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133 エチゼンヤ夫妻が元神聖教国各派代表30人とその家族、ハビエル殿の帰化申請をする

 宰相執務室。

 「宰相、面会希望の方が受付においでです」

 「アポ無し面会は断れと言ってあるだろう」

 「それが」

 またシン様御一行か。


 「エチゼン ローコーご夫妻と、ハビエル殿とトルネード様です」

 シン様の名前が出てこないので一安心である。お気楽に質問した。

 「トルネード様とは名前を今まで聞いたことがないぞ」

 「それが、馬でして。やたら強気でプライドが高く、しかも馬相が極悪で、馬丁がこっちへ来いと言って引っ張ったら、腹を立てたらしく、睨みつけられ、頭に血がのぼった馬丁が鞭を振るったところ蹴飛ばされて、重症です。馬に大人しくしてればいい気になりやがってと言われたと申しておりますが、幻聴でしょう。多分」


 宰相のお気楽の気分はほんの一時であった。

 「馬相だと、言っていることはわかるが、それが極悪だと。またシン様関係の問題児か。空を飛ばないだけいいか。で、ローコー様はなんと言っている」

 「王宮の馬丁が馬一頭まともに扱えないのかと言われてしまいました。言われてみればその通りなので、怪我の苦情も言えず困っています」

 「それでトルネードとやらはどうしている」

 「受付でハビエル様と一緒に待っています」

 「宮殿の中に入れるわけにはいかんぞ。なんとかせい」

 「人参で釣ってみたのですが、匂いを嗅いで人参を踏み潰しました」


 宰相は、やな予感がするのである。馬はきっと、一応、多分空を飛べないだろうが、人混みに行ってボソッと『宰相は腐った人参を出した』とか言いふらすのではあるまいかと心配なのである。大音量で空で叫んでくれれば一時だが、ヒソヒソと囁かれる噂話になってしまったらたまったものではない。


 「そいつは喋らんだろうな」

 「今のところ、喋ってはおりません。が、」

 「が、の次はなんだ?」

 「ハビエル殿の耳元で告げ口しているのではないかと目撃者が申しております」


 宰相は、やっぱりシン様関係は碌なことはないと思うのであった。しかし、しばらく考えていい案を思いついた。

 「料理長のところに行って、国王一家にお出しする人参を分けてもらえ。それを出してみろ。料理長はプライドが高いから、馬にくれるなどと言うなよ。馬丁の親方に良くいい含め、厩舎は敷き藁を新しくして、馬の賓客として扱え。それがうまく行きそうならローコー様御一行を通して良い」

 「わかりました。やってみます」


 「宰相、うまくいきました。国王御一家に出す人参で正解だったようです。機嫌を直して、馬丁に引かれて厩舎に行きました」

 「ローコー様をお通ししろ」


 「しばらくぶりだな」

 「ご夫婦そろって何用でしょうか?」

 「シン様関係でちと相談があってな」

 やな予感がするのである。今日はそういう予感ばかりである。


 「神聖教国から30人、スパエチゼンヤに視察に来たのを覚えているだろう」

 「ああ、そういう話があったのは覚えている」

 「それでな、スパエチゼンヤを視察後、神国に駆けて行って、神国も視察してな」

 やな予感はクライマックスに近づいているのである。

 「そこで全員改宗してしまって、服もシン様の神父服に着替えてだ」

 もう聞くのも嫌な宰相である。

 「ドラちゃんとドラニちゃんに乗って神聖教国に帰ったわけだ」

 「そうですか。それでは私は用がありますので」

 「そうかい。神聖教国のまだ我が国では誰も知らないホットな情報を聞きたくないのかい?もしかすると大変な事態になるかも知れないが。ボンボンに話しておこうか」

 「陛下は忙しいので承ろう」

 宰相は諦めた。

 「そうだろう、そうだろう。どこまで話したかな。神聖教国に帰国したところまでだな。これから先はハビエル殿に話してもらおう」


 「あー、ドラちゃんとドラニちゃんが教都の上空を何回も旋回したおかげで会議室に主なメンバーが集まっており、すぐ視察報告となりました。視察団を代表して、元ドラゴン悪魔派幹部のゴットハルト殿が報告しました。銭湯あたりまで報告したところドラゴン悪魔派強硬閥リーダーが怒り出し、それに大半が賛同し、我々は追放されました。シン様から教国を退くようなことがあったら是非スパエチゼンヤまでと言われていましたので、来た次第です」


 エリザベス様が発言する。

 「追放された後のことですが、私の知り合いがたまたま神聖教国に滞在していまして、その人からの連絡鳥の情報によれば、30人とご家族、ハビエル殿と馬一頭が正門を出、特務集団が追跡。ドラゴン悪魔派強硬閥リーダーが教皇を僭称。教国幹部の一部が家族を連れて逃亡。我、国境閉鎖前に出国するとのことでした」


 宰相は思う。知り合いがたまたま神聖教国に滞在だと。連絡鳥など普通の人は持っていまい。それに素早い情報の収集、分析、それに基づく行動。影の者に相違あるまい。エチゼンヤ、なかんずくエリザベス様は怖い。鞭だけではなかったようだ。待てよ、俺の送り込んだ手の者はどうしたのだろう。何も連絡がないが。


 ローコー様が続いて発言する。

 「そういうわけで、30人とその家族、ハビエル殿とその愛馬が我が国に入国した。追放がまだ公になっていないうちに入国したので、正式な入国となるが、追放が公になると、神聖教国の国籍は失うことになる。そこで相談だが、30人とその家族、ハビエル殿とその愛馬に我が国の国籍を与えていただきたいとのシン様の意向だ」


 「馬に国籍はないだろう」

 「あはは、そうだったな。なかなかお喋りなので人扱いしてしまった。ここに帰化申請書を持参した。まとめ役はゴットハルト。身元保証人は、俺だ。頼んだよ」


 「神国国籍ではないのか」

 「シン様がこの国のためにやりたいことがあるそうで、そのためにこの国の人が必要なのだそうだ」


 「住所は、スパエチゼンヤ内か」

 「そうだ。シン様が作った宿舎だ。じゃ頼んだよ」

 「ああ、事務方に回しておく」


 俺は書類を預かっただけと付箋をつけて、事務方にまわそう。事務方がどう判断するか、俺は知らないと宰相殿。

 「じゃ、帰るか。またな」

 席を立ったローコー一行。


 「あ。忘れていました。明後日、シン様とアカ様がゴットハルトさんを連れて、伺うと言っていましたよ。ではごきげんよう。おほほほ」


 エリザベス殿が爆弾を落としていった。げんなりする宰相。付箋を変更だ。処理は明後日に指示すると書いておこう。

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