第24話「光と闇の裁判 桃花編」23時06分
Ⅳ(テトラ)世界線。2010年、23時06分。吸血鬼大戦。
〈今の桃花〉とGM姫と副GM咲が、〈概念階層の岩塔〉の〈3階〉へ到着した。
「ジャンプ、マガジン、サンデー、チャンピオン。お疲れ、これから私達がケリつけるわ」
「やっと来たか!」
「おつかれー!」
「期待してるぜ!」
「フォローは任せろ!」
◆
湘南桃花は一息吸ってから、意を決したかのように吐息をこぼす。
「私は私を許せるし許す。天罰神とか創造神とかどうでもいい。関係ない。ただ2010年の私を許せる。ただ、言葉が足らない。思念しか現実世界に残ってない。それがこの騒動の最大の原因。だから私は、私の無我を、私の意思で裁判する! そうしなきゃ私も! 他の皆も誰も何も納得しない!」
GM姫は不安そうに聞く。
「……、いいのか? それは、光の桃花が弁護士側。闇の桃花が検察側ってことで良いのか? 当時の殺人を正当化するために弁護する、ということになるぞ?」
逆転裁判、良いじゃ無いか。本当に逆転できればの話しだけど……。
桃花が2人現れた、相対する反対側には闇の桃花。検察桃花である。
と言うことで。
光の桃花は。弁護桃花は言う。
「それだって、意味合いは違うわ。彼女は殺人をしたと思ってない。オモチャの人形を殺したら殺人罪に問われるの? 罰則罰金禁固刑に、現実世界で成るの? そこだって争う論点になるわ! 所詮は2次元だと思ってやった絵心遊びでしか無いと思ってる。確かに、思考と行動はやっちゃいけない、非道徳的な行為かもしれないけど。3次元が2次元に殺人を犯したら罪になって、3次元で罰則になるという矛盾点に繋がるわ! 表現の自由から照らし合わせても、1人で自由に悪徳的な表現を擁護できなきゃ。この先何も書けなくなるし、描けなくなる! 言論弾圧も良い所だわ! それはやがて、宗教弾圧にも繋がる! そこだって阻止しなきゃいけない自由よ!」
闇の桃花は。検察桃花は言う。
「でも現に真実がココにあって。殺人の証拠写真もあって! 行動も心も精神も肉体も。ちゃんと承認してるじゃ無い! まさかそれでも殺人罪が適用されないと思ってるの? バカバカしい! 真紅は誰にも消せないし、消せば証拠隠滅と同じ事になる。今さら消したって、不可逆的に無かったことには成らないわよ! 仲間の首を絞めたのは犯罪にならないのか? 誰も観てないからいいのか? 一緒について行ってあげたのがダメだったのか? 3次元でやったことを2次元に還元した事への罪! どっちに転んでも罪なのよ! 罪には罰を! 制裁を!」
弁護桃花は言う。
「ノートに罪と書いただけで、囚人扱いして。警察が捕まえ。独房で表現の自由を声高らかに披露するのは犯罪なの!? どこにも表現の自由が無いじゃない! 表現の自由は! 自宅で! 楽しく! 描くものよ! それを現実のご都合主義で隠蔽するのはナンセンスだわ! そもそも、2010年の桃花は全体論で観てる! 全体的にココしか見せ場が無いから彼女は体を張って犠牲になろうと思ったの! なのにそれを剥奪したら。彼女の存在意義が無いじゃない。衝撃的で派手な見せ場でしか。シャフランの暴走を止めるためには、2010年、当時。これしか無かった! これしか行動出来なかった! これが、自分の殺人を正当化する理由……いいえ、真実よ!」
弁護桃花にとっては。見苦しいし息苦しいけど、反論せずには居られない!
ここを広げるのはイヤだ、傷口を自分で広げる行為だ。でも、究極的には。自分が自分で納得出来なきゃこの物語は終わらない!
裁判官&GM姫は頭を悩ます。
「ん~どうしよっかな~。ここは本当にデリケートな裁判だから、本当に審議中にさせてほしいわ~~……。どうしよっかコレ?」
副裁判官&副GM咲は、本当。もう困る。
「無茶振りだよお姉ちゃん!? だいたい考える時間は……イヤあるけど……あるけどさぁ~。考える時間、時計、考える人……。銃、後ろから弾丸……! 拳銃を撃った人の方が正義!」
「ん?」
副GM咲は姫にこういうのはどうだろうか? と言う。
「えっと~……〈雷速鼠動〉使えば、弁護桃花さん勝てるんじゃ無いかなあ~……とか?」
「それって……、1881年か?」
弁護桃花はわからない。
「何の話し? 何処へ行くのさ?」
「1970年」
弁護桃花はわからない。
「えっと~……私生まれて無いんだけど……! そうだ、無我さん! 復唱要求! あなたが持っていたのは、拳銃ですか? 弾丸ですか? それを真実として示せますか!?」
無我
「真実? ……証拠品、無い。あったのはリポDとジョージアエメラルドマウンテンコーヒーしか記憶に無い。確かなのは、持ってたのはペンタブレットだったって事だけだ」
GMの姫からも言える。
「それは真実だな。無我はペンを持っていた、拳銃では無い。これは真実だ」
弁護桃花は言う。
「本当の強者は、世界の運命なんて握らない。そんな力は持ちません!」
検察桃花は言う。
「見苦しい! 今は物理的肉体の話をしているわけではありません! 特殊精神の話しでしょ!? 概念階層では確かに拳銃を持っていた。それ故に無我! そういう論争のはずですよ!? それ故に記憶の中で拳銃を撃っていたのなら、それは動かぬ証拠です。概念系なので思念でしかありませんけども」
弁護桃花は言う。
「そう思念なんだ。確かに殺したいと思った思念も存在する。でも、助けたいと思った思念も存在する! 両方入り交じって仕方なく、他に方法が無く。ペンを描き綴った可能性は非常に高い。何となくでもとりあえずでも無く【仕方なく!】 ゲームマスター! そのあたりのご判断をお願いします」
GM姫は言う。
「まあ、ペンであれ。拳銃であれ。他の何であれ。引き金を引いた。という事実には変わりは無いだろう。そこには頑張って殺意を込めていたし、それに抗おうとして別の道も探してた。それが当時、だが、それに抗って抗って12年間。無我も苦しんでいる。身勝手だと簡単に論じることももちろん出来るが……本当にそれだけかね?」
副GM咲は言う。
「というと」
GM姫は言う。
「そもそも、勝手に信じなくなったのは無我自身だ。そこに現実的な物理実行力があるのなんて。2022年の無我じゃないと解らない。掲げたものが殺人。そこは揺るがないし揺らいじゃいけない。しかし【それを実行できる力を持っていたことは知らなかった】だろ? 2010年の時代では。実行力のない殺人を、殺人と呼べるのかね?」
検察桃花は言う。
「でも現にこうして殺人が起こって、それで無我の家族は死んだんだ! 現実で! 真実で! 2次元で殺したから3次元でも死んだ! その事実は揺らがない! 3次元で死んでいった人達のためにも、コイツには罪を付けなきゃダメなんだ!」
弁護桃花は言う。
「それを! 2010年の無我が望んでるわけないだろう! 現実の世界で! プロットの段階でもシナリオの段階でもネームの段階でもペン入れの段階でもカラーの段階でも! そんなことは絶対に望んでいない!!!! 他の皆にとっては、こんなに準備や猶予期間があったんだぞ! それなのに知らないけど実行力があったから殺人罪っておかしいじゃないですか! 【悪いのは、知ってて実行した奴ら】じゃ無いのか!!!!」
GM姫は言う。
「まあ、そうだな。〈知ってて実行に移してた〉ら。それはまた別の問題だ。今回は〈知ってて実行した奴ら〉より、幾分罪は軽いとも言える……。ま、知ってか知らずか、殺人は殺人だ。なぁ、視覚出来ない概念の世界、第3階層の無我よ」
無我
「……、……」
GM姫は言う。
「んじゃ、私なりの判決だ。……コイツを無罪にするわけにはいかん。有罪だ。何回も、望んでいなくても、殺人は殺人であり、2次元でも3次元でも両方で犯行を行っている、しかし、【それを実行できる力を持っていたことは知らなかった】事に対しては。憂慮せねばならんとは思う。加えて、12年間。その後の桃花の人生を狂わせ続けた。誰にとっても不幸だ。よって。目には目を、歯には歯をではなくて。2022年の弁護士、湘南桃花の言い分も聞きつつ。今回の件は、半分の6年、【懲役6年】とするのが妥当な所だろう。それで、今回の件の【全部の罪】とし【そこから先は無我の人生である】とする。被害者でもあり当事者でもある、2022年の桃花、この判決に異論はあるか?」
弁護桃花は言いよどむ。
「……、……、無罪は無理か……仕方ない。2022年の桃花はこれを了承する」
GM姫は弁護桃花に言う。
「ちなみに、懲役と言うことは何処かに封印しなきゃいけないわけだが。ドコにしたい? 自宅に殺人者と一緒はマズイだろう」
「……じゃあ、……〈最果ての軍勢の野営地〉で」
「よし、それでは。判決。2010年の無我は〈最果ての軍勢の野営地〉に懲役6年、2028年に釈放とする。その6年間大人しく出来れば、それで〈全部の罪〉を清算出来たこととし。〈そこから先はお前の人生だ〉。……異議がある奴らはそれぞれの物語でそれぞれ決着すれば良い。兎に角、ここではこういう判決だ! ――以上!」
――カアン!!!!
そういうわけで、無我は自分の罪を償うために。吸血鬼大戦、〈最果ての軍勢の野営地〉に収容されることとなった。
2022年、今の桃花は感傷に浸る。
「これで、……良かったのかしら……」
ゲームマスター天上院姫は言う。
「確かに。2010年の罪は。他の誰が許さなくても余は許したが。そこから先の12年間は、まあ許せる行動ではないな。自分にとっても皆にとっても、……何より大事な人を亡くしたのはお前だけじゃないんだ。勝者なんていない、皆、敗者だ。そこから学んで、許して、次に繋げるのが人間だろ?」
「そうよね……、うん。そうだわ」




