第2話「EWO3と信条戦空」
結論、――今まで作った地図は真っ白になった。
ドコに何があるのかは完全に解らない。
そして、エレメンタルワールド・オンライン2と3の違いを事細かに説明しておこう。
まず、前作2の反省点として3は。
【敵役とう概念、生と死という概念、お金の概念、食事という概念が軽すぎる】という所に着目した。
こと敵役に至っては、冒険者は最初に〈勇者軍〉と〈魔王軍〉どちらかに入らなければならないという鉄の掟を作った。
これは、〈正義が悪を倒しやすく〉〈悪が正義を倒しやすくする〉に矛盾しない。
次に生と死という概念。これはあまり考えて無かったが、とりあえず〈死亡したら所持金が半分になる〉という鉄の掟を作った。
冒険をすればするほど所持金が増えてゆく、だから死亡したら自然と大金をリスポーン地点へ返金することとなることにした。
そしてお金の概念、これはもう。加速世界の時と同様。時間の流れは等倍だったが、お金の価値ももう、完全に日本円と平等にすることで決着することにした。
日本円で100円ならEWO3でも100V、Vは〈ボルト〉だ。W〈ワット〉でも良かったが、ここは電脳世界なのでボルト、電圧という意味だ。
本当なら、現実世界より仮想世界の方が安いのが当たり前だとは思うが。運営の采配で、このEWO3というゲームでは完全に円とVは同等の価値。とすることで落ち着いた。
色々な問題もあると思う、でもこの世界ではそうなのだ。
最後、食事という概念。
ここは〈冒険をする前に必ず食事をしなければならない〉という鉄の掟を作ることにした。ただご飯を食べるというルールだけでは料理効果やうま味がまだ全然ないが。そういうルールを作ることにした。色々な電脳世界を渡ってきたが。自由度が高すぎる仮想世界では、何が出来て何が出来ないのかが非常に重要になってくる。
ちなみにこの世界は、基本的に〈聖霊と悪霊の世界〉だ。
◆
よって、EWO3の『鉄の掟』は以下の通りになる。
1、冒険者は〈勇者軍〉と〈魔王軍〉のどちらかに所属しなければならない。
2、死亡したら所持金が半分になる。半額のお金はリスポーン地点管理人に行く。
3、お金の価値は完全に円とV、また時間経過も等倍である。
4、冒険をする前には必ず食事をしなければならない。
◆
以上が、EWO2からEWO3での大きな変更点であり。それ以外は比較的自由だ。
と、……いう所でゲームマスター。農林水サンは言う。
「んじゃまあ、空間指定と内容だな。空間は日本国と中国の間。内容は少年漫画誌全域。仮想世界でダメージを受けた場合、現実世界でのダメージは【なし】で……ま。最初だしイージーモードじゃな」
言って、システムプログラム『世界樹クロニクル』に決定ボタンという名で打ち込む。
《ゲームマスター権限により。空間指定を『日本国と中国の間』、内容は『少年漫画誌全域』、ダメージ判定は『なし』に設定されました。》
世界が廻る、魂が巡る、命の灯火が煌めく。これよりEWO3が本格稼働することとなる。
「さあ始まりなのじゃ!!」
仮想世界の風はゆく、どこまでも遠くに今を乗せて進む。
◆
西暦2035年10月1日、神奈川県。季節は秋。
フルダイブ型バーチャルリアリティゲーム機『テンジョウ』、値段は日本円にして4万円。ハッキリ言って高い。
主人公、信条戦空/センクウ。中学1年生は。敗北の味を噛みしめていた。思い出していた。
現実世界、
西暦2035年9月16日、彼は史上最強ギルド『四重奏』として名を冠していた。
彼は最強だった、が。EWO2の最終イベント、四重奏VS放課後クラブの闘技場での決闘で敗れ去る。
このゲームの開発者、社長の妹。天上院姫/ヤエザキによって。
「一度負けたんだ、だからウチは。実質2位だ……」
悔しさと情けなさが体を覆う。
「一から修行し直しだ……」
そう思った。
EWO2からEWO3へ変換、データコンバートは出来る。
出来るが、それは飾り。見た目だけで【全てのステータスは初期レベルにリセットされている】EWO2をプレイヤーの多さを鑑み、全員のプレイヤーのデータを新しく変換するのは不可能と考えた。
よって、見た目。容姿だけがコンバート可能でそれ以外の熟練度はリセットされている。
例えば。
〈森羅万象のワルツ〉というスキルがあったとする。8連撃8属性攻撃だったツヨツヨスキルが、レベルも熟練度もなくなり。ただの8連続攻撃にアップダウンしている。
全ての人が平等に、今まで持ってたスキルも、武器も、アイテムも。要するに始まりの街に相応しい飾り。そう『飾りにしかならなくなった』……ゴミじゃないだけ良い方だと思うけども。
そんな前情報をPCの画面の掲示板から、ネットサーフィンから……ずっと、眺めていた……。
――誰もが認める世界最強は、まだ動かない……。
豆知識2◇#EWO3の『鉄の掟』
分類◇#敵役 #生と死 #お金 #食事 #第1章
解説◇鉄の掟は、守っても良いし守らなくても良いマナーのようなもの。よって違反による罰則はない。
1、冒険者は〈勇者軍〉と〈魔王軍〉のどちらかに所属しなければならない。
2、死亡したら所持金が半分になる。半額のお金はリスポーン地点管理人に行く。
3、お金の価値は完全に平等で円とV。また時間経過も等倍である。
4、冒険をする前には必ず食事をとらなければならない。