表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/30

第12話「光と闇を受け入れろ 文美後編」

 この勇者軍でも魔王軍でも参加できるイベントは、その性質上難しい采配が要求される。

 だけど単純明快、【自分を受け入れれば良い】のだ。

 

 だが、その難しさはゲームマスター天上院姫が一番よく知っている。

 こんなものは自分じゃ無い、だとクリア出来ないのだ。


 モブプレイヤー達からゲーム失敗の通知と共に、環境フィールドから弾き出された人が続出する。


「あーもう! 自分の闇なんて受け入れられねーよ!」

 とか。光のものは自分の闇の汚さに怯え。


「あんな綺麗な私は受け入れられない!」

 とか。闇のものは自分の光の綺麗さに嫌悪感を抱いていた。


 ただ、両極端の自分を受け入れる。それがどれだけ難しいかは。経験したことの無いものには解らない。戦って勝つという単純なゲームでは無いのだ。

 自分の光と闇、その狭間で両方の自分を受け入れる。でも、そうしなきゃ一歩も前には進まないのだ。



 「光と闇を受け入れろ 文美後編」



 光のアユミは言う。

『私は君だよ』


 闇のアユミは言う。

『君は私だよ』


 お前の席ねーから! え? 無いよ? と言われればどんなに殴りやすいか……。


 光と闇のアユミは言う。

『『あなたの席はここだよ!』』


(これが、私なの、コレを受け入れるの……。これが、私の振り幅……振り子……、この中に私は存在してるの……?)


 光のアユミは優しく言う。

『先延ばしにした気持ちは痛いほど解るよ。……でも、その先に希望はきっと無い、弾き出したいわけじゃない。でも、狭間に居る私は救われるべきなんだよ。だから、速く、一刻も速く、カップルな記憶がある内に。誰かに記憶を上書きされないうちに。……せめて指輪だけでも……ね?』

 

 闇のアユミは厳しく言う。

『そんなのじゃダメだよ。手を繋いで、唇を重ねて、さっさと育まなきゃ。いつまで経っても変わらないよ、結果も出ない、成果も出せない。子孫は残せない、沢山の子供と沢山の家族を手に入れて。そして老後になって安らかに死ぬ。……、そっちの結果に流れを持っていかないと。あなたの人生は、世間一般的には失敗なんだよ? それでいいの? だからほら、せめて指輪だけでも。オモチャでもいい、とにかく。速く、速く、急いで……!』


 光と闇のアユミは言う。

『『指輪をソウヤ君にあげないと! 速く速く速く!!』』


 普通のアユミは言う。

「やめて! 私の意思を! あなた達が勝手に決めないで!」


 光と闇のアユミは言う。

『『何を言ってるの!? これは無意識かもしれないけど! 本心の私達よ! 私達を受け入れなきゃ! 未来なんてやってこない! ずっと過去ばっかり見つめてる! 惨めな私しか居ないじゃない! そんなのイヤ! 光も闇も! そんな子孫の残せない未来なんて望まない! 娘、欲しいでしょ!? なら必要最低限! 指輪をソウヤ君に渡さないと! 始まらないのよ! さぁ! 速く速く速く!!!!』』


「いやああああああああああああああああああああああ――ッ! やめてよ! 私の恥ずかしい内側を! 内面を! 勝手にさらけ出さないで! 無意識でも隠したかったことを言わないで、代弁しないで! 私の言葉で言わせてよ! 何で勝手に言っちゃうの!? 私が私だって理解しても! 言われちゃったらそれはもう私じゃ無いじゃ無い!!」


 光と闇のアユミは言う。

『『絶対に拒まれない! だから速く! 指輪なんて形だけだよ! 子供作ろう! 皆が望んでるよ! ほらほらほらほら!!』』


 久々に、いや。今まで一度も怒ったことが無い、アユミがキレた。

「だから! あんた達が決めるなって! 言ってるでしょ! あんた達を良い感じの流れに持っていきたいのは解ってる! でも急かさないでよ! 私には私のペースってのがあるのよ! だから邪魔しないで! 受け入れるから!」


 光と闇のアユミは言う。

『『だったら、どうして私達を忘れようとしたの? 意識の外に追いやったの? 優先順位が何故最下位なの? 指輪の優先順位が上位じゃ無いの……?』』


 強引かもしれない。それでも、受け入れるだけで良いんだ。と自分に言い聞かせて。

「!? ……、確かに。優先順位は低かったかもしれない。……でもソレに気づけたから……。流れは大切にしたい。過程や行程も、大切にしたい。ゆっくりでも、私の中で、光さんと闇さん、ちょっと強引だけど。そこで見守っててくれないかな? ……、必ずその流れに持っていくから。お願いだから、急かさないで……急かさないで……お願いッ!」


 光と闇のアユミは言う。

『『……、ま順番も控えてるし。今日はこの辺で許してあげるよ。あはは。でも忘れないでね。光も闇も、いっつも、どこでも、くっ付いてるから……』』


 普通のアユミは決意を固くする。

「うん、それまで我慢しててね。私……、私は、私の、私なりのハッピーエンドに。必ず流れを持っていくから……」


 そう、それだけだったんだ。

「【もう、流されたくない。じゃない、自分で流れを制御するんだ……!】」


《イベント名「光と闇を受け入れろ」。プレイヤーアユミ、ゲームクリア!》


 自分の深層世界の中から脱出出来たアユミは大量の汗を流しながら思った。

「ナニコレきっつ……、私でコレなら。他の3人は相当キツイだろうな……激しさとか……」

 

 今は、その結果はアユミには解らない……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ