第10話「1人はよせ」
受付嬢、湘南桃花は、何の因果か神社で安静にしていろと言われ。寝ていた。
「どうしてだ~。……どうしてこうなっだ~……」
自分が一番知りたがっていた。
「誰がどう見たって過労です、ありがとうございました。」
呆れたように細め眼になりながら、オーバーリミッツがツッコミを入れた。
◆
「消える螺旋丸! 改め! 消える風光拳!」
が、そんなもの〈世界100%〉には通用しない。チェンは軽く防御する。
一通り、攻防一体の〈世界〉と〈自分〉のチェンと連打を打ち合った後。理解する、理解したと同時に陰陽系1位絶対王者チェンは言う。
「で、ココまでが君が今まで戦っていた環境だ」
「わざわざウチの状態と同じにしてくれたって事か!」
「そういうこと」
と、連打をお見舞いするチェンだが。その攻防は〈自分100%〉〈世界50%〉〈自分20%〉〈世界80%〉と目まぐるしく〈イコール〉を流動変化させる離れ業だった。
「これならどうだ! 天然蒸気拳!」
何の刺激も無い、水蒸気エネルギーがチェンを襲う。が、これもチェンは軽くいなす。
「なるほど、強すぎる力と刺激を。発想を逆転させて少なくしたか、それはまあ悪くない。だが」
チェンは助言する。
「【1人はよせ】、ここからは2人の攻防だ。僕の能力の本来の使い方をしよう」
言って、前提条件を改める。
「環境展開、【センクウとチェンの戦闘力を平等にする】すると、どうなると思う?」
「知るか! 戦車脚!」
「こうなる! 戦車脚!」
ヨスズ、ソウヤ、アユミが交互に驚く。
「!? 同じ技!? 相打ち!?」
「いや、よく見ろ。【チェンの方が上手に戦車脚を使いこなしてる】……!」
「同じ特殊能力同士だと、そりゃ技術が上手い人のほうが勝つよねえ~」
「ち! 磁界脚高速移動!」
「ふ! 磁界脚高速移動!」
リニア新幹線に乗ったかのような高速移動。S極とN極の狭間で肉体的攻防を繰り返す。
「この能力最大の特徴はね、性質を何でも平等にするから【攻撃が必ず当たる】ってことさ!」
「だからあとは! 自慢の体術勝負ってことか!」
「そゆこと、普段から特殊能力ばっかり鍛えてる相手には。これが滅法効くのさ、何せ大体の能力者は普段、体術を鍛えるのを怠っているからね!」
この能力だと、相手と能力が全く同じになり。あとは体術による力押しで勝てるという戦法だ。
そしてチェンは、体術に関してはオリンピックに出場できるレベル。並の能力者じゃ全く歯が立たないのだ。
「消える風光拳!」
「消える風光拳!」
ドゴオン! 地響きと共に空気が揺れる。
左右上下高低からの回転旋回、突きに連打にいなす……。
どの攻・防・速でも勝てなかったセンクウは、最後に〈戦車脚ヒザカックン〉をされて、ビタン! っと地面にダウンする。
「ふう、今回の所はここまでにしよう。これ以上を望むと、本当に君の世界は核戦争でもしてしまいそうだしね……」
一筋の熱血の汗を流しながら。
「お、……押忍……ッ!」
勝負あり、チェンの勝ちだった。
◆
「いやマジで強いし……! なんだあれ……?」
「本当よねえ~初見で知らない所からの情報でも自分の血肉にしてしまう」
「あの応用範囲の広さは本当敵に回ったら脅威だよな」
「実際、敵側なんだけどねぇ~魔王軍は~」
帰り道、センクウ、ヨスズ、ソウヤ、アユミは交互に意見交換をしながら。
ギルド中央広場の帰路についた。
で……、なぜか桃花先生の体調が良くなってた。センクウが質問をする。
「何したんだ先生?」
「こっちが聞きたいわよ……」
と、ここでメッセージウインドウが鳴った。
《1日目を終了します。メンテナンスをしますので全プレイヤーはログアウトしてください》
「お、やっぱ初日ログインからのメンテはどのゲームでも通例なのな」
ということで、今日1日はこれにて終了。
皆、明日からのメンテ開けに心を踊らせるのであった。
EWO3の初日が終了した……。
豆知識13◇#和を以って潰しとなす
分類◇#ギルドリーダー #パーティーリーダー #環境/フィールド #領界 #特性 #EWO3 #最果ての軍勢 #チェン #第1章
解説◇指定したモノとモノを平等にする。指定できるモノは、術者が知っている単語のみとする。意味を正確に理解しないでモノを指定しても、効果が誤認識することが確認されている。