第6話「受付嬢の採点」
『ただのドラゴン』討伐による、ギルド受付報告用評価表。
今回、第一線で戦闘を得意としているある意味上級プロ集団。ギルド『四重奏』の2名によるウオーミングアップの体の討伐ログを読ませて頂きました。
実質プレイヤーセンクウ1人での模擬戦闘と見て取れます。
比較的今までの数値的ステータスはリセットされたものの、技術としての技量は良好。
ただしヤエザキ嬢が地ならししてくれた〈他人の目〉という場外からの視線に四重奏は慣れていない、にもかかわらずこの戦闘の動きは「まずまず見事」と言って良いほどには高得点でしょう。
今までの地図や常識、システム上で何が出来て何が出来ないかが全く不明な未開の地での戦闘に不慣れだった所も有るものの。動きとしては良いものを見せて頂きました。
打倒、プレイヤーヤエザキ嬢を仮想敵とした模擬戦、新しいゲームでの準備運動と探索、またゲーム外での精神的ストレスの精神管理。どれを取っても並々ならぬ努力の結晶を感じます。
しかし、本人達が楽しんでいるかというとそういう風にも見えず。まだ〈他人の目〉を気にして、私の時とは別の意味での〈おっかなびっくりの戦闘〉と行動だと感じました。
今後の目標は、「戦闘をしてストレスが出来るだけ増えないように行動しよう」ではなく「誰の目にも明らかなスカッとした爽快なストレス発散ログだな!」と見て取れるような立ち回りが必要だと感じます。
最強の一角、四重奏の1名による模擬戦。今後のプレイヤー達、まだ観ぬ新人さんのためにもココは今後の伸びしろも鑑みて。
厳しめに採点して、70点とさせて頂きます。
今後の努力と発展、繁栄を心より応援しております。
PS、食事シーンが今後の鍵になると思いますのでそこは減点。
by ギルド本部の受付嬢、湘南桃花。
◆
ヨスズは湘南桃花に対して言う。
「なにこれ?」
「評価シート。私の独断と偏見で点数付けてみた。他の人の評価シートを観ても私や群の真似だったから、自分で付けてみました」
色々ツッコミどころはあるのだが、まず最初に言いたいのは。やはり本気で厳しいその採点内容だった。
「き、厳しい……。ねえ! これ戦闘の外まで完璧じゃないと100点満点行かないじゃない!」
優等生なヨスズにとって、学校のテストで90点以下は許されないので納得いかない怒りを感じた。
しかし注意して欲しい、これは湘南桃花一個人の採点だ。他のギルド受付員だったらこんな辛口な評価はしない。
「ま、あんたらの伸びしろは私が1番よ~く知ってるから。こんなんで甘えないで今後も精進ね♪」
本当に厳しかった。
しかし自重せずにはいられない。
「だいたい! 現実世界のゲームの外で戦争おっぱじめてるのに! スカッとした爽快なストレス発散ログ! 何て! 残せるわけないでしょ!」
全くもってその通りだ、常人なら自重してログすら残せない精神状態でもおかしくない。
だがしかし、桃花は自重しない。
「だーかーら、おっかなびっくりの戦闘。って言ったのよ、現実世界の戦場の死体を観ようが読者に最高のログを提供する。それがプロよ」
やっぱり本当に厳しかった。
「……、やっぱり納得出来ない……」
「いいじゃん70点以上を目指せるんだから。伸びしろがあるからここは穏便にね♪ 四重奏の成長度合いには期待してるから♪ ようこそ、夢と狂気の世界へ」
夢と狂気の世界。その本当の意味……。渋々、しかし燃えるように納得したヨスズだった。
「一応聞いておきたいんですけど、優しかったら何点?」
「もちろん120点」
「……、……。桃花さん、【警告】しておきますけど。その厳しさのために、一体何人が犠牲になったのか。ちゃんと記憶しておいて下さいね」
「……、うん」
両者、気休めにしか聞こえなかった。
◆
というわけで、洋食店でご飯を食べながら円形のピザとか食べて、今後のことを話会う2人だった。討伐は大成功、それは確かだ。
だが湘南桃花受付嬢の満足度は70点、そこに頭を抱えるヨスズ。どうでもいいかのように肉を食べるのはセンクウだ。
「はぁ~桃花さん、本当は優しいんだけどなあ~あの〈頑固さ〉が何ともなあ~」
「もっちゅもっちゅ、まあ。あの【体質】はゲームマスターより悪っぽいわな~」
センクウも同意見だ。ヨスズとセンクウで【意見は一致している】。
より良くしたい、より良くしたい、より良くしたい。
……言い換えれば【評価に自分を殺されている】……と、……見えなくもない。
光をより輝かせたいからこそ、その闇が大きく映ってしまう。作品によっては真の敵に成りかねない。……その真理を理解できるものは少ない。
受付嬢桃花の表裏一体、天真爛漫さを知っているのなら、なおさらだ。
「損してるわよね……本当……」
むしろ損しかしてない、桃花の事を【解ってくれる】、ヨスズには。それしか呟けなかった……。
豆知識10◇#ギルド受付報告用評価表
分類◇#ギルド #受付嬢 #評価表 #EWO3 #第1章
解説◇ギルドがクエストの採点をする時に使用する紙、基本的に受付者の独断と偏見で採点され。マニュアルは意味を成さない、と言うことで作られていない。