第9話「自分と世界」
仮想世界、EWO3、ギルド中央広場。
ギルド『四重奏』は今後の流れを決める作業に入っていた。センクウが言う。
「んで、あらかた雑談も済んだし。一応、ウオーミングアップ? も終わった、となると次は実戦だよな? ヨスズ」
「そうね、〈ストーリークエスト〉なのか〈イベント〉なのか〈PVP戦〉なのかで違ってくるけど……」
ソウヤとアユミも同意見だった。
「今じゃ、冷戦の氷が溶けちゃってるのも同義だもんな。ちなみに氷結つってもゴッドジーラの氷とは別物な」
※あれは外道冷子という存在が居たから固まったという。要するに自然の成り行きなので関係ない話である。
「何かすると今よりもっと目立つって事だねえ~」
「仮想敵をヤエザキにするのもいいけど、それじゃバランス取れないだろ」
「そうだねぇ~こっちの方が強いもんねえ~」
EWO2閉幕イベントで戦った感じだと。センクウ1人=放課後クラブ全員。……みたいなパワーバランスだったのである。
ヤエザキだけ、〈文法〉という名の流れがしなやかで、ずば抜けて上手く。ある意味そこだけ極振りでセンクウに勝っている、みたいな形だ。
ヨスズはセンクウに話をふる。
「センクウ、まだ調整が必要?」
「うん、個人的感想だと。コールドスリープから目が覚めて、攻撃してみたら。威力凄くて驚いた……て感じだからなあ~」
想像と現実のギャップである。なのでヨスズから提案してみる。
「なら、ギルド『最果ての軍勢』のチェンさんと戦ってみたら? あの人は格闘家だし、気が合うと思う。あの人の特殊能力もすごくってさ~……」
言ってから、ある問題にアユミは気がついた。
「あれ? そういえば、最果ての軍勢さんって、勇者軍? 魔王軍? どっちなの?」
これも結構重要な要素だ。
天上院姫/農林水サンがゲームの進行係として補足する。
「ギルド『四重奏』が〈国連〉に入ったから、均衡を保つために【最果ての軍勢は〈魔王軍〉に入るってさ】」
行動が裏目に出てしまったような采配である。
ヨスズが険しい表情で。
「……うわ~、つまり〈放課後クラブ〉も〈最果ての軍勢〉も魔王軍で〈敵側〉ってこと? きっつ~……」
農林水サンが補足する。
「ちなみに、ギルド『非理法権天』は勇者軍な」
ソウヤがそれでも険しい声色で話す。
「いや、それでもキツイだろ。……あの人達は大人組だし、実質ゲームしないし」
それでも、非理法権天には湘南桃花を筆頭にオーバーリミッツにレジェンドマンも居る。嬉しい救いではあるが、全然表舞台に現れないのが玉にキズである。
まとめると。
〈勇者軍〉
四重奏 非理法権天
〈魔王軍〉
最果ての軍勢 放課後クラブ
……という、カッコウらしい。
センクウは「均衡取れてるのか?」と疑問視する声に、「微妙に勇者軍が不利ね」と返すのはヨスズ。
「ま、優勢劣勢ついてなきゃ面白く無いけどな!」とソウヤが開き直り。アユミは「皆でまたお茶会やりたいね~♪」とあさっての方向に話題がそれる始末である。
で、話を戻すヨスズ。
「んで? センクウはもう一度〈威力測定〉やりたいんでしょ? やらないの?」
「いや、する。そのチェンって奴は強いんだよな?」
戦ったことの無いセンクウは解らないが、農林水サンは「チェンの方が遙かに格上じゃ」と返す。
なら断る理由が無いセンクウ。
「ウシ! その陰陽系最強、第1位のチェンって奴との威力測定だな! じゃあPVP戦のセッティングだ!」
と、本人のやる気は大いに盛り上がっていた。
……! ……。
……、と遠巻きに聞き耳を立てていた。ギルド受付嬢、湘南桃花は。
「え? 四重奏VS最果ての軍勢……? え、何すんの……????」
と、間接的になのに一般人視点な、冷や汗しか出なかった。
◆
ギルド中央広場近くの闘技場。
最果ての軍勢、陰陽系第1位のチェンはソコにイた……。
「やあ、初めましてだね。僕の名前はチェン。四重奏の諸君、噂はよく聞いてるよ」
「こ……、こんちゃ! センクウです」
「ふ~ん。その様子だよ。【ここに来るまでに何か掴んだようだね】では実戦だ」
ガ、っとセンクウは構える。ス、とチェンは人差し指で1を指し示す。
「対戦相手が僕で幸運だったね」
「あぁ、解ってる! 因果関係だろ!」
そして、チェンの特殊能力が発動する。
「環境展開、『和を以って潰しとなす』、指定したモノとモノを平等にする。【僕、チェンと世界を平等にする】、つまり。【僕イコール世界で、世界イコール僕だ】」
ゴクリ、と生唾を飲むセンクウ、やはり【タダモノじゃ無い!】その覇気は、【常人のソレ】だった。
「さあ、特訓開始だ!」
「ウス! よろしくお願いします!」
豆知識12◇#威力測定
分類◇#システム #ゲーム #調査 #第1章
解説◇自分の拳にどれくらいの威力があるのか解らない人がやる代物。主に数値化すると自分も他人も理解しやすく、解りやすくなる。