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112 ハビエル神父は教皇と会った後、ドラちゃんとドラニちゃんと神聖教国使節団を迎えに行く

 ハビエル神父とシン一行は、宰相との会見後、転移してスパエチゼンヤの門前に戻ってきた。冒険者組合から派遣された門番さんに会釈して中に入る。

 「そうそう、今日は銭湯に入ってみましょう。今日も混んでいるようですが大丈夫でしょう」

 アカにはみんなを連れて先に旅館に行ってもらう。


 シンがハビエル神父と銭湯の入り口を入った。

 「靴はここで脱いで、下足箱に入れて木の札を取りましょう。木の札は下足箱の鍵になっています」

 「カウンターで料金を支払います。串焼き1本の値段です。手拭いなどはここで貸します」

 「男と書いてある暖簾をくぐると脱衣所です」

 「服を脱いで箱に入れ鍵をとり、鍵は手首にしておいてください」

 「こちらがトイレです。入ってみてください」

 「おおおおお」

 と声がする。はじめはみんなそうだよね。

 「さて、こちらが風呂です」

 ハビエル神父と入る。


 「いらっしゃい。背中を流しましょうか」

 「ええ、はい。ええええ。教皇様。何をなさっているのでしょうか」

 「三助だよ。希望者の背中を流したり、体の不自由な人の手助けをしたりしているんだ。朝から3時頃まで街中の細かな頼まれ仕事、今頃から銭湯の手伝いだな」

 「おーい。きょうちゃん、背中流してくれ」

 「はいよー、今行くよ」

 「教皇が、きょうちゃん。顰めっ面して偉そうな態度だった教皇が、きょうちゃんで三助」

 「どぶさらいとか、年寄りの手伝いとかよくやってるみたいだよ」

 「生き生きとされて、楽しそう」

 風呂を堪能して貰った後、服をキレイキレイして、銭湯を出て、従業員子弟向け読み書き算数教室を見てもらった。庭園を散策、転移してスパ棟前に着いた。


 「今日は折角ですから旅館に泊まってください。明日は神聖教国の視察団の迎えをドラちゃんとドラニちゃんと行ってくれますか」

 「はい。承知しました」


 旅館に着くとエリザベス女将が出迎えてくれ、仲居さんに2階の客室に案内された。

 中にはローコーさんが待っていたので、予定を話してハビエルさんを置いてすぐスパ棟へ。


 「ただいまー」

 みんな入り口で待っていてくれた。アカ、ブランコ、エスポーサは頭、体をスリスリ、ドラちゃんとドラニちゃんは飛んで来てしがみつく。撫でるのが忙しい。

 ちょっとの時間だったけど寂しかったって、僕もだよ。ヨシヨシ。

 マリアさんには後ろから抱きつかれた。

 銭湯に入ったばっかりだけど、みんなとスパ棟のお風呂に入って心ゆくまで遊んだ。


 風呂から出たら、エリザベスさんから呼ばれて、王妃と先の王妃に線指輪を渡した。なんだか忙しい。夜はコッソリ神国スパ棟に転移。自宅スパ棟はなんとなく落ち着く。いつも通りの配置で皆んなでぐっすり寝ました。


 朝になって、スパエチゼンヤ内のスパ棟に転移。外に出てスパ棟を収納。厩舎に寄ってトルネードと話をする。ハビエルさんと一緒が良いそうだ。ハビエルさんを迎えに行く。


 旅館の玄関を入ると、ハビエルさんがロビーのソファに座って待っていた。

 「シン様、おはようございます」

 「おはようございます。良く寝られましたか?」

 「はい、ぐっすりと」

 「今日はドラちゃんとドラニちゃんで迎えに行って来てください。トルネードは行きたいようなので連れて行ってください」

 「わかりました」

 「今日戻って来る時は、ドラちゃんとドラニちゃんに分乗してきてください。宰相からスパエチゼンヤからのドラちゃんとドラニちゃんの発着許可はもらっていますが、スパエチゼンヤの門前で降りてもらって門から中に入って全体を見てもらいましょう。明日以降ならまた方法は考えます」

 「承知しました」


 「じゃドラちゃん、ドラニちゃん頼むよ」

 「「わかったー」」

 ドラちゃんが大きくなる。

 「どうぞ乗ってください。ドラちゃんが落ちないようにしてくれますので大丈夫です」

 ハビエルさんとトルネードが乗った。ドラニちゃんもちゃっかり乗った。落ちないように見ているんだろう。多分。

 重力を無視してふわりと浮き上がり、翼を広げて上昇、あっという間に見えなくなった。


 神聖教国

 ドラゴンだーー

 ドラゴン悪魔だーー

 聖ドラゴン様だーー

 ドラゴンが二頭悠々と教都の大空を舞う。

 今日も実りのない会議をしていた三派のお偉いさん達は、窓から旋回するドラゴンを三派三様の心持ちで見ていた。


 ドラゴンの一頭が三度教都の空を旋回した後、瓦礫が片付いた大神殿跡地に降りて来た。

 「降りて来るぞ」

 誰かが叫んだ。

 巨大ドラゴンがゆっくりと降りて来る。

 こちらを向いた。三派のお偉いさんはドラゴンと目があったような気がして思わず後退りしてしゃがみこんだ。

 窓の外をドラゴンが降りてゆく。日が遮られる。永遠に続くかと思われた時間が、日が差して来て終わったと安心したが、再び日が翳り、ドラゴンによって視界が遮られる。

 「二頭目が降りて来たぞ。場所が無い。壊されるぞ」

 誰かが叫ぶ。

 頭を抱えて全員床に伏せた。

 何も起こらない。

 恐る恐る窓の外を見ると、大神殿跡地に見慣れぬ神父服のようなものを着た男が馬を連れて立っている。馬の背には超小型ドラゴンが二頭、馬の頭によじ登ったりして遊んでいる。


 「あれは人畜無害無能長老のハビエルじゃないか」

 「神父服が違う」

 「年齢が合わない」

 ざわざわと言いあっているうちに、一頭のドラゴンが馬並みに大きくなって男を乗せて浮き上がった。

 「こっちに来るぞ」

 ドラゴン悪魔派は後退り、聖ドラゴン派は拝み出した。中立派は傍観している。

 窓の高さまで浮いて来ると男が窓から入って来た。


 「ただいま戻りました」

 「ハビエルか」

 中立派の重鎮が聞いた。

 「はい、そうです」

 「その格好は?神父服はどうした?」

 「王都に行く途中盗賊に襲われまして、背中から腹へバッサリとやられました。神父服はその時切られました。私を庇った馬も首に切付けられました」

 「よく助かったな。背中から腹へバッサリやられて助けられるような医者はいないぞ」

 「私と馬が息を引き取る間際にドラちゃんとドラニちゃん、今日はこちらには見えていませんが、ブランコ様が駆けつけてくれ、シン様も呼んできてくれ、治療していただきました」


 聖ドラゴン派幹部

 「まさに奇蹟だ。霊験あらたかとはこういう事を言うのだろう」


 ドラゴン悪魔派幹部

 「悪魔のような所業だが、何か引き替えに差し出したのか?何か変わったことはないか」

 「何も差し出しておりません。強いて言えば」

 「何を盗られた?」

 「老いがなくなりました」


 中立派重鎮

 「それは、盗られても嬉しいな」


 ドラゴン悪魔派幹部

 「ーーーーー。その服はなんだ」

 「シン様の神父服です」

 「どういうことだ」

 「シン様の神父の服です」

 「お前棄教したのか」

 「はい。本物の神に仕えることが出来ました」

 「悪魔かもしれんぞ」

 「見返りなく人を助けるのが悪魔でしょうか。献金を貰い効きもしない聖水を売りつけ、魂の危機を煽り私財を差し出させ私腹を肥やす方が悪魔の所業ではないでしょうか」

 「ーーーーー」


 「ここで議論しても振り出しに戻るだけだ。先ずは先に決まった通り視察をしよう」

 中立派重鎮が発言し、聖ドラゴン派幹部もドラゴン悪魔派幹部も同意した。


 「出発はいつになさいますか。これからでも構いませんが」

 「人選は各派とも済んでいるが明日にしてもらおうか」

 中立派重鎮の発言に各派同意した。


 「では明日朝、大神殿跡にお迎えに参ります」

 ハビエル神父がひらりと窓から飛び降りた。各派窓に駆け寄る。

 巨大ドラゴンが神父と馬を乗せて浮き上がって来た。ウオッとのけぞる各派を尻目にドラゴンは大空に達し翼を広げ浮いている。何をしているのかと窓に近づくともう一頭の巨大ドラゴンが浮いて来た。再びのけぞる各派。

 二頭並ぶと急上昇しあっという間に見えなくなった。

 「あれは神か悪魔か」

 「わからぬ」

 「どちらにしろ勝てないことは確かだ」

 「「そうだな。明日の準備をしよう」」

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