。新三馬鹿と言われないようにしっかりやってきな」

 「新三馬鹿・・・。元の三馬鹿は?」

 「知らないの?有名だわ。ローコー、ゴードン、トラヴィス」

 「俺たちはそこまでではない」

 「じき追いつくね。三馬鹿ハルト、ハルト三馬鹿かな。頑張ってきな」

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