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第2話 真実を知る

 あれから、マグノリア様に助け出されて半年が経った。


 あの後、彼がこの国の第二王子だと知って酷く驚いたのは懐かしい記憶。


「王族だと知らなかったとは言え、数々の無礼申し訳ございません!!」


 マグノリア様が第二王子だと知ったとき、私は初対面で行った無礼を謝罪した。

 知らなかったとしても王族に対して、あの態度は不敬罪になる。


「いや、気にしてないよ。あの時は仕方なかったし、それに僕が王族だからという理由で態度が余所余所しくなるのはいただけない」

「ですが……」

「僕が大丈夫だと言ってるんだから大丈夫だよ」


 まるで安心させるように笑うマグノリア様を今でも鮮明に思い出せる。


 その後、マグノリア様に案内され、歴代の王宮薬師が使っていた製薬室へと案内され、今はそこで私は薬を作り続けている。

 薬と言っても普通の薬じゃない。

 王家に代々伝わってきたという秘伝薬だ。


 昔、この王国は薬師の国と言われるほど薬学に秀でた国だった。

 だけど、今ではすっかり落ちぶれて隣国に薬師の国という名を奪われた状態に。

 マグノリア様はこの国をまた薬師の国に戻したいと考えており、そこで王家に伝わる秘伝薬を復活させようと考えた。


「それで君の力が必要なんだ。王家の秘伝薬のレシピなんだが見つけたものが古くて、素人の我々では解読が不可能な部分があるんだ」

「それを私が解読するんですね?」

「あと、この秘伝薬を作って欲しい」

「その役目、私で良いんですか?」

「君のような優秀な薬師でないと作れないんだ。君しかいないんだ」


 至近距離で両手を握られ、囁かれるように私が必要だと言われ、私の頬は赤く染まる。

 金のために生かされていた私にはマグノリア様の言葉が嬉しかった。

 だから。


「が、頑張ります!!」


 この人の為に頑張ろうと思った。


「ん~と、これはこうかな?」


 こうして、私は秘伝薬のレシピを解読し、作るという毎日を送っている。


 ぶっちゃけ、一日中、机の前でレシピの解読をして、それが終わるとレシピ通りに薬を作るの繰り返しで代わり映えのない日々。

 終わったとしてもマグノリア様が次から次へと持ってくるので遊ぶ暇はない。

 だけど、前と違って睡眠はしっかり取れるし、ご飯は三食、お風呂は毎日入れる。昔よりも今の方が断然、環境が良い。

 それに。


「ありがとう、これで僕の夢に一歩近づいた」


 マグノリア様がそう褒めてくれるから頑張れた。


 あと、友達というか話し相手が出来た。


「まあ、それは良かったですね」

『にゃあ~』


 猫を膝に乗せ、私の話を聞いてくれるのはこの城に勤める侍女のカノン。


 遊び時間はないものの、休憩として中庭を散歩しているのだが、その時によく此処に来る一匹の猫に餌付けしたのが切っ掛けでカノンと出会った。

 猫はよく中庭に遊びに来る野良の子らしい。


「うん、古語が結構あって大変だったけど何とか解読できて良かったよ」

「それじゃあ、次は作るんですね」

「そうだよ。だけど、今回のレシピの中に今は禁止されて使えない薬草があるから、それの代りを探さないといけないの。薬草の知識は母さんに詰め込まれたけど、探すとなると大変だな~」

「それは大変ですね。でしたら最新の薬草図鑑を買ってきましょうか?」

「いいの? それじゃあ、明日、お金を渡すね!」

「ふふ、お金は大丈夫ですよ。素人の私がクコさんのお役に立てられるのはこれぐらいしか出来ませんから」


 カノンは私の話を聞いて、外に出掛けられない私の為に良くしてくれる。

 お金を渡しても私の為だからと言って中々受け取ってくれないのが悩み、次は御礼に何か買ってあげたいな。マグノリア様に頼んで一日、出掛けても良いか聞いてみよう。


「そういえば、クコさんはご存じですか。マグノリア様の噂を」


 カノンの御礼を考えていたらカノンからマグノリア様の噂の話を聞かされた。


「噂?」

「はい。夜中にどうも抜け出して、この辺りでよく見かけるそうなんですよ。クコさんなら、何か知っていると思ったのですが……」

「ごめん、マグノリア様とは確かによく会うけど知らなかった」

「いいえ、只の好奇心ですのでお気になさらず。それでは、そろそろ戻らないと」


 カノンは笑みを浮かべて持ち場へと戻っていった。

 残された私はマグノリア様の噂が気になって仕方がなかった。


 その夜。

 昼に聞いたマグノリア様の噂で中々眠れず、ベランダで星を見ていた。


 ただ、ボーと見ていたら、ガサリと草が揺れる音が聞こえて、音が聞こえる方を見ると。


「マグノリア様?」


 黒いフードを被るマグノリア様が居た。


 ベランダに居る私に気付いてないようで、マグノリア様は中庭の方へ歩いて行った。


「カノンが言っていた話、本当だったの? ……よし」


 私はマグノリア様の後を付けることにした。噂の真相を確かめるために。


 バレないよう私も黒いマントを被り後をつけていく。

 何度かバレそうになったけど、草陰になどに身を隠して凌いだ。


 しばらくついて行くと中庭の隅の方、バレないような場所に小屋があった。マグノリア様がその小屋のドアをノックすると。


「マグノリア~♡ 今日も来てくれたのね~♡」


 義妹が出てきた。

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