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颯陸 翔は殺せない....  作者: 気宇由。
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第6話 バレた?! 不登校児を救え! (パート2)

 状況はかなりひっ迫していた。とりあえず俺は沢田が心配なので後を追っているところだが、翔さん不在の中、あんなヤバい連中に挑んでも返り討ちにされるだけ。しかし沢田を放ってはおけないのでそのまま足を進めた。


「沢田君! 待つんだ!!」

「止めないでくれ! 俺はまたあいつと一緒にバカやったり..遊び行ったり..やりてえ事が山ほどあるんだ!」


 やはり沢田はもう止められない。俺も腹を括るしかないと覚悟を決めた。


「だったら..俺も一緒に行く!」

「あんた..ありがとう..!」


 そして連中の向かった方向に走り続けていると、黒いスーツを着た怖そうな連中を見つけた。


「あ! あれじゃないか?!」

「あいつら..! 見つけたぞぉ!!」


 沢田はそのまま連中に向かっていった。俺も後を追うように着いていくと、こちらに気づいた連中が言った。


「またお前らか! 金の事なら無理だぜ?」

「どうしてもタクに付き纏うって言うのなら..ここにいる人が黙ってないぞ!! この人はな、お前らみたいなやつを一瞬で片付けた人だ!」


 そう言って沢田は俺を指差した。沢田君ちょっと待ってくれ、それは俺じゃないんだ。連中は俺を睨みつけ言った。


「あぁ? こんな弱そうな奴が? もっとまともな嘘にしろや(笑)」

「兄貴..こいつ俺らをからかってんじゃないすか?」


 連中は明らかに俺を狙っている。俺は正直に沢田に言った。


「ごめん沢田君..魔法使えるのは翔さんだけなんだ..」

「え?!」


 自分でも何を言っているのかよく分からんが、今俺はテンパっているのでそれどころではない。おそらくこの言葉を使うのはアニメやハリー○っターの世界くらいだろう。


「ちょうどいいじゃねえか(笑) 憂さ晴らしにこいつら可愛がってやろうぜ」

「いいねぇ(笑) 他の奴らも呼ぼうや」


 連中はそう言うと内ポケットからナイフを取り出し始めた。しかも連中の数はみるみる内に増えてくる。これはあれだ。俗に言う詰みというやつだ。俺は沢田を見て言った。


「沢田君..生命保険入ってる?」

「いや諦めんなよ! 俺はやってやるからな!」


 沢田は大勢いる連中に向かって行く。しかし、言うまでもなく沢田は返り討ちに遭い、うずくまっている所を集団でリンチされている。とてもじゃないが人に見せられるものではない..なんて冷静に分析している場合か! 見るに耐えないので俺は勇気を振り絞って止めに入った。


「や..やめろよ..! まだ未成年だぞ..?!」

「あぁ? お前もたっぷり可愛いがってやるから安心しろよ(笑)」

「くっ..! あんた..! 早く逃げろ..!」

 

 沢田はボロボロの体で俺に言った。


「でも..! このままじゃ沢田君が..!」

「俺はやりたいからやってるだけだ..こいつら黙らせるまでは..諦めねえ..!!」


「慎吾!!」


 その時、聞き覚えのある声が沢田を呼んだ。声のする方を見ると、そこに居たのは翔さんとタクの姿だった。


「翔さん..? 帰ってなかったんですか..?」

「俺の正体をバラされたら困るからな、て言うかあいつ、酷い有様だな」


 なんか翔さんがめちゃくちゃかっこよく見えるのは俺だけだろうか。そう思っていると、ボロボロの沢田にタクが言った。


「どうして..!!」

「ばーか..親友だろ? 俺たち..」


 それを見た俺は翔さんに言った。


「もしかして翔さん..この為にタクを..?」

「いや、ちょっと人探しをしていたらたまたま会っただけだ」

「あー、そーなのね..」


 翔さん..そこは嘘でも「まあな」とか言って欲しかったがとりあえずその話は置いておこう。翔さんとタクに気づいた連中は笑いながら2人に言った。


「次はお前らか(笑) そっちのガキは金返してもらわねえといけねえからあんま痛めつけんなよお前ら(笑)」

「分かってんよ(笑) 横にいるチビはボコっていいよな?」

「好きにしろ(笑)」


 ここで言うのも遅いが、実は翔さんは小柄である。しかしこれは、アニメとかドラマでありがちな絶対に言ってはいけない言葉を言ってしまった..みたいな展開になるのではないだろうか? チビと言われた翔さんはもう一度言ってみろとか言って覚醒するパターンのやつだ。俺は固唾を飲み見守った。


「....だとしたら何だ? 見れば分かるだろ?」

「へ?」


 まさかのそういう展開ではなかったようだ。あまりに予想外だったので「え?」って言おうとして「へ?」って言ってしまったじゃないか。翔さんは何の事もなく話を続ける。


「俺がこの世で1番嫌いなものを教えてやろう..それは『汚れ』だ」

「あ? 何が言いてえんだてめぇ」

「汚い奴が嫌いと言っている..」


 翔さんの言葉で逆上した連中は全員で翔さんに襲い掛かる。俺は沢田を抱え、タクを連れてそこから離れた。そして2人の目を両手で覆い隠した。


「2人とも..! イリュージョンショーの始まりだから見ないで!!」

(俺何言ってんだろ..)


 言うまでもなく、翔さんは約束通り誰1人殺す事なく、一瞬の内に連中全員を片付けた。無様に命乞いをする男に、翔さんは言った。


「あいつの親父の居所を教えてやる。その代わり二度とあいつに付き纏うな。もしまた同じような事があったら、お前らの組ごと火葬場で灰になるまで寝てもらうからな」


 翔さんは恐ろしい形相で男に言うと、恐怖のあまりその場で失禁した。なかなか強子さんを殺せない翔さん見ていたので忘れていたが、この人は最強の殺し屋なんだと痛感した。


「翔さん、さっき言ってた人探しってタクの父親の事だったんすね! でもどうやってタクの父親の居所を?」

あいつ(タク)に見してもらった父親の顔写真から警視庁にハッキングした免許証のデータベースと照合して、そこから関東地区の監視カメ....」

「あ..もう分かったんで..」


 やっぱり翔さんはとんでもない人です。それから、俺たちに一礼するとタクは沢田を抱えて病院に向かった。とりあえず一悶着済んだ俺は、気が緩んだのか大きなため息をついた。


「お前..何かやったか?」

「翔さん..それは言わないで..」


 そして翌日、俺と翔さんが学校に行くと、タクと沢田が俺たちの所に駆け寄ってきた。


「2人とも!! 昨日は本当にありがとう..! なんてお礼言ったら..」

「マジで助かったよ..あんたらのおかげでまたタクと学校生活送れるよ」

「良かったじゃん! あ、俺たちの正体の事は黙っててくれよ?」


 俺はひそひそ声で沢田に言った。沢田もひそひそ声で俺と翔さんにに答えた。


「ああ、もちろんだ..! 2人が()()()()()()事は内緒にしとくな(笑)」

「へ? そっち?」


 一瞬理解できなかった俺はまたも「へ?」と言ってしまった。ぶっちゃけ年齢偽ってんのはバレたとこであまり支障は無い。俺は翔さんを呼び小声で言った。


「翔さん..やっぱりあいつ殺そう..」

「俺は構わんが?」


 まあしかし、何はともあれ俺たちの正体もバレる事もなく、不登校児を救えたという事で無事一件落着というわけだが、俺は翔さんのことで何となく気づいている事があった。


「翔さん、最初から分かってたんじゃないですか? バレてたのは殺し屋って事じゃなくて、年齢だったって事」

「さあ(笑) どうだろうな? ただ、俺は諦めの悪い奴は嫌いじゃない」


 翔さんは最強の殺し屋で生きる都市伝説とまで言われる恐ろしい人だけど、実は良い人なのかもしれないと、少し思った。


「ていうか君、何で俺たちが年齢偽ってる事分かったの?」

「この前あんたらが一昔前に流行ってたタマゴッピの話してたからだよ。まあ、母さんから聞いた話だからよく知らねえけど(笑)」

「な..なるほど..」

(ジェネレーションギャップってやつですか..) 



 


読んでいただきありがとうございます。

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