第7話「2人の目覚め」
日曜双矢は、VRMMOワールドから目を覚ました。
「くう~~~~……」
外の天気は晴れで、風通しが良かった……。
「あぁ……、酷い目にあった……」
双矢は京学文美の前に、まず謝らなければいけない人物がいる。
双矢はスマホを取り、電話をする。湘南桃花先生へだ。
『はい、桃花です』
「……日曜双矢だ。えっと……先生。なんというか……スミマセンでした」
『……うん、いいって。許す。どうせ自業自得だから。それよりあんたは、早く文美に会ってやんな』
「はい、ではこれで」
『うん、また後で会いましょう』
プツ――、と電話が切れる音がした。
再び、ベットの上で深呼吸してから。……、……。
「死と再生の物語。……異世界転生、……か……」
現代用語を口にした。
◆
――何が……、どうなったの……?
――他人のイメージで構成されているようなこの感覚……。
――そう、……これは。
――夢。
「はっ……」
京学文美は、VRMMOワールドから目を覚ました。
先に、優しい風がくる。空気を大きく深呼吸して。
まず探したのは、……微かな、恋人同士の、カップルとしての想い出。
が、名前が出てこない。だけど、記憶の中から決して消えないアノ名前……。
「ブロード、レイシャ、リスク、スズ……」
と、その時。
普通のドアなのに、まるで魔法のドアを開けてくるかのような男性が1人。
「この世界では、京学文美って言うらしいぜ。レイシャ」
「ブロード、……ブロード!」
思わず抱きつく文美。
「正確には……〈真名〉って呼んだ方が良いかもしれないな。テレビ観たけど、リスクは健在だし」
「……?……」
彼女は、本当に、――何が何だか解らなかった……。
◆
日曜双矢は京学文美に話を続ける。
「記憶が混乱してるみたいだな。どこから話せばいい? 何でも答えるぜ。Q&Aだ」
「見た目は変わってないけど、あなたはブロードじゃないの?」
「ん~そうだな。見た目も中身も変わってないが……。変わったとしたら世界の方だな。世界が新しく、文字通り書き換わった。この世界では俺の名前は、日曜双矢。で、レイシャの名前は京学文美」
「ん……へ……?」
「ん~、頭おかしい変な人って思われてるかもしれないが……。でも真実だ。特に俺達4人組、ギルド『四重奏』の真名は。時が過ぎようと、歴史が書き換わろうと、変わらなかった」
「真名……?」
「俺達4人は特別だってことさ。他に質問は?」
「……、……」
時間がゆっくり流れてゆく……。
「他に質問は?」
「えっと、……私の中ではブロード、……えっと、双矢君とは彼氏彼女の関係で、つまりカップルだったはずだけど……。もしかしてそれも……、か、書き換わってますか……?」
言って、間が発生する。
「いいや、カップルはカップルのままだった。どんなに世界が壊れようと、どんなに世界が改変されようと。俺達は、どんな時と場所でもカップルだった。……ま、天然ボケな所が、優秀で頭がいい。とか、文美は変更されてた所はあったな」
「てことは、私は……今、……何?」
「安心しろ。天然ボケで、巨乳で、巫女さんって所らへんは。一切改変されなかったぜ」
「……、てことは、私は私の知ってるブロ……双矢くんでいいのかしら?」
「まあ、最初は混乱して訳わからんだろうが。これから、もう一度2人で育もう。俺達の出会い、四重奏の出会い。今はギクシャクしてるかもしれないけど。皆と一緒なら、きっと乗り越えられる」
……言って。
「みんな……?」
「ン……今度紹介するよ。皆面白い奴らばっかりなんだ」
言って。
優しい、淡々とした会話が、続いていった。
「一つ聞いていい?」
「何だ」
「私達に、娘って……居たっけ?」
家族を、家庭を作った想い出が何故かある……。
「……、いや、居ない。それは別の話だ。だから元々居ないんだ」
「そう、……もともと、いない……。」
「ま、もしかしたら子沢山かもしれないぜ?」
「? どういう意味」
「いや、こっちの話さ。話せるようになったらちゃんと話すよ」
「????」
世界は。
揺らぐ、不安定さの中に。
育みをみる。
豆知識9◇#真名
分類◇#真実 #四重奏 #絆 #第1章
解説◇何度世界が壊されようと、何度世界が改変されようと、何度世界がリセットされようと。決して変わることはなかった。